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歯を磨く時、反対の手を思わず腰に当ててしまう理由

歯を磨く時に思わず反対の手を腰に当ててしまうのは、これこそが連合運動なのです。 オーバーフローだけが連合運動の理由であれば、なぜ歯を磨いている手と同じように反対の手も動かないのか?という疑問が生じます。

では連合運動が生じる理由は何なのでしょうか?

歯磨きをしようとして右手を口に持っていくと、右手が挙がった分だけ重心が右手の方に偏ってしまいます。

後述しますが人間には出来るだけ姿勢を真っ直ぐに保つはたらきがあるため、その重心の偏りを修正するために左手の重さを利用するわけです。こちらも後述しますが、重い物は重い物でしか動かせないため、右手とほぼ同じ重さである左手を利用するわけです。

左手の重さで右手の重さを打ち消しているわけです。

こうしたはたらきをカウンターウェイトと呼びます。


つまり連合運動はカウンターウェイトのために生じるのです。

そう、姿勢保持や運動遂行に有用なのです。コップなどで飲み物を飲む時に小指が思わず伸びてしまうのもちょっとした連合運動です。


じゃあ連合反応って?


連合反応も体のある部分を動かすと他の部分に影響を及ぼすことを言います。
連合反応という言葉を使う場合は、患者様の場合です。
どういう患者様に生じるかというと、脳卒中などによって脳が損傷し、その後遺症で片麻痺になってしまった患者様などです。
脳の損傷によって脳からの抑制がなくなるか弱くなることによって、脳の発達によって抑制したものが出やすくなってしまっているのです。

これを陽性徴候と言います。

片麻痺患者様は出なくても良い反応が出やすくなってしまっているのです。これと反対に出なければいけない反応が出にくくなったり出なくなったりすることを陰性徴候と言います。  

では連合反応の例をみてみましょう。

片麻痺患者様が靴ひもを結ぼうとする時、麻痺している側の手が挙がってしまう、といったことです。
しかも麻痺している側の手は屈筋共同運動パターンになっていたります。これでは靴が履きづらいですよね。 つまり連合運動と連合反応の違いは、一言で言えば健康か病気か、ということです。


連合運動は姿勢保持や運動遂行に有用ですが、連合反応はむしろそれらを阻害するわけです。



いずれもどんな時に出るのでしょう?



努力を要する時 ・難しいことをする時 ・精神的緊張 などと言われています。 連合運動は必要に応じて必要なだけ出る・出せるのですが、 連合反応は出なくても良いのに過剰に出てしまうのです。

先程例に挙げた歯磨きは健康であればなんなく出来ますが、連合運動が生じるということは結構大変で難しいことなんだな、と理解しましょう。

また靴ひもを縛る動作は健康であれば連合運動を生じず(厳密に言うと腕とは別の部分に連合運動のような働き、すなわちカウンターウェイトは起こっていますが、腕には起こらないという意味)容易なことのように思いますが、患者様にとっては大変で難しいことなんだな、と理解しましょう。



でも手を腰に当てなくても真っすぐ立っていられるよねぇ?



右手で歯を磨く際に真っ直ぐ立っているには、右手の重さを打ち消すことが出来れば良いので、主に左側の体幹の筋肉がはたらいて右手の重さ分を支える力を出してくれるからです。
この時に姿勢を真っ直ぐにしようなんて考えませんよね? 体幹の筋肉は横紋筋で、横紋筋の特徴は「随意的(意識的)にはたらかせることが出来る」と教わると思います。

ですが上記のように実は不随意的(無意識的)にはたらくことも多いのです。いちいち考えていては間に合わないしキリがないですし、脳はブドウ糖しかエネルギーに出来ないため、エネルギー消費が激しくなってしまいます。

盲点なのは随意的にはたらかせられるだけでなく、実は随意的にもはたらかせられる、ということだったのです。


こういった不随意的な筋肉のはたらきは後述しますが筋緊張と言い、「学習」によって獲得されていきます。

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