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自転車を手に入れた

ハリーさんとシローさんは大きな幹線道路近所に当時住んでいました。
その幹線道路にはなぜか自転車屋さんが多く、それも3ヶ月に一回も空気入れにすら訪れるか分からない近所の自転車屋さんというのとも違い、いわゆるスポーツバイクを扱うような、ウィンドウ越しに自分の価値観から遠く離れた値段の自転車が鎮座しているような自転車屋さんばかりでした。


毎日通る場所だったために二人はいつもショーウィンドウの向こうに見えるフレームの形から美しいスポーツバイクをさかなに「こういう自転車に乗ってみたいね」「実は昔ロードマンという自転車に乗っていてね」「小学校の時に自転車であの大きな川を超えてったことがあるんだよ」「てことは僕らは自転車が好きだってことだ」なんて話をしていたのでした。

そんな話を何度もして、乗るなら鉄のフレームが良いか、アルミのフレームが良いか、そもそも買ったところで乗るのかどうか、具体的なことを論じ続け…

決定打となったのは通勤距離。
当時ハリーさんは片道5km。シローさんは10kmとスポーツバイクの通勤としては馴染みやすい距離だったのです。
そしてハリーさんは空色のアルミのクロスバイクを、シローさんは鉄のシクロクロスバイクを買いました。二人とも10万相当の自転車ということもあり、自転車を傷つけやしないかとコンビニの前でちょっと止めるだけでもとても緊張したものでした。
またハリーさんはスポーツバイクに乗るのが初めてだったので、店員さんに言われたサドルの高さが怖くて最初はサドルにまたがっても足がつくようにしてもらったものでした。(自転車はサドルにまたがった時に両足ペダルに足を乗せて、膝が軽く曲がるくらいがベストの高さなのだけれど、初めてだと足がつかないということで転ぶ恐怖がつきまとうのです)

初めて自分のお金で買ったスポーツバイク。ママチャリとは比べ物にならない重さと、ペダルにちょっと力を入れてこげばママチャリでは信じられない速度が出る自転車。これはまったく別世界が開けたのでした。

もともと遠出するのが好きなハリーさんと、自転車に乗れるなら付いて行くのスタンスのシローさん。これでやっとトラブル続きだけれど充実の自転車ライフがスタートです。


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