さだまさしさんと競馬

2020年も秋のG1シーズンがやってきました。先日から観客も一部ではありますが入場可能になり、いよいよ競馬の季節がやってきたなと感じます。

さだまさしさんは、ファンの方々には有名かもしれませんがかなりの競馬通で、昨年にはグリーンチャンネル(中央競馬&農水省専門チャンネル)の「Gate J プラス」という番組にも出演されていました。

2018年には、日本で最も格式のあるレース「日本ダービー」で、国歌独唱の責務を果たしたりしていますね。奇しくも平成最後の日本ダービーでした。

ということで、意外と競馬と縁が深いさだまさしさんについて、簡単に記事を書いてみたいと思います。

さだまさしさんの競馬との出会い

さだまさしさんは少年時代に、バイオリンの修行のため故郷長崎から千葉の市川に単身居を移し、一人で下宿生活をされていたのは有名です。

下宿生活の最中、近くに住む叔父に「動物園」にしばしば連れられていったのが、競馬との出会い、とのことでした。なお、その動物園には「馬」しかいなかったようですが…

よくステージトークなどで語られているのは、シンザンが「消えた」有馬記念(1965年)を、叔父に連れられて観戦したエピソード。「この馬は歴史に残る馬だから見ておけ」と叔父に言われて、満員の中山競馬場に連れていかれたとのことです。

なお、行きは電車で訪れた中山競馬場でしたが、帰路はなぜか市川まで歩いて帰ったようです。オケラ街道を肩を落として歩く大人たちを見ながら「なんでこの人たちは寒空の中を歩いて帰るのだろう?」とさだ少年は思いながら帰路についたとのこと。

さだまさしさんが初めて馬券を購入したのは1971年の、牝馬トウメイが勝利した天皇賞だったようです。

「面白い名前だな」「スピー”デー”なんだ」という理由で選んだ「スピーデーワンダー」との組み合わせで購入した枠連が大当たりし、ビギナーズラックに味をしめ以後競馬にのめり込んでいったようです。当時の配当を見てみると、枠連で24倍もついたんですね。

的場騎手との縁

さだまさしさんと的場(元)騎手はゴルフ仲間とのことで、的場さんが現役騎手のころから仲が良い、というのもファンの中では有名です。

さだまさしさんはステージトークなどで、的場騎手の馬を大事にする姿勢をよく語っています。以下は私の頭の中で再構成した内容ですが、概ねこんなことを言っていました。

的場騎手は、G1を勝っても絶対にウイニングランをしないんです。その事を彼に聞いたら、「だって、レースを一生懸命走ってきた馬はくたびれているですよ。そんな彼にもう一周させるのは可愛そうです。」って答えるんです。それを聞いて、ああこの人は本当に馬のことを大事にしているんだな、って感動しました

僕が知る限り、どの騎手も等しく馬のことを大事にしていると思いますが、当時の風潮に逆らってまで自分の哲学を貫く的場騎手の姿勢に、個人的に感銘を受けた記憶があります。

的場騎手がJRA1000勝を達成した際に、さだまさしさんは曲を作成しています。曲名は「ひとりぼっちのダービー」
的場騎手の1000勝記念パーティの際の引き出物として提供するものとして作成された曲で、パーティの際は的場騎手の歌唱した歌が録音されたCDが振る舞われたようです。

同名の曲は「おもひで泥棒」というアルバムにも、さだまさしさんの歌唱で含まれています。

なお、アルバム版では間奏でナリタブライアンが勝利した日本ダービーの実況が流れますが、的場騎手の歌唱版ではライスシャワーの勝利した天皇賞春の実況が使用されてるとのことです。

さだまさしさんの話しと少しずれる余談ですが、現役時代の的場騎手はライスシャワーのイメージから「マーク屋」という評価(ライバルの強い馬を徹底的にマークし、負かせる)が定着していると思いますが、私は彼の「追い込み」のレースがとても好きでした。
けして大げさなフォームで追うことはなく、極めて当たりは柔らかなのだけど、馬は的場騎手が乗るとゴムまりのように弾けて、びっくりするくらいの切れ味を発揮します。
代表的なレースは、エリモシックのエリザベス女王杯と、アグネスデジタルのマイルチャンピオンシップでしょうか。どちらも鮮やかな追い込み勝利を見せてくれます。

鳥取砂丘で出会ったタカイサミ

この「ひとりぼっちのダービー」という歌は、上述のように的場騎手のために書かれた、競馬をテーマとした歌です。

この歌は、さだまさしさんが鳥取砂丘で撮影で訪れた際に出会った一頭の馬との出会いがきっかけで生まれたようです。

鳥取砂丘で供用されていた観光用の馬に騎乗したさだまさしさんが、「この馬キレイだな」「こんなにキレイならサラブレッドに違いない」と思い、調べた結果、中央競馬で出走歴のある「タカイサミ」という名前のサラブレッドであることにたどり着きました。

そして、この馬が九州産馬であること、期待をされ中央競馬で走ったものの一勝も出来ずに引退をしたことなどに感情移入をし、産地の牧場(鹿屋の吉田牧場)や、管理調教師の松元正雄さんの元にも訪れて取材をされたりもしたようです。

