かないくんとあーちんとあの子
さっき、本棚の「かないくん」と目があって、読んだ。
この絵本は、谷川俊太郎さんの文と松本大洋さんの絵でできた「死」をテーマにしたもので、ときどき読みかえしては考える1冊なのだけど、もうひとつ、この絵本を読むと思いだすことがある。
ちょうど2年前の今ごろ、「かないくん展」という展示をやっていた。
「かないくん展」は、ほぼ日が主催だったので、あーちんも企画展示のための協力をさせていただいた。
それは「死ぬとどうなるの?」という質問を、こどもにインタビューした映像を流すというものだった。(一部を文字でも展示された)
そのときのあーちんの言葉がこれ。
これを見ると、今でも泣きたくなる。
このさらに3年前、あーちんが3年生の夏に、同級生の男の子が亡くなった。
彼は、父親による母子殺害事件の被害者だった。
この事件について、学校や父母の間でもどこまで子供たちに話をするか議論になり、夏休みをはさむことでうやむやになった。(判決が出るまでは真相とはいえないという事情もあった)
子供たちは噂話に傷つき、不安定になっていた。
わたしもどうしたらいいかわからず、こんな事件はあってはいけないし、できればなかったことにしたいくらい考えるのがつらかった。
しかしあーちんにウソをつくことができず、その時にわかっていたことは話した。
彼女が、いまいちピンときていない表情でうなずいたのをおぼえている。
それから2週間くらいたったある日、いっしょに歩いていたとき、あーちんがとつぜん泣きながら話しだした。
「もう会えないんだって思って、でもそれがよくわからなかったんだけど、◯◯(彼の名前)がきのう夢に出てきて、会えたよ。元気そうだった。会いにきてくれた」
「何を話したの?」とたずねると
「「お母さんは?」ってきいたら「いるよ」って言ってた」
それでとても安心したのだと言う。また会えたことと、ひとりじゃないんだってわかったから。
彼女のそのやさしさと、彼の死にちゃんと向き合っている姿勢とつよさに、わたしも泣いた。
「◯◯、はんぶん透明だった」というので「マンガの見すぎじゃないの」と言って笑った。
「かないくん展」で「死ぬとどうなるの?」という問いに答えた「死んでも自由だと思う」というあーちんのことばは、彼への希望であり、ほんとうにそう思っているつよさを感じる。
わたしは、このことばを、これから先なんどでも思いだすだろうし、今までなんども救われている。
そしてわたしも同じように、死んでも自由だと思う。もちろん、生きているうちも。
そして、わたしが死んだあと、だれかがわたしのことを思いだすときに、そのわたしは、笑っているといいなと思う。
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