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ある日の伊豆スカイライン #2


山道をバイクで走っている。

東伊豆から伊豆スカイラインへ向かう道。
立派な峠だなと思う。

勾配のある上り坂。
緩やかだけど深いカーブ。

曲がるたびに
ぐんと標高が上がるのがわかる。


高い場所に連れていかれている。


初めて通る道。
そして、夕暮れ時。

不安が募る。

不安に寂しさが混じるのは
さっきまで会っていた人と別れたせいか。


初めて通る道というのは
こんなに寂しいものなのだろうか。



子育てが一段落し
またバイクに乗り始めてから
通ってきた道は全て
過去に走ったことのある道だった。

もう一度走りたい道を全て走り終え
走ることの意味がわからなくなったわたしは
『逢いたい人に会う』という理由なら
これからも走れるのではないかと思った。


そして、今日。
新しい道を走ってここまで来た。



海沿いの道は暖かく
海は太陽の光が乱反射して
キラキラときらめいている。

海の青と空の青は
溶け合うように水平線で触れ合いながら
でも、お互い違うものだと感じられるくらいに
その境を微かに知らせている。


心が躍り出しそうだ。


風を切る音。
体感する暖かな陽射し。
全身に感じる海風。

初めての道だって大丈夫。
怖くない。

事故の怖さに負けることなんてない。



そう思っていたのは
行きだけだった。

帰りはこんなに不安になっている。


もう、行く先に目的がないから?
帰るだけだから?


陽が山の向こう側に傾き
こちらには陽射しが来ないせいか。

夕暮れという時間帯が
わたしを寂しくさせているんだろうか。



一つ、また一つと
カーブをクリアするたびに
下界から引き離されるように感じ
宙に浮いているような不安が募る。


これから伊豆スカイラインを
走れるんだろうか。


不安がピークに達した時
料金所に着いた。


『これから走るのかい?

 今日はね。4回も事故があったから。
 気をつけた方がいいよ。

 4回もあったからね。

 本当に。気をつけてね。
 4回も事故があって大変だったんだから。』



切符を渡しながら言ったおじさんの言葉。


何かが心の中で弾けた。







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