そんな中で作られた歌が、「ひとりぼっちのダービー」という歌。夢破れた人(馬)の姿を、さだまさしさんらしい優しい視点で描いた歌になっています。


なお、鳥取県には、「鷹勇(たかいさみ)」という名前を冠した日本酒があります。このお酒と、鳥取砂丘にいたタカイサミとの繋がりはわかりませんが、偶然の一致としては面白いなあと思ったりします。

トウカイテイオーとの縁

誰もが知る名馬トウカイテイオー、その彼の引退式に、さだまさしさんが招かれ、花束を贈呈しています。

さださんはこの依頼を受けて「馬にどうやって花束を渡せば良いんだろう…?」と一晩悩んだようですが、実際は馬主の方への贈呈だったようです。というネタもステージトークの鉄板になっています。

トウカイテイオーの引退式に呼んでもらって、花束を渡せって言われてさ。一晩寝られなかったんだよ。どうやって、馬に花束渡すんだろうって思って。本当に悩んだんだけどさ、当日行ったら、何のことはない、馬主さんに渡すだけだったの(笑い)。

「なぜトウカイテイオーにさだまさし?」、という感じもしますが、先に述べた「タカイサミ」の管理調教師である松元正雄さんのご子息が、トウカイテイオーの管理調教師である松元省一さん。そういうご縁もあり、さだまさしさんへのご指名と相成ったようです。

さだまさしさんは元々シンボリルドルフが好きだったようで、その子、とくに初年度産駒のトウカイテイオーについては思い入れも深かったようです。

トウカイテイオーは1年ぶりの出走で勝利した有馬記念の復活劇が印象的で、私もテレビで見ていて衝撃を受けたのですが、後で知った話だとさださんはご自身のラジオ番組(さだまさしのセイヤング)の競馬予想コーナーで「トウカイテイオー1着 - ビワハヤヒデ2着」の一点買いの予想をして、見事的中をさせていたようです。

Gate J などでの話を聞くと、「トウカイテイオーをいかに勝たせるか、その絵図面を頭に描いていたらこれしかない、と思い、馬券を勝った。そしたら現実がそのとおりになった」とのことで、あくまでトウカイテイオーありきの、トウカイテイオーへの思い入れが強い予想だったことを伺わせます。

ここからは少し余談ですが、トウカイテイオーの引退式の日、その日のメインレースの「東京スポーツ杯」には、かつてのライバルだったシャコーグレイド(皐月賞2着馬)が出走し、引退の餞とばかりに自身2年ぶりの勝利を、テイオーの前で披露したことも思い出されます。

馬と人、そして馬と馬も、不思議な縁がありますよね。さだまさしさんのエピソードを軸に掘り起こしてみても、様々な縁があるのだな、と感慨深くなります。

さだまさしさんと競走馬

さだまさしさんと競馬の不思議な縁について書いてきましたが、「そこまで好きなら馬とか持っているのでは?」と思う人も居ると思います。

実際に、一口馬主という形ですが、さだまさしさんは馬に出資をしているようです。主にキャロットクラブを中心に、よく知られている馬としては「トゥザワールド」「ステファノス」など。

トゥザワールドは皐月賞で一番人気だった馬ですし、ステファノスも中距離中心にG1戦線で活躍していた馬です。これだけ聞くと、なかなかに馬主運(一口馬主運)も強い人だな、と思ったりもします。

中央馬主の資格についてはちょっと不明です。当然有資格者であろうとは思いつつ、かつては大借金もあったし、どうなのだろう。今後は馬を所持したりしないかな、と期待はしています。

さだまさしさんご自身の所有馬ではないですが、縁を感じさせる馬も中央競馬には何頭か居ました。

一頭は「サダマーサー」。響きはほぼさだまさし。準オープン〜オープン特別などで地味に長く活躍された馬のようです。

一番活躍したレースは、小倉競馬場で行われた小倉日経オープンでしょうか。オープン馬にまじりながら3着に健闘しています。
この時の一着がツルマルガール、彼女も鋭い差し脚が魅力の馬でしたが、生き写しのような切れ味で安田記念を制したツルマルボーイのお母さんですね。

あとは「カゼニタツライオン」。もう、あの代表曲のタイトルそのままですね。珍名馬名で有名な小田切家の所有馬のようです。

他にも地方競馬には「キタノクニカラ」という馬も居ました。ただこちらは、さだまさしさん繋がりというよりは、ドラマ繋がりでしょうね。

もう一曲、競馬をテーマにした曲

と、ここまで書いてきて、さだまさしさんにはもう一曲、競馬を歌詞に登場させている曲があるのに気づきました。

競馬で儲けようと新聞買ったら450円 もう馬券も買えない
たばこひと箱に発泡酒一本で430円 競馬場にも行けない
週刊誌買って缶コーヒーまで買ったら450円 既に馬券は買えない
DVD新作一泊借りたら400円 馬券買えても当たるとは到底思えない
次に生まれるなら 競走馬になりたい
遠い夢を走り抜ける 競走馬になりたい
でも強い馬なら種牡馬になれるけど 弱けりゃ何にもなれない
私は種牡馬にもなれない

あまりにくだらない歌詞で吹き出しそうになりますが、競馬に対する知識と愛情がなければ書けない歌詞だな、と、今になっては思います。

 













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