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雪の降る前に


ふぉ〜。ふぉ〜。
あたたかいものが吹きつけてくる。

ん?風?

ぼくは前足の間に突っ込んでいた顔を上げ、目をこすりながら周りを見た。

風が近い。

寝ぼけながら風の来る方を見ると、何かがぼくをのぞき込んでいた。

目が合う。
ん?だれかなぁ。

でも眠い。もうちょっと寝たい。
知らん顔して寝ようとすると、

ゴロン

お腹の横を何かで押されて転がった。

「なにすんだよー。」
怒ったふりだけしてみた。だって眠いから。

「これから雪が降るからここで寝ちゃダメだ。」

「えー。ゆきってなに?」

「冷たくて白い粉だよ。動けなくなっちゃうぞ。」

ふ〜ん。
ぼくはもう一度周りを見てみた。

他に誰もいない。
誰かいたはずなのに。

寝てる間にみんないなくなってしまった。


「きみ、だれ?」

「おれはイノシシだ。」

「イノシシ?」

「森に住んでるんだ。お前こそ誰だ?」

「ぼく?ぼくはだれなのかな?」

「お前1人なのか?」

「だれかいっしょだったけど、ねてるあいだにいなくなっちゃった。」

「とにかくこっちに来い。」

ぼくは連れられて、森の奥にあるイノシシさんのおうちについて行った。

あたたかい。

ぼくは、イノシシさんのお腹に鼻面を突っ込みながら眠りについた。


次の日、起きて外をのぞいてみると、辺り一面真っ白に輝いていた。

「目がチカチカするよ。」

「これが雪だ。あんなとこ寝てられなかったぞ。」

「ふーん。ちょっとなめてもいい?」

「いいけど、舌が痛くなるぞ。」

ぼくはちょっぴり雪を舐めてみた。
イノシシさんの言う通り、冷たくて舌がキーンとした。


雪の間、ぼくはイノシシさんのおうちにいた。

そのうち、冷たくて白いものは地面に吸い込まれていった。


「イノシシさん、どうもありがとう。」

「お前、これからどこ行くんだ?」

「はじめにねてたとこいく。」

「あんなとこ暮らせないぞ。」

「だれかくるかもしれないから。」

「じゃあ、毎日見に行けばいいからここにいろ。一人は大変だぞ!」

「いっしょにいてもいいの?」

「あぁ。俺はずっと一人だったから話し相手ができてちょうどいい。」

「じゃあここにいる!」


ぼくはイノシシさんと一緒にいることにした。

イノシシさんのおうちから毎日、初めにいたところまで見に行った。

毎日毎日行ってみたけれど、誰も来なかった。


だんだん大きくなってくると、イノシシさんはぼくにえさのとり方を教えてくれた。

イノシシさんと一緒に探しに行って、お腹いっぱい食べることもできるようになった。

もう一人前だ。一人でも生きていける。

***

「あぁ、よかった。」

目が覚めた。
夢を見てたみたいだ。

わたしが拾った犬の夢。

拾った時、兄弟がいた。
たくさん飼えないからって1匹だけ拾った。

すぐに大雪が降った。
みんな連れて帰って来ればよかったのに…

元気かな?
いつか会えるといいなぁ。

どうか雪の降る前に、イノシシさんに会っていますように。


   ❄️    ❄️    ❄️


さわきゆりさんが審査員なので、がんばって物語を書いてみました。

初めてのショートショートです。初めてなのでピリカルーキーに応募してみます。


物語って難しいですね!

でも…楽しかったです(*^^*)





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