バイクツーリング　群馬　榛名　その15

ずっと来たかった榛名山に来た。

バイクで来たのは初めて。
最後に車で来てから10年は経つだろうか。

バイクを停めておにぎりを食べ
思い切って湖畔に向かう。

振り向くと、大きな木。

バイクをひと目見る。
そこにあることに安心する。

また、湖の方を向いた。

左手の山に目がいく。

どこまでも広がる空の青。

迫ってくるような白い雲。

紅葉を見せてくれない山の濃い緑。

もう10月も終わろうとしてるのに。

夏の三原色が
わたしを励まそうとしてくれているのか。

石の看板があった。

こんなのあったんだ。知らなかった。

そのまま、湖のほとりまで歩く。

貸しボートがある。

白鳥のボートに
昔、乗ったことを思い出した。

横に、机とベンチがある。

偶然空いていたので
机にヘルメットを置いた。

ベンチに座る。

湖を眺める。

なんだか寂しい。

周りに人がいるほど
寂しさが増す気がする。

周りを見渡す。

榛名山と真っ青な空。

なぜ、ここに来たかったんだろう。

去年の10月末に
ここ榛名に来ようと思っていた。

その矢先、事故に遭い
去年、来ることは叶わなかった。

念願の今日。
思ったほど、気持ちは高揚していない。

なぜかな。

しばらく湖面を見つめる。

周りに人がいるせいかな。

落ち着かない理由を考えてみる。

榛名山はいつも人気がなかった。

誰もいない駐車場
人気のない貸しボート屋
しんと静まり返った榛名湖
ただ、そこにいる榛名山

人の気配のないことが
榛名山のイメージそのものだったのか。

他にいると寂しくなるくらい
静かなところが好きだったのか。

今は人が多くて
榛名山じゃないみたいだ。

辛うじて視界から人の気配を消して
湖面を見つめていたけれど
ざわつく喧騒は肌でわかる。

活気のある榛名山に
知らない場所のような不安がよぎる。

今は紅葉シーズン真っ盛り。

あれだけ、行きの峠が混んでたんだから
ここも混むだろう。

ここがみんなも目的地なんだから。

ここがゴールじゃなかったみたいだ。

また走ることにして
ヘルメットを持って立ち上がる。

後ろを向くと
遠くに変わった形の山。

そして、手前に可愛い街灯。

少し心が軽くなる。

もう一度、空を見上げた。

バイクで湖を一周しよう。

そう思うと
沈んでいた気持ちが少し軽くなった。

やっぱり。
ね。走らなくちゃ。

視線の先には
わたしのバイク。

大人しく停まって待っている。

行こう。
湖を見に行こう。

バイクのタンクにヘルメットを置き
走る準備を始めた。