運命の人とパンツ事件(前編)
このnoteは、2019年1月にざざっとおりてくるがままに書いた日記です。下書き保存してあったものを、今さらですが公開しました。
「インナーって!それってパンツのことですよね?笑」
マッチングアプリで知り合った男性とのやりとり。一泊旅行程度だったら、インナーはポケットに入れて、手ぶらででかけると言うので、インナーって要はパンツのことかと尋ねたのだった。
仕事柄、人と会う機会は比較的多い(のだと思う)。ただ、それが恋愛に発展することはなかなかない。
「出会い、多いんでしょ?」
これはよく言われる台詞。しかしながら、仕事としてお目にかかっている以上、相手に恋愛感情を抱かないようなフィルターがかかっているし、素敵だなと思う人は自分に興味を持ってはくれない。それに、そもそも既婚者が多いので、仕事上の人と恋愛関係に発展する確率は低いと言えるだろう。かといって、白馬の王子さまが迎えにきてくれるわけもないので、細々とマッチングアプリを続けていたのだった。
一年以上前、当時付き合っていた人と別れた直後は、積極的に新しい男性と会うことを心がけていた。しかしながら、体目的の男性も多く、真面目に恋愛関係を築いていきたいこちらとしては、その判別に苦しむことになる。そんなわけで、しばらく遠ざかっていたマッチングアプリ。年末、帰省したとき、久々に起動してみたら素敵だなあと思う男性とマッチしたのだった。
デザイン系の会社を経営しているという男性。大人で落ち着いていて、包容力には自信があり、女性に甘えられるのが大好きだという。人並み以上に稼ぎ、麻布に住んで、夜は一見さんお断りのバーに立ち寄るのが日課。一人の時間を楽しむのだという。
お金を稼いでいることもすごいけれど、私は甘えたいタイプなので、そこが合うといいですねと伝えてみる。おしゃべりが大好きなのか、よく自分の話をしてくれる人だった。お父さんが建築家、お母さんは広告、お姉さんがフラワーアーティストというクリエイティブな家系だ。幼少期の話からお父さんの武勇伝、お姉さんの自由気ままぶりを話してくれる彼。自分の話ばかりだね、あきこさんの話も教えてよと振られたので、ちょっと気後れしながら返信する。
「私は全然です、貧乏な家に育ちました。そんな華々しくなくて・・」
「貧乏はいいよ。楽しみをくれる。」
そういって、また家族の話を続ける彼。お父さんがお酒に飲まれては家で暴れていたこと、酔った勢いで高級外車に乗り、一夜で廃車にしたこと。母親を守るために父親に立ち向かったことがあるなど。ふんふんと聞きつづけていると、いつしか風呂の湯が冷めている。そろそろお風呂上がるねといって、やりとりを締めくくる。
お互い仕事が好きなので、ちょっと色気のある会話をしたかと思うと、すぐ仕事の話にそれる。それるというか、それがお互いのベースにあるのが、逆に心地よかった。
そんなやりとりが数日続いたある日。
そういえばと、一年前に占いで言われたことを思い出した。どんな人とご縁があるかと尋ねたときのこと。占い師はタロットカードをめくりながら、こう答えた。
「そうねえ、包容力があって、イメージというものを仕事にしているわね。あなたの仕事が彼の役に立つことになるかもしれない。お酒が大好きだけど、家庭的で、歳上かしらね。あ、かに座の人だわ。」
「へー、かに座ぁ」
「かに座って家庭的なのよ。あなたのことを守り、甘えさせてくれるはず。」
「甘えさせてくれる人、いいなあ。最近、そんな人めっきり出会わないですよ。」
あれ、待てよ。彼、割とそのイメージに近いんじゃ?唯一違うのは、歳下だということくらいか。
「そういえば・・、変なこと聞くんですが、星座って何座ですか??」
「かに座だよ」
「ええええーーーー!?」
「え、それがどうしたの??」
「いや、実はね・・(笑)」
占いの話なんてしたら、引かれるかなあという不安をよそに、「あ、それ、俺のことだね。うん、間違いない、そんな人他にいないでしょ!笑」という自信満々の返事。あー、もう。どうしよう!
これが世に言う、運命の人なのだろうか?
一人布団にうずくまる。どうしよう、運命の人についに出会ったのかな?ねえ、どう思う?実家の猫に絡んでみるも、答えてくれない。眠いんだから放っておいてという顔をしている。おかまいなしにデレデレと絡む私(ごめんよ、にゃんこ)。
年が明けたらすぐ、ニューヨークに行ってしまうので、帰国したら会いましょうか。彼との約束にほのかな期待を抱き、海を越えてメッセージの交換を続けた。お土産も買った。準備は万端。さて、何を着ていこうか・・!
だが、事件は起こった。
帰国した旨のメッセージを送るも、返事がない。返事がないどころか、既読にすらならない。どうしたんだろう・・嫌われちゃったのかな、ワタシ。もしかして、パンツ・・・!そうか、パンツがだめだったとか?(そうか、パンツか!いけないのはパンツだのか・・!)
ニューヨーク土産に買ってきたチョコレートたちは、日を追うごとに友人たちに手渡されていき、彼へのお土産だけが残った。まるで、心まで置いていかれたかのように。
仕方ないよね、ご縁がなかったんだ。
占い師に見てもらってから一年。運命の人に出会えましたって報告をしようと予約を入れたのに、運命の人ではなかったという報告をすることになってしまった。内心傷心の私。始まってもいない恋が終わってしまった。パンツのせいで。
と、ケータイの待ち受け画面に通知が灯る。彼からだった。
「メッセージ、届いてますか?」
あれ?これは、どういうことだ・・?
パンツはパンツだけど、パンツじゃなかったってこと??
(つづく)
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