年末年始のさだまさし(2020~2021)

2020年の年越しは、さだまさしさんは大変に活発に活動されていました。
紅白歌合戦の歌唱から、間をおかずに都内某所(東京国際フォーラム)に移動しての無観客生配信で行われたカウントダウンコンサート、そして再びNHKに戻っての「生さだ」の2時間強の生放送。

私は諸般事情があってあまり生視聴してないのですが、NHK プラス配信チケットなどを活用して後追い再生して楽しみました。

この記事ではさだまさしさんのマニアックな記事というより、個人の感想を書きます。オチなし推敲なしの長文です。

紅白歌合戦(12/31 20:30ころ)

紅白歌合戦では、白組ということではなく、特別企画枠として「奇跡2021」を歌唱していました。
「奇跡」は29年前に発売されたシングル曲で、当時はトヨタのカローラのCMだった曲。今はセルフカバーされた新バージョン「奇跡2021」がSOMPOケアのCMソングとして使用されています。

僕がこの「奇跡」という曲をはじめて聴いたのは小学生の頃だった記憶があります。世間では恋愛の歌が多いけれど、これほど「人を愛する」ということについて真面目に歌われた歌はあまり聴いたことがなく、当時の僕はいたく感動してしまった記憶があります。
私がさだまさしの「沼」(果てしなく深い沼)にはまり込み抜け出せなくなったきっかけの一曲です。

紅白では紅白向けに間奏や2番の一部がカットされ短くアレンジされてましたし、おそらくほぼぶっつけで挑んだ東フィルとの演奏ということで、さださんは終始歌いづらそうにしているように感じました。
後のカウントダウンコンサートのトークでも「ちょっと発声練習してすぐ歌って」みたいなことを言っていたので、かなり準備不足の厳しい条件での歌唱だったようです。贔屓目に見がちな僕の視点でも、普段のさだまさしさんのコンサートと比べて、あまり高いパフォーマンスには見えませんでした。
それでもTwitterとかを見ると極めて高評価がならんでいて、この歌自体のもつ魅力は多くの人に伝わったのかなと思います。

ゆく年くる年さだまさし 生配信(12/31 21:30~)

紅白の歌唱から1時間も経たずに、会場を移動して、2時間半の生配信コンサートが開始されました。

このコンサートの模様は各プラットフォーム経由での有料配信も行われましたが、ダイジェスト的な内容は文化放送でも生放送されており、Radikoからも視聴可能です。

また、コンサートの途中で中継という形で「ももいろ歌合戦」にも参加し、「奇跡2021」を紅白とは異なりフルバージョンの本来の姿で披露していました。こちらの映像もAbema.tvから見逃し視聴ができます。

有料配信された生配信コンサートの模様はSNSへの書き込みはNGということだったので、ここでは文化放送で流された内容をもとに書きます。ラジオ内で生放送された楽曲/演目は以下。

芝浜(春風亭正太郎)
いのちの理由
存在理由~Raison d'être~
Birthday
小夜曲
黄昏迄
奇跡2021
主人公
残したい花について
漂流
柊の花
ひと粒の麦~Moment~
大晦日
春爛漫

上記以外に、録音した内容として「長崎小夜曲」「心かさねて~長崎の空から~」についても演奏内容が放送されました。

発声練習も十分でない状態で、かつかなりのハードスケジュールでコンサートに挑んでいるためか、この日のさださんのパフォーマンスは高音の声の伸びがいまひとつという感じでした。
また、服部克久さんが2020年に惜しくも亡くなられたこともあり、服部さんと一緒に作成した「小夜曲」「黄昏迄」を追悼として披露したのですが、これら2曲ではミスが大きく目立ちました(前奏の入りを間違える、サビの転調先のキーを間違える、等)。
年越しの定番曲「大晦日」でも非常にメロディが不安定でしたが、これは毎年カウコンの音声を文化放送で聴いていても毎回間違えているので、さださんはそもそも覚える気が無いのかな(笑)と思って聴いてました(自分の作った曲なのに…笑)

全体通して見ると、いつものコンサートよりちょっとミスが多めに感じましたが、何回か通して聴いてみるとよいパフォーマンスも多く、全体的にみていちファンとしては満足できる内容でした。

一番良かったなと思ったのは、配信に特化したサウンド環境になっていた(と思われる)ため、とても音質がクリアだったこと。普段なかなかライブ音源では聴き取れないコーラスやバイオリン・チェロの弦の音が鮮明に聴くことができたのは良かったです。

