なぜクッキーなのか ④【続・シングルマザーのクッキー屋の話】
⑤ Will :意思の確認 計画の策定
お店屋さんをするときに決める大事なことはふたつある。
◎ どこの、だれに、なにを、いくらぶん売るか
◎ それを、だれがよろこぶか
①から④の過程を経て「数人でお菓子屋さんをやる」ということだけ決まっているので、それに沿って具体的に考える。
実店舗をかまえるなら、立地を決める(どこの)。その場合、その地域のお客さま(だれに)を中心に求められる商品を考える(なにを)。ただ、お客さまがたくさんくる場所(どこに)に見合った家賃や、その分の商品をつくる人件費が多くかかるので、そこから逆算すると、とにかくたくさんの売上げがないと成り立たない(いくらぶん売るか)。
上記の場合、(いくらぶん売るか)が空欄なのに絶対条件になり、いくらぶん売れるかわからないのに、先に費用ばかりがかかる。かといって費用を抑えてお客さんの来ない場所(どこに)にしてしまうと、(いくらぶん売るか) が減ってしまうので、よほど爆発力のある商品(なにを)や、もともと有名な人でないとむずかしい。
これは職人さんが独立するときによくあることで、自分がつくりたいもの(なにを)から入って開店を決定し、そこが固定されているので、それが売れる場所(どこの)を選ばないといけない。たとえばオシャレなケーキを売りたい場合、東京の一等地でいちばん売れるとすると、どれだけ初期費用がかかっても、家賃や人件費が高くても、それ以外の選択肢がない。
または、いくらぶん売るかをあきらめて、場所が合わず売れなくても、つくりたいものをつくるという選択になる。
わたしの場合、優先順位はもう決まっていた。
・生活費を稼ぐこと・時間を自由につかえること・あーちんといっしょに夏休みをとること・あーちんに学校以外の居場所をつくること
生活費を稼ぐために「いくらぶん売るか」が大事だった。いくらぶん売るかというのはつまり「いくらぶん作れるか」ということ(つくらないと売れないから)なので、少ない人数でよりたくさんの金額分をつくれる商品はなにかを考えた。
また、いっしょに働こうとしているのは「パティシエの仕事はつらくて続けられないけど、おかしの仕事をしたい」という女の子たちだったので、もちろんお菓子は作れるけれど、その道でずっと続けているプロたちと同じものをつくったら、負けるのはわかっている。それに、働きたいというひとが少ない業界なので、働くひとのハードルを下げたかった。なので、技術に頼らずに、誰にでもつくれるもの(なにを)にしたかった。
前職で、あらゆるお菓子の製造数や人数や時間の管理をしていたので、同じ時間で、少ない人数で、いちばんたくさん(金額)つくれるのが何か、それはすぐにわかった。それが、クッキーだった。(やっとでてきた!)
【クッキーの利点】
・生産性が高く日持ちするので、一度にまとめて作ることができる。(毎朝はやくからその日の分を作らなくてもよいので、出勤時間が遅くできる)
・焼く前の商品面積がちいさい(薄いシート状)ので、おなじ冷凍庫に入る金額も、ケーキのそれとは比較にならない。
・賞味期限が長く配送ができる。
・むずかしい技術が必要ない。
・クッキーのみに絞ることで材料が絞られて原材料費をおさえられる。
では、どこのだれに売るのか、それを、だれがよろこぶのか。
つづく
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