【守り続けてきた人々の想い~聖林寺十一面観音】

【守り続けてきた人々の想い~聖林寺十一面観音】

なかなかタイミングに乗れなかった『聖林寺十一面観音~三輪信仰のみほとけ』奈良国立博物館にやっと行って来ました。

会場に入り展示物をゆっくりと眺めていくと、中央にひときわ開けたスペースがあり、台座にのった立ち姿の仏像のまわりをぐるりと人がとり囲んでいた。

見上げると左手に花を挿した瓶を持つ姿が目に映る。国宝十一面観音だ。

二メートル以上はあるだろうか。十一面観音の横顔、そして頭の上の十一面(残るのは八面)厚みのある肩に柔らかに波打つ衣に目線を添わせながらゆっくりと正面から背中のほうへと回り込む。そして仏の背中に向かい合って立ったとたん胸の奥が震え涙が込み上げてきた。

「なんなんだろう?このエナジーは」

自分に起こっていることに理解ができないまま、震えが落ち着くまでその感覚を味わった。

こんどは真正面に立ち十一面観音の目線を追った。仏は一体どこを見ているのだろう。後退りしながら、十一面観音と自分の目が合う位置を探したが、思いの外、その眼差しは遥か遠くに向けられていた。その時、目の前の十一面観音の姿に、なだらかに曲線を描く三輪山が重なって見えた。

ぐるりぐるりと三回ほど仏像のまわりを巡って、それからコーナーに設けられていた動画スペースで解説を視聴した。

もとは大神神社に祀られていたが神仏分離令による廃仏毀釈を免れるため聖林寺に移されたそうだ。当時、多くの仏像が燃やされてしまったそうだが、なんとしてもこの十一面観音を守りたいと願う人々によって、今ここに受け継がれ、時を超えて存在しているのだ。

もしかしたら、先ほど感じた胸が震える感覚は十一面観音を守り続けてきた人々の切なる想いだったのかもしれない。

☆*°・。*

会場を出るとグッズショップがあり、十一面観音の光背がデザインされたトートバッグが目に留まる。黒地にゴールドで植物が伸びやかに描かれている。迷わず購入した。

展覧は3月27日までです。https://www.narahaku.go.jp/

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