ファンが大好きな楽曲「主人公」の、ピアノ弾き語りバージョンもとても良かったです。この歌は個人的には歌詞も良いですが、メロディラインがさださんの楽曲の中でも一二を争う綺麗さだと思っており、シンプルなアレンジによりその美しさを堪能することができました。

そして、特に2020年に販売されたニューアルバムの中の楽曲については、コンサートツアーでも演奏していることもあってかとてもクオリティが高かったです。「残したい花について」の弦とピアノのアンサンブルの美しさ、「柊の花」昭和エレジーを思わせる落ち着いた雰囲気も良かったですが、やはり出色は中村哲医師の追悼歌「ひと粒の麦~Moment~」だったと思います。この歌は、理屈を超えて、僕の感情を揺さぶる曲です。

2020年11月に、中村哲医師が所属していたペシャワール会主催で行われた追悼イベントを私もYouTube Live 経由で拝見していたのですが、その際にもさださんが「ひと粒の麦」を歌唱されていました。歌にあわせてスクリーンに、中村哲医師が、自ら瓦礫を運び、重機を操作もして、何もない砂漠の荒野に水路を引き、本当にあたり一面が緑に変わっていく風景が流されていました。
さださんのコンサートトークや歌などでも伝わっていた彼の功績が、あらためて映像とあわせて伝えられる事で、本当にとんでもない、常人には想像もできないような偉大な功績を残された方なのだと感じます。
そしてなぜこのような偉大な人を我々は見殺しにしてしまったのかという後悔と、どうしたらこのように見事に生き抜くことができるのかという思いで、胸がつまる思いでした。

中村哲医師の偉大さはこの記事ではとても書ききれませんが、彼の好きだったとされる言葉「一隅を照らす」は、今のコロナ禍に直面した今だからこそ、見つめ直すべき言葉だなと感じます。

最後に、この激動の2020年を締めくくる形で、さだまさしの思いがトークで語られました。いつものおちゃらけのない、おそらく本当に今さださんが伝えたいと思っているであろう思い。これも胸に突き刺さるものでした。

「音楽は平和の象徴です。平和でなければ音楽なんて、だれも音楽なんて奏でることはできません。
(中略)
「コロナのばかやろー!!」って歌うのも、もしかしたら我々の心の歌なのかもしれないと思う。歌っていうのは、そういう言葉からはじまったってことがよくわかりますね。
今の苦しさを率直に伝える、きちんとした言葉で伝えていく、それがメロディに乗っていけば、これは次の世代への忘れられない1年の置き土産になるだと思いますね。」
「我々の心の中には、この国は狭い島国で、何千年も生きてきたのだから、ここで集まって暮らすうちに日本列島に住み暮らした人間のなにかいたわりあいみたいな心がきっと有ったと思うの。僕は。
今まで様々な困難を乗り越えてきた。私達国民の力で乗り越えてきたんですよね。
お金の無いときも、それから戦争であれだけメチャクチャになったときも、原爆であんなになったときも、それを乗り越えて、一つ一つ、一つ一つ、作り直して、私たちの国はまた普通の歩幅に歩くようになる。
(中略)
にも関わらず、こういうときに、絶対に出してはいけない愚痴、あるいは、もしかしたら心のどっかで思っている本音。
だってね、感染した人を罵るっていうことは、そういう事を罵った人が感染したときに自分をどんな風に罵るんだろうと思ってね。僕はそれを聞きたいなとつくづく思います。
人を罵ることだけではない、ものの伝え方が、僕はあるんだと思っています。」
「「医療従事者の関係者に拍手を」なんて口先では言いながら、「あの病院ではコロナの患者を受け入れている」「あそこの病院の看護師さんの子供だよ」って差別されるような、そんな日本は、断じて許してはいけないと僕は思っています。
本当に心の緊急事態です。これからどういう風にこの病気が展開していくかわからないけれど、我々は我々の力で、明るく、助け合って、乗り越えていかなければいけないということだけは確かです。
どうか、近所の人たちとか、自分のまわりの人達だけは、絶対にそんな風に心が離れていかないように。こんな離れていなければいけないときだからこそ、その距離感をもう一度確認しあう。」

年の始めはさだまさし(1/1 0:20~)

あれだけ感動的なカウントダウンコンサートを行ったというのに、新年初の生さだはNHK放送史上に残る放送事故で幕を開けました(笑)

