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幸せは未来から訪れる

一個前の記事を公開したので、これもアップしても大丈夫ですかね。
ちょっと前に書いて下書きで漬け物になっていたものです。

今回は物語調で書いてみました。語尾だけですがw


娘は昔から人付き合いが得意で、人当たりも良く、かつ、異性に接することが苦にならないタイプだった。
中学生の頃にお付き合いしていた男子と一緒に呼び出しを受け、交際をやめるように教師に言われたと聞いた時には驚いたものだ。

私の中学時代の「お付き合い」といえば一緒に映画を観たりする程度の、微笑ましいものだった。
誰が誰を好きとか、そういう話題は教師の間でも出ることはあったようだが、生徒に直接注意するほどのことではなかったらしい。
私が中学に通っていた当時「お付き合いをしている」という理由で、生徒が教師から注意を受けたという話は一度も耳にしなかった。

だが娘の場合はちょっと違っていたらしい。交際していることが学校中に知れ渡り、その話が教師の耳に入ることになった、ということだった。
そして交際をやめるように言われた娘は当然のように怒った。教師には関係ない話だという。確かに本人の自由ではあるのだが、如何せん、彼らは未成年だ。誰が責任を負うのか、ということになると教師が注意したくなるのは判る。

その話にはあっさりとけりがついた。
娘がお付き合いしていた男子の方が怯えてしまったのだ。教師に介入されてはそうなるのも仕方ない話だろう。しかも高校受験が迫っている時期だった。むしろ娘がどうして躊躇いもなくお付き合いを続けたいと思っていたのかと、多分、周囲は思ったのではないだろうか。
結局、娘はその男子とのお付き合いをやめた。

高校に入学した後も娘の男子との「お付き合い」は続く。付き合っては別れて、というのを繰り返した。
だが高校生くらいの男子はホルモン溢れる危険な獣と私は思っている。そのくらいの年齢になると男子は力も強くなっていく。何かあっても殴って蹴飛ばして逃れる、ということが難しくなってしまうのだ。
私は娘にそういった注意は念入りにした。事があった時、泣くのは女というのは時代が変わっても変わりないと思ったからだ。

娘はその話を真面目に聞いてくれた。真剣に聞いた後、こう言った。

「コ○ドームは1枚じゃ危ないから二重にしないと駄目だよね!」

……目眩がした。

そういう問題じゃないと叫びたかったが、我慢した。私としてはそういう行為に至らないで欲しかったのだが、願いは届かなかったらしい。
そもそも手軽で完全な避妊法などないのである。
しかも娘は私の知らないうちに脱処女していたようだ。更に目眩がした。

その後、私は娘の彼氏なる男子を紹介された。そこで私は遠い目になった。
まず挨拶が出来ない。私の目の前で娘と平気でいちゃいちゃする。
大事な娘に触るな、馬鹿野郎、と叫ばなかった私を私は自分で誉めた。
頭の軽そうな失礼な男子だったので、私の中では大きな×がついた。親の面を見せろ、と考えたが行動するのはやめておいた。

娘はその男子とあっさり別れた。
今度は別の男子と付き合い始めた……らしい。誤魔化すので判らなかったが、どうやら私の知らないところで付き合ったり別れたりはしていたようだ。
いちいち追求することは出来ないし、そもそも娘から言わないことをつついても仕方ないと私は考えていた。

そして娘は仕事に就き、独り暮らしを始めた。
その後も色々あったらしい。距離を取っていた私のところには娘の話はそれほど入ってこなかった。

だが一度、どうしても許せないことが起きた。

付き合っている男子が年下の高校生だという。しかもその高校生が進学も就職もせず、仕事をしている娘のところに転がり込み、何故か娘が世話をすることになったという話を聞いたのだ。

私は娘の彼氏の連絡先を聞き出し、更に彼氏から親の連絡先を聞いた。
親に連絡をしてどういうつもりなのか問い質したが、のらりくらりと逃げられた。
どうやら自分の息子に興味がなく、出ていこうがどうしようが、どうでもいいと思っている様子だった。
だからこそ、娘が面倒を見ようと考えたのかも知れない。

さすがに私は娘に彼氏と縁を切るように言った。
だが返ってきたのは猛烈な怒りだった。私が彼氏の親に連絡したことが気に入らなかったらしい。
……怒るのはそこか、という気持ちになったが、私は何度か説得しようと試みた。

娘への説得は無駄だった。彼氏は娘の家に居続けた。
だが想像もしなかったことが起きた。
娘は彼氏の尻を叩いてアルバイトをさせ、一年で1人で暮らせるように育ててしまったのだ。
そして転がり込んでから1年後、彼氏は娘の家を無事に出ていった。

その後も娘は誰かと付き合うのかと思ったが、意外にも男はもういい、と言った。どうやら前の彼氏を一人前に育てるのが大変だったらしい。そこまでくると彼女というより母親である。

私は気付いていた。すべて私のせいだと。
娘が幼い頃に離れ、育てることをしなかった私の責任だ。
でも離れたのに娘は私にとても似ていた。

寂しい、恋しい、悲しい、辛い、という気持ちが我慢できず、人の温もりを求めて誰かと一緒に居たいと手を伸ばす。
満たされるのなら、相手は誰でも良い。
ちょっとしたきっかけがあれば、相手の手を夢中でつかむ。

それは私が学生時代にやっていたこと、そのままだった。
だから止められなかったし、強くは言えなかった。
ひとつ違うのは、学生時代の私は誰とも縁が繋がらず、娘は縁が繋がったということだった。

そして10年が過ぎた。

娘は新しい彼氏を紹介したい、と自ら言い出した。私は都合をつけて娘と彼氏と一緒に食事をした。
娘の彼氏は穏やかで優しそうな青年だった。今まで娘が付き合っていた男子とは明らかに異なる。少し年下ではあったが礼儀正しいしっかりしたいい子だった。
親御さんが大事に育てた息子さんなのだろう、と感じられた。

しばらく付き合った後、娘はその彼氏と結婚した。
幸せそうな2人を見て、私はとても嬉しいと感じることが出来た。
こんな幸せな結婚もあるのか、と娘に教えられた瞬間だった。


noteを巡っていると、幼かったり、未成年だったりのお子さんのお話をよく見かけます。
幸せそうなお話にほっこりする反面、私はその時期に娘と一緒に居なかったので胸が苦しくなります。
もしも一緒にいたら色々と出来たのだろうか、と。

……娘当人はそんなことか、と笑い飛ばすような剛毅な性格ですけども。
しかも空手やってたので学生の頃なら男子には負けなかったでしょうけどね。
性欲剥き出しで襲いかかる男はもれなく股間を砕かれればいい、と思ってます。

子供を置いて遠くに離れた私を責める人もとても多かったです。
母親としてあり得ない、とも言われました。
好きで遠くに置いてるはずがないのですが、そこのところは面倒なので説明しませんでした。


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