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テレビ屋気取り #63 保険をかける


今週はずっと憧れていた“ある場所“に行くことができました。

ざっくりいうと、ドラマの撮影現場を見学させてもらったというわけです。

自分が想像していたよりも和やかな雰囲気の中で撮影が行われていて、それが作品に表れているのを実感しました。

あと、たまたま廊下ですれ違った方が、過去に影響を受けて今リアルタイムでTVerの再配信を見返しているドラマの監督で、意外と自分の近いところに憧れる人たちがいるということに驚きっぱなしでした。



念のために


今回はテレビのこととは少し離れて、私個人の話が多くなってしまうと思います。そこはあらかじめ謝っておきます。すみません。

学生生活最後の年を迎えて、また就職活動という自分を見つめ直す一大イベントを終えてつくづく思うのは、「自分は人生に保険しかかけてこなかったな」ということです。

ここ最近、毎回この「テレビ屋気取り」の書き出しで触れている卒業論文についても、タイトルを決める時点で後から本文を書いていく中でいろいろと融通が効くようにと思い、幅を持たせたタイトルにしたところ、タイトルを提出する直前になって教員からダメ出しをくらって慌てたり、本文を書き始めても不安になるあまりいろいろな要素を散りばめすぎて、読み直したら結局何が言いたいのかがわからなくなったりしています。

以前少しだけここに書いたことがあるかもしれませんが、大学の放送サークルで企画を考える際も、スベるのが嫌すぎて保険をかけまくった結果、企画としてまとまりがなかったり、出来上がったものがなんとなく面白いくらいのクオリティに仕上がってしまい、「これだ!」と思ったものがひとつも作れなかったのをかなり後悔しています。実はまだ卒業制作が残ってるんですけどね。

少し前置きが長くなってしまいましたが、テレビの世界も同じだなというのはつくづく感じています。

脚本がきっちり決まっているドラマであっても想定どおりに全てが進むとは限らないというのは、最初に触れた見学で学びましたし、もちろんバラエティや生放送の番組というのは”生モノ”と言われるほどに常に変化するものなので、あらゆる想定をして本番を迎えるというのは、端くれとして何度も見てきました。”念のために”という思いからあらゆる”保険”をかけて出来上がるのがテレビだと思っています。

じゃあなんで私のサークルとは違ってちゃんと面白くなるのか。

もちろんそれは向こうがプロであり、こんな自分なんかと比べること自体が間違いというのはありますが、もっと深い何か根本的な違いがあるのではないかと思い、今回はこれについて考えてみようと思います。




名門校の元エースストライカーがお茶の間のヒーローになった瞬間


今週の「水曜日のダウンタウン」を観ました。

この番組が一本ネタでオンエアするときは正気じゃない内容なのは自明のことですが、今回もその例に漏れず衝撃的な回でした。

落とし穴に落ちたのに一向にネタばらしが来ないまま日が暮れたら正気じゃいられない説

説の文言の中に「正気じゃいられない」と書いてしまっているのに狂気を感じてしまいます。毎回思うことですが、なんでこんなことを思いつくんですかね。



それはさておき、今回そのターゲットとなった芸人さんは以下の5人。(敬称略)
・チャンス大城
・パンサー尾形
・コロコロチキチキペッパーズ ナダル
・ニッポンの社長 ケツ
・蛙亭 中野

この人選と企画内容を見ただけで、なんとなくこの人にはこういう立ち回りを期待してるんだろうなというのはよくわかり、実際本編の序盤は想像通りのリアクションで進んで行きました。

度がすぎたドッキリに対してキレるナダルさん、怒ってはいるものの優しいキャラが際立ってどっちつかずの感じが出てしまう中野さん、チャンス大城さん以外はドッキリをかけられていること自体にキレているというのがきっと制作サイドとしては想定内だったと思います。見ている側としてもそうでした。

ただ、途中から意外な方向に向かっていきます。
これが決してドッキリの延長ではなく、不慮の事故であると思い込ませる仕掛けを発動していくと、徐々にそれぞれの芸人さんに変化が見られます。

このネットニュースのタイトルを見てしっくりときましたが、追い込まれた時に真の人間性が出るというのがよくわかる内容で、言語化はできなかったものの見ている自分も終盤にそれを感じていて、考えさせられるものがありました。

見た方はわかると思いますが、今回の1番の見どころはパンサー尾形さんですよね。序盤はコロチキのナダルさん同様、雑なドッキリを仕掛けてきたスタッフに対する怒りをあらわにしていましたが、これが事故だとわかってからは自力での脱出を試みます。

ここまで持っていくためにも、「10年以上前のバラエティ番組が埋め忘れた落とし穴に落ちた」という設定を思いつき、当時の台本を用意したり壁をエイジング加工したりするなど、その細かな用意がさすがですね。これも保険の一種なのでしょうが、効果覿面という感じでした。

尾形さんの話に戻ります。
本編の途中からはほとんど尾形さんのパートばかりでした。
一生懸命脱出を試みる尾形さんに対して、怒りと呆れから何もしないナダルさんの様子が差し込まれ、両者が際立っていて面白かったのと、この二人とは全く異なる独特の反応を見せるチャンス大城さんはもう意味が分からなくて爆笑してしまいました。ここで気づいたのは、チャンス大城さんを入れ込んだこと自体が”保険”だったのかなということです。

その後投入されたパターンの違う会話の通じない人たちについては、諦めから動きを見せなくなった尾形さん以外のメンバーの見せ場を作るために投入されたのかなと思います。これこそが本当の意味での保険なのかもしれません。

この時点で尾形さんの脱出一本でいくと決めていたのか、尾形さんにはこの保険を適用せず他のメンバーには早々にネタバラシ。
ただ、同じタイミングで検証していたわけではないので、全員6時間ギリギリまで撮って後から尾形さんでオチをつけにいこうとしたと思います。
見ていたときは忘れていましたが、6時間×5人分を撮りきった制作サイドもすごいとしか言えないです。

そして、最後の尾形さんが脱出に成功する場面は、言うまでもなく笑いを通り越して感動ものでした。

追い込まれた状況で何を試してもうまくいかないのにそれでも諦めないで何度も挑戦する姿に勇気をもらいました。

地獄の軍団がどこまでこれを想定していたのかはわかりませんが、いろいろなところに仕掛け(保険)を打ったおかげで、見ている人たちにただ”面白い”だけで終わらない何かを提供することが出来たのではないかと思います。



目的があればそれは保険を超える


地獄の軍団のことなので、今回用意していた仕掛けはもっとあったのではないかと思います。あらかじめ想定をして、こういう展開になりそう・持っていきたいというのに合わせて仕掛けを施す。

私のようなアマチュアとは違って、しっかりと意味や目的があって施すのだから、それがうまくいってもいかなくても何かしら得るものがある。

ぼんやりとしたまま終わらないというのはその結果だと思います。

目的を明確にすればそのための準備も一切妥協もしないだろうし、得られる結果も変わってくる。

今回の結果は尾形さんの人間性によるところもありますが、制作側の地道な準備にも私は感動しました。


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2021.11.28 作成




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