予定調和しか存在しない今のテレビの中で、予測不能な出来事が起こりえる番組は、NHKではこの「生さだ」くらいしかないでしょう。
秒単位で一字一句台本通りロボットのように進行する予定調和の象徴のような紅白や、厳粛な雰囲気の「ゆく年くる年」のあとに放映される番組が、何故かこの自由でカオスな「生さだ」である、というのは、クレイジーでもあり、ある意味日本人の気質を表しているのかなと思ったりします。

さださんは「生さだ」の中で「テレビ離れは止められないから、テレビにすがりつく人向けの番組をやったほうがよい」という趣旨の発言をしてましたが、

そのご本人が、テレビ的ではない、大抵のYouTuberでもしないような破天荒で自由な番組をやっているのも、面白いです。

もちろん生放送の番組MCが遅刻するのは始末書不可避の出来事でしょうし、基本的にはあってはいけないことですし、Twitterを見ていると怒り心頭の方もおられそれは正しいと思います。

「生さだ」はとても自由な番組なため、さださんが意図的にか無意識にか不用意な発言をすることも多いです。
例えば今年も、番組中に東大クイズ王をdisるような不用意な発言もありプチ炎上してたりもしました。個人的には、ただ東大に入学しただけなのに「東大」という先人が長年かけて築いてきたブランドにフリーライドしてお金儲けの具にするのはどうなのかとは思いますが、公共放送で言う事ではないなとも思います。

それら含めて、「生さだ」が持つその自由さと面白さを楽しむ人が多ければ番組も続き、もし人気が落ちて皆の心が離れれば自然と番組も終わる、それだけかなと思います。
僕個人としては、体調の心配もあり、番組は控えめにして歌作りやコンサートに集中してほしいなという気持ちもありますが、さださんが「生さだ」を続けたいと思うのであれば陰ながら応援はしたいとは思っています。

今年の「年の始めはさだまさし」では、ゲストの登場もなかったこともあってか多くの歌を歌われました。

春爛漫
ひと粒の麦~Moment~
案山子

さすがに紅白、カウコンからの生さだ(遅刻)ということもあり、見るからに疲労困憊のお姿で、歌唱も最低限の声で、という感じでした。楽曲のパフォーマンスよりも、68歳になったのに歌手として逃げずにサービス精神旺盛に生歌を披露するさださんの姿が、個人的には印象的でした。

あと、画伯がホワイトボードに描いた絵がソーシャルディスタンス対応になっているというのが改めてバズっていたのも印象的でした。2020年の生さだでは毎月おなじみの光景でしたが、それだけ「年の始め~」は視聴者も多く、かつさだまさしファン以外の人にも見られているんでしょうね。

解禁された情報

年末年始にご本人や関係者の口から発表された情報も、なんとなくまとめておきます。

・ニューアルバム「さだ丼~新自分風土記Ⅲ~」が発売

4月21日だそうで。ドラマや映画の主題歌、そしてCMなど、テレビなどで多く見聞きする曲をセルフカバーで再録をするようです。人気のある名曲も多いため、楽しみですね。

今回のアレンジャーは、渡辺俊幸さんが担当するようです。

・生さだ拡大版を3月13日深夜(日付14日)に放送

例年3月に時間枠を拡大した「生さだ」が放映されていますが、今年2021年は東日本大震災から10年ということもあり、東北を舞台に特別版を放送するようです。

さだまさしコンサート2021(仮)は6月からスタート

これはファンクラブの会報に掲載されていた情報です。
今のコンサートツアー(存在理由)は2021年2月に千穐楽を迎えますが、新しいコンサートツアーは6月から開始のようです。発売が予定されているニューアルバムを中心とした構成になるのでしょうか。楽しみです。

・「稲佐山音楽祭2020」の2021年版も開催予定

文化放送のラジオで若旦那(新羅慎二)が話してましたが、2021年も8月7日に実施するようです。昨年はコロナの影響もあり無観客のイベントとなりましたが、今年は無事コロナも収束/終息して、皆が参加できるようなイベントになると良いですね。
下のリンクは2020年に開催された内容です。

余談

紅白で披露された「奇跡2021」、指揮者はさだまさしさんの盟友の渡辺俊幸さんというのは皆さんご存知のとおりですが、ピアノを担当されていたのは紺野紗衣さんだったんですね。
噂によると、紺野さんは「さだ工務店」のピアニスト・倉田信雄さんの奥さんということです。紺野さんはたまにさださんのコンサートでも倉田さんが病気(風邪とか)で欠場の際にピンチヒッターでピアノを弾いたりもしていますが、2020年も夫婦そろってさださんを支えていたんだなと、なんか感心してしまいました。

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