クリエイターエコノミーを、マーク・ザッカーバーグのClubhouseから考える
2021年3月18日、ジョシュ・コンスティンのクラブハウス「Q&A with Mark Zuckerberg on the Creator Economy」に、マーク・ザッカーバーグ、ダニエル・エク、トビー・ルークが登場し、豪華な顔ぶれでディスカッションが行われました。
Clubhouse登壇者
・ジョシュ コンスティン(Josh Constine)投資家 元テッククランチ記者
・マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)Facebook CEO
・ダニエル・エク(Daniel Ek)Spotify CEO
・トビー・ルーク(Tobias Lütke)Shopify CEO
このディスカッションの中での大きなトピックは、クリエイターエコノミーでした。
クリエイターエコノミーとは:クリエイターがその「情熱」を武器にコアなファンを構築し、そこで稼げる仕組みだ
出典:【図解】今年の大本命。「クリエイターエコノミー」って何だ - NewsPicks
私も恥ずかしながら自分のYouTubeチャンネルを運用している手前、そのトレンドは日々感じています。クリエイターはtwitter、Instagram、YouTube、Clubhouse をはじめ複数のプラットフォームを使いこなすことは常識であり、今後もその流れは加速することでしょう。それは現代のクリエイターの宿命であると言えるかもしれません。
今回の「Q&A with Mark Zuckerberg on the Creator Economy」は、巨大IT企業のCEOが語る「クリエイターエコノミー」であり、非常に興味深いものでしたので、その内容を紹介します。
「クリエイターの収益源は多様化している」
前述した通り、今やクリエイターがひとつのプラットフォームに執着することは珍しく、例えばユーチューバーが Instagram や TikTok を併用することは常識です。
同時に彼らは、独自のD2Cショッピングやオンラインサロンなど、プラットフォームから脱却したビジネスモデルを探しています。
「プラットフォームはファンを獲得する場であり、そのファンを連れて独自のサービスで収益化する」…そんな流れに一石を投じるようなオン・プラットフォーム収益オプションの開発を、Facebookは急いでいるとのことでした。
「Appleのポリシーはクリエイターエコノミーを阻害する」
今春から導入されるAppleの「App Tracking Transparency」により、今後企業がiPhoneアプリユーザーを追跡して広告を表示するためには、ユーザーの許可を得る必要があります。
Apple以外の企業がアプリやWebサイトを通じてユーザーのデータを追跡する場合、事前にユーザーの許可が必要となります。
出典:Apple、アプリやWebによるユーザー追跡の許可制を今春導入と発表 - iPhone Mania
この新しいポリシーの導入は、企業からターゲティングの機会を奪い、クリエイターから収入を奪い、開発者から競争の場を奪うことになりかねません。
またAppleは、App Storeでの販売に対し30%手数料を徴収します。一方でAPIをハードウエア製品以外に公開することを拒み、App Store以外からのアプリダウンロードは認めず、SMSはデフォルトのものしか選べないようにしています。
こういった「独占」と取られてもおかしくないAppleの方針は、クリエイターエコノミーのトレンドに反することはもちろんエコシステムにダメージを与え、「インターネットと関連付けられてきた多くの事柄を終わらせる」と、今回のClubhouse登壇者は語りました。
「ワイヤレスイヤホンの流行は音声メディアのニューウエーブを解き放とうとしている」
Clubhouseの台頭により、誰もが「ついに音声SNSが来た!」と感じたことでしょう。
すでにSpotify、Clubhouse、ポッドキャストなど「長時間」のアプリは多数存在しますが、今後はコメディ、詩などを短時間クリップで提供するアプリが出てくるかもしれません。それはきっと、ブログに慣れた我々がtwitterを目にしたときのような衝撃になる…とのことでした。
今回のディスカッションに触れて
Facebook、Spotify、Shopifyは、クリエイターが独自の環境で収益を上げることに賛同しつつ、自分たちのプラットフォームを選んで貰える手段を模索しているようでした。クリエイターの成長と企業の成長を同じ方向に見るその姿勢には、大いに共感するところです。
一方で彼らはAppleを批判していましたが、Appleは2021年から年間収益が100万ドル(約1億円)以下の事業者に対し、手数料率を通常の30%から半分の15%に引き下げるプログラムを発表しているので、Appleがクリエイターエコノミーに否定的であるとは言い切れないかもしれません。
ちなみに今回登壇したSpotify Shopifyは、Facebookが主導するステーブルコインプロジェクト「ディエム(Diem)」協会のメンバーに加入しています。Appleの方針に、ディエムとしてどう動くのか… 今後目が話せないトピックになるかもしれません。
クリエイターエコノミーは、企業にも
クリエイターエコノミーにより「個」とそのクリエイティビティが注目されるトレンドは、ますます加速することになるでしょう。
私のビジネスパートナーである企業のCEOはおしなべてFacebook、twitter、noteを活用し、忙しさの合間を縫ってClubhouseに出演しています。クリエイターエコノミーという言葉が生まれる前から、彼らは「個」を発信することの重要性に気付き、ごく自然に取り入れていました。
この流れは貴方が会社員だったとしても無縁ではありません。副業でクリエイターデビューをするまでもなく、例えば企業のメルマガやInstagram、SNSで貴方の個性やクリエイティビティが発揮されるタイミングが来るかもしれません。
事実、私が支援しているベンチャー企業のある女性は、Instagramを担当するや否や半年でその才能を開花させ、Instagramカメラマンとして独立しました。「数年前までスーパーでレジを打っていたのに、こんな未来は想像していなかった」と彼女は話していました。
今後ますます拡がりをみせる「クリエイターエコノミー」に、引き続き注目したいと思います。
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