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【さなのばくたん。】終末時計のカムパネルラ(後編)【ハロー・マイ・バースデイ】
この記事はさなのばくたん。ハロー・マイ・バースデイの内容のネタバレを大いに含みます。
もしこの記事に辿り着いた方がまだアーカイブ期間内であるなら、本編を見ていない場合、どうか本編を視聴して読み進めて頂きたく存じます。
本文は名取さなの積み上げてきた5年間に個人的な解釈を踏まえて読み込む内容となります。
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息を呑んだ。
だって、これは、その姿は。
喉元にぬるり、と蛇が巻き付いたような感覚。
目の前にあるものが理解はできても、受け止められない。
――この身体の3Dってあるんだ。
なんて、わけのわからない冷静ぶった思考が頭の中を巡る。
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『わたしはナースではないんです』
まるで今までの名取さなの全てを否定するような一言だった。
『憧れ、なんです』
『……何年もみんなを騙していました』
『だから、わたしはここに居る資格がないんです』
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『これは違くて!』
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『いや、違くはないんだけど…………ずっと、思ってたことだけど……』
名取さなが、名取■奈の話を、自覚したまま私たちに届けている。
『でも……』
言葉を濁した名取に、言葉を失っている私たちに、響いてくる言葉がある。
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それは今日、さなのばくたん。で違う世界線にいた名取たちの声だった。
お悩み解決、というのは、冒頭にあったように、名取さなと名取■奈が向き合うためのものだったのだ。
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『本当のナースかどうかは、今は大事じゃない気がする……』
『なりたかったわたしになれるよう……名取は頑張りたい』
わたしの
なりたかった
わたし
いま自分が聞いているのは名取■奈の、言葉なのか?
『だから今日ここで、せんせえたちの前で。……私の悩みと向き合う……新しい約束をさせてください!』
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凛とした声だったと思う。
強い決意を感じるような。
怖いという思いを抱えたまま、それでも前に進むという勇気を示すような。
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鐘の音を鳴らすような、綺麗な音だった。
名取■奈が、歌っていた。
「ゆびきりをつたえて」
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光の向こうに踊っている。
軽やかなステップではないかもしれない。
けど、彼女の足で。ちゃんと。
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名取さなの持っているうさちゃんせんせえは、母親から送られたもの……だったと思う。
けれど、両親はいない。とツイッターで言っていたはずだ。
それでも、名取にとって確かに残る何かだったのではないかと、そう思う。
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2020年に名取さなを知って。
配信やアーカイブなどを追うようになってすぐのことだった。
彼女は、泣きながら、でも確かに扉を開けたんだった。
あの時も、窓の外がよく見えていた気がする。
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ずっと。
覚悟はしているつもりだった。
過去に名取が言っていたように、名取さなは永遠ではない。
いつかいなくなる日が来ると。
だとしても自分のやるべきことは変わらないし、名取さなの進む先をあるがままに受け入れようと思っていた。
それでも、やっぱり目の当たりにすると、ダメだった。
寂しいし、辛い。
それは間違いない。
振り返ると、このばくたん。はずっとそのためにあった。
「汝の願いを叶えたくば、まず汝と向き合うべし」
王も、キョンシーも、制服さんも。
ずっとずっと、名取さなの抱えていた悩みだった。
「全部ホントで、全部ウソ」
というのも、名取さながせんせえたちを騙しているという自覚の上で、歌われたものだったのだ。
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バーチャルYoutