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社台のサンデーサイレンスに対抗する為に、約44億円(41株)という破格のシンジケートが組まれた「神の子」ラムタラのお話。

2002年に競馬大予言という雑誌に私が書いたコラムだが
JS、アロースタッド、ユニオン、ヒダカBUなど、
代表者が変わったり、世代交代が進んだり、
いろいろ整理している時に再度読み直してみた。

手前みそながら、なかなか面白い記事だったので、
少しリライトしてnoteに残しておこう。



~競馬大予言02秋G1号より~

今やスポーツの域を超えビジネスと変貌した近代競馬は
社台グループなどの大資本を中心に多くの金が動き、
同時にそれに関わる人の様々な錯綜が渦巻いている。

馬主・生産者にとって、大レースにおいてハナ差1つが
何億、いや、何十億という差になりうるのが競馬である

走るのは馬だが走らせているのは人間である。
そして勝ち馬は全てその背景にいる大資本に
繋がっている事にそろそろ気が付かなくてはいけない。

私達のビジネス社会と同様、投資に対する回収を目的に
様々な利害関係や関わる人の強弱で成り立っている事を
前提におかなければ競馬と戦ってはいけないのだ。

人的錯綜・・・

私が「競馬の師」と仰ぐ清水成駿先生の教えを元に、
競馬を考える上で最も重要視しているファクターである

1996年、バブル崩壊後にもかかわらず、
「打倒社台」、「打倒サンデーサイレンス」を目標に、
総額44億2千8百万という前代未聞のシンジケートが
静内の生産者達によって組まれた。

UAEドバイの首長家であるマクトゥーム一族が
所有していた「神の子」ラムタラの輸入である。

この三冠馬ニジンスキーの遺児が導入されたとき、
絶対に失敗に終わると私は確信していた。

その理由は、まず25歳という高齢時の産駒だった事、
また、時代に逆行した欧州の重厚な血統であった事、
そしてそれが、ある大資本の「大きな意思」によって
作りあげられた張りぼての名馬だったからだ。

新馬勝ち後のデビュー2戦目で迎えた英ダービーは、
出走馬15頭中、7頭がマクトゥーム一族の所有馬。
まるでノーザンの運動会を彷彿させるようなレースは、
マクトゥームの運動会さながらドバイダービーと化した

続くキングジョージでは出走馬7頭中、有力馬3頭が、
また、凱旋門賞でも、1番人気のカーネギーをはじめ、
バランシーン、スウェインという人気の有力馬が
まぎれもなくマクトゥーム一族の所有馬であった。

さらに、ペースメーカーを務めるルソーは、
マクトゥ-ム一族と非常に親しい馬主である
サーイド・ビン・マナナの所有馬であり、
4番人気のカーリングも、レース前に社台F社長の
吉田照哉氏にトレードされていたのである。

このように全てのレースにおいて有力馬のほとんどが
マクトゥーム一族の所有馬や、関連馬で占められており
一族の「大きな意思」が働いたとしか考えられない。
欧州競馬において人的な強弱バランスが働いた結果だ。

欧州の競馬関係者も、それを分かっているかのように、
生涯成績4戦4勝、凱旋門賞を無敗のまま制覇し、
当時、1971年のミルリーフ以来史上2頭目となる
欧州3大競走完全制覇を達成した馬にもかかわらず、
年度代表馬にも選ばれず、国際クラシフィケーションも
いまだに史上最低の欧州最強馬という評価なのである。


さてここで、今年のG1を考える上で、
まず今年の春のおさらいをしておきましょう。

フェブラ アグネスデジタル  社台系(米)
高松宮記 ショウナンカンプ  大柳F(浦河)
桜花賞  アローキャリー   矢野牧(静内)
皐月賞  ノーリーズン    ノース(新冠)
天皇賞春 マンハッタンカフェ 社台F(千歳)
NHKマ テレグノシス    社台F(千歳)
優駿牝馬 スマイルトゥモロー 千代田(静内)
日本優駿 タニノギムレット  カント(静内)
安田記念 アドマイヤコジーン 大樹F(大樹町)
宝塚記念 ダンツフレーム   信岡牧(浦河)

例年に比べて静内産の活躍が目立った春となりました。
静内産のクラシック制覇はイシノサンデー以来6年振り
ダービーはウイニングチケット以来9年振りとなります

結論から言うと、
今年のG1で働いているいわゆる「大きな意思」は、
先にあげたラムタラの「不良債権処理」ではないか?
という事です。

2000年7月8日、日本で最初のラムタラ産駒がデビュー、
2002年7月7日までの2年間の成績は(68 . 88 . 73 . 618)
勝率はなんと8%、オープン特別2勝以外は全て
1000万条件以下でのものと散々な結果に終わっている。

1頭あたりの賞金を見てもたったの118万円で、
これでは賭けに出た生産者や夢を見た馬主はたまらない

もちろんまだ3世代だけだが、これだけハズレていれば
種牡馬のニーズはすでに無いと言っても過言ではない。

牡馬は種牡馬としての種付け料、
そして牝馬は繁殖としての産駒の価格というように、
それぞれが最も重要な肩書きとなるレースというのが
クラッシックである事は周知の事である。

そのうち今年3つを独占しているのが静内産であり、
そしてラムタラ発起人会も全て静内の生産者である事を
偶然と見てはいけない。

また生産者にとって金のなる木は繁殖牝馬であり、
その最高峰である牝馬クラッシックにおいても、
桜花賞をラムタラ発起人会の会長矢野秀春氏が、
オークスも発起人会の千代田牧場代表飯田正剛が、
それぞれ獲っている事も見逃せない事実である。

この「ラムタラ不良債権処理」が秋のG1にも
反映されるのかは、流れを見ないと何とも言えないが、
参考のためにラムタラ輸入の発起人会のメンバーと
その詳細を書いておくとする。

矢野秀春(発起人会会長)
ジェイエス社長、アロースタッド代表、矢野牧場代表
主な生産馬には桜花賞馬アローキャリー。
ラムタラの繋養はアロースタッド、
種付権などの照会はジェイエスが行っている。

伊藤圭幸(発起人会副会長、グランド牧場代表)
主な生産馬は、スマートボーイ、プリエミネンスなど
アサティス、アフリート、ミシル産駒が多い
有力馬のほとんどが弟である伊藤圭三厩舎へ。

飯田正剛(千代田牧場代表)
飯田政子、飯田正といった家族名義馬もおり、
主な生産馬にオークス馬スマイルトゥモロー、
サスガ、ドリームカムカム、サマーキャンドルなど。

岡田義一(岡田牧場代表)
主な生産馬はタマモストロング、リキアイタイカン、
サンエムエックス

橋本博之(橋本牧場代表)
活躍馬はほとんどいない。
マルブツサンキスト(平5小倉記念)くらい。

武岡大佶(武岡牧場代表)
主な生産馬はエ女馬タケノベルベットがいる。
関連馬主に武岡敏夫、武岡雅子、武岡嘉一など。

井高義光(井高牧場代表)
主な生産馬に障害馬サンエムブラッサム、
エレガントモア

藤原悟郎(藤原牧場代表
ウイニングチケット、ロイヤルタッチ、
サクラユタカオー、サクラスターオーなど。

ここには伊藤圭幸と伊藤圭三調教師が兄弟である事や、
藤原悟郎と藤原辰雄調教師が義兄弟である事、
そして伊藤圭三と藤原辰雄両調教師は従兄弟であり、
また伊藤雄二調教師、伊藤正徳調教師、
さらに武岡牧場の武岡大佶も血縁関係である事を
付け加えておくと同時に、これらグループの利害関係や
動向などに気をつけておく事をお勧めする。


近年の主たるG1は社台系の馬が席巻してきたが、
今年の秋のG1は中山での代替開催もあり
予想を立てるのには難しいところだ。

春におとなしくしていた社台が巻き返すのか?
このままの流れで行くのかは現時点では何とも言えない

しかしただひとつ言える事は、
ハナの差1つで、勝つか負けるかで、
将来に渡って何億、何十億の差が出るG1の勝ち馬は
大資本をバックにした大きな意思が働くのは当然であり、
同時にそれらに絡む様々な錯綜が渦巻いている事、

そして勝ち馬には勝ちうるべく理由が
必ず存在するという事である。


あくまで、賞金との相談、馬の能力との相談でサラブレッドは走っている。その事を知っていながら、あえてこのことに触れず、単純に馬の能力だとか、時計比較だとかに終始する知ったかぶりの評論に心迷わされるほど愚かなことはない。

馬は走る。だが走らせているのは人間だ。出馬表を見て、勝ちたい馬と勝ちたくない馬をまず見分ける事が競馬予想の基本である。自分が馬主になったつもりで、次のステップまで考えながらまず予想してみる。馬主経済、厩舎経済を抜きにした競馬なんかどこにも存在するはずはない。

要するに競馬も、私たちの日常のビジネス社会と同様に、投資したお金の回収額を中心に、様々な人間の利害や人間関係の強弱のバランスの上に成り立っていることを予想の第一命題として考えてみてほしいのである

~清水成駿 財産のためにマジで競馬と戦う本より~



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