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続・あの約束をやぶる日

( 前回のnoteのその後のはなし )

あーちんに話をした。

トンの病気が治らなかったこと
トンがいなくなってちょうど1年が経つこと
あーちんに話さないでほしいと言われていたこと

あーちんは「言ってよー」と言いながら、しばらく泣いた。
そして部屋から彼が描いた絵やクリスマスカードを出してきたので、一緒にながめた。「このサンタの顔.... 」と言ってあーちんはすこし笑っていた。



わたしがトンの病気のことを知ってから、一度だけ彼に会いに行ったことがある。

福岡の能古島で行われたノコノコロックというフェスに行くという理由で、「福岡に行くから、会いに行くね」と彼に言ったら、「ガリガリやし髪も眉毛もまつげもないから、見られたくない」と言って、会うのをいやがった。

トンはいつも筋トレをしていて、クリスティアーノ・ロナウドのマネをして腕立て伏せを1000回やったりしていた。そのときと変わってしまった姿を見られたくないのだという。

しかし、「ほら、これやから」と、服を脱いでヘンなポーズをとった自撮りが送られてきたので、「これ見せられるならいいでしょ。つけま持ってくわ」と言って、福岡へ向かった。


しかし、トンはものすごく頑固なので、彼がダメと言ったら本当にダメなのだった。「会うのは良くなったときだよ」と、会ってくれなかった。

もちろんわたしもそう思いたかった。会わないままでは後悔するから最後に会いにきたんだ、なんて言えるわけがない。だけど、トンがいちばんわかっていたはずだ。そのときにはもう治療もやめていた。

福岡の知らない街で、時間の許す限り手当り次第、神社にお参りに行った。願掛けというよりガンを飛ばし因縁をつけるようにまわった。



ノコノコロックが行われた能古島はとても美しく、よく晴れていた。

波打ち際のおおきな木にはブランコがぶらさがり、こどもが海のうえに揺れていて、海にすこしずつ太陽がおちてきたころ、ステージでは、予定にはなく飛び入り参加でアーティストの永山マキさんが歌いだした。

それは、松任谷由実の「ひこうき雲」だった。

たまらなかった。このタイミングはなんなんだ。

今はわからない 
他のひとにはわからない
あまりにも若すぎたと ただ思うだけ
けれど、しあわせ


なんなんだよコノヤロウ とまた神様に因縁をつけながら、わたしはぜったいに、会いたいひとには会いたいと言う。すきなひとにはすきだと言う。どんなことでも、もう出し惜しみはしないと決めた。

そして、知らない神社の神様より、あーちんが言っていた「死んでも自由だと思う」ということばを信じて、福岡を後にした。


そのままわたしは彼には会えないままだったけれど、会いに行って、あの能古島で決めたことを、わたしはこの先忘れることはないだろうし、あーちんにも話すことができた。

会いたい人には会いに行って、好きな人には好きと言うんだよと。



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