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黒文字やにて⑤

やっぱり、話しを聞きながらだと手が止まりがちになってしまう。アイスのドロドロ具合が止まらない。一度集中して食べようと、アイスに向き直る。アイスを食べ終えると、その下からわらび餅が出てきて驚く。結構お腹いっぱいになってからの登場にひるんだが、ご夫人たちの話を聞きながらゆっくり食べることにした。ご夫人たちの話題は、やはり変わっている。

アディダス
「最近も忙しくしてるんでしょ。」

ハルメク
「いや、そうでもないよ。週に一回卓球してるくらいよ。」

ここにきて、定番の「最近どうなの?」が来た!この振りってだいたい会って最初の方で聞くよね?もうだいぶ話したのに。まだ聞いてなかったんだ。おもろー。

アディダス
「卓球?何で?」

ハルメク
「ずっと昔から入っている、福岡市婦人会(というような名前の会)ていうのでやってるのよ。」

アディダス
「へえ。そんなのがあるの。」

ハルメク
「私が結婚した時からだから、もう20年くらい入ってるかな。主婦で集まって活動するの。多い時には1000人くらい会員がいたような団体で、社会学的に取り上げられたこともあって、わりと有名なのよ。会計とかそういうのも全部自分たちで役職決めてやるの。今は(女性も)仕事する人がほとんどでしょう。だからもう会員も減ったけどね。」

アディダス
「あら、減ってるのね。若い人はいるの?」

社会学的に取り上げられてって、何それ、気になるなあ。もうちょっと知りたいところだけども。うん、やっぱりアディダスのご夫人は引っかからないなあ。

ハルメク
「そうねえ、いないわね。みんな働いてるからそんな時間ないのよ。1番若くて60代になるかな。」

一番若くて60代!

アディダス
「あら、そうなの。卓球はどこでやってるの?」

ここにきて、アディダスのご夫人が質問を投げかけるターン。今までハルメクのご夫人がリードする感じだったのにこの話題では積極的だ。

ハルメク
「公民館で。予約が取れれば、体育館を使えるんだけど。予約がいっぱいだとなかなかね。それに予約取っても、今コロナとかで、台を8台とかだしてやってたのに、4台くらいしか出せないのよ。」

アディダス
「そうなの。私、外からそういうの見たことあるんだけど、60代とか70代が半ズボンで太ももが見えてて、あれは違和感あったわ。」

ハルメク
「あら、そう?(筆者も同じ反応をした。)私もそうやってやってるわよ。ユニフォームもそうだし。練習の時はスウェットみたいなの着てるけど。」

アディダス
「あ、ユニフォームがそうなのは知ってるの。だから試合とかはしょうがないと思うんだけど。練習なのに、なんでっていうか。なんで太ももを見せるのかっていうか。違和感が、あるのよね。」

ハルメク
「違和感。。。そうか。。。そう感じるのね。」

私もその違和感、よく分かりません。どういうことでしょうか。

ハルメク
「あなたこそ忙しそうね。」

ハルメクのご夫人、そこ追求しないのかー!何がそんな違和感なのか、そもそもそれが違和感って何なのか、気になるよー。負けないでよー。

アディダス
「忙しかった。でも、やっと年相応のスケジュールになってきてる。合気道の教室、あそこも止めて。そう、10年くらい通ってたんだけど止めたの。それで今は、エアロビとかヨガとかをやってみたり。前は、今日はこれがある、今日はこれ、って感じで忙しかったのよね。後は、簡単な体操を教える教室をやってるの。」

年相応のスケジュールとは。。。?

ハルメク
「あら、先生なのね!」

アディダス
「そうよ。いつでもどうぞ!」

ハルメク
「いいじゃない。いろいろしててすごいわ。」

アディダス
「あなたもやってるじゃない。」

ハルメク
「やってるよ、卓球だけね。それで十分だもの。楽しいわよ。」

あ、やっぱりお互いを必ず褒めるっていうか、持ち上げるターンが必ずあるんだよね。それがなんか話題ごとにある気がするなあ。相手が”それいいね!”って感じになったら、この話し終わりみたいな、無事着地しましたみたいな感じ。共感してもらえるのがいいのかもね。

 少し間があった後、ハルメクのご夫人が「もう15時半くらいね」と言い、アディダスのご夫人が「あら、そろそろ出なきゃね」と言って、二人とも身支度をして席を立った。会計の際も、「ここ良いわねえ。良い雰囲気だわ。」と店員さんに声をかけ、「一人でも来るのにいいわ。」「そうね。また来ましょう。また来なくちゃね。」と言い合いながらカフェを後にした。おしゃべりは楽しくてなんぼ。そういうことを学んだ面白い一時であった。
 15時半と聞いて時計に目をやる。15時半を過ぎていた。もう2時間近くいたことになる。ご夫人たちのいなくなった席を見て、これは書き留めなくてはという衝動に駆られ、すかさず携帯のメモに覚えている限り書き取っていく。だいたい書き終わって時計を確認すると、16時20分になろうかというところだった。男性客は抹茶パフェを食べ終わったようで、また、たばこを吸いながら本を読んでいた。私はごちそうさまと言って会計を済ませ、今度こそ、たばこの臭いから退散した。

<完>

※全てが事実通りではなく、記憶が曖昧な部分や聞き取れなかった部分は、言い回しや言葉遣い含めて多少補っています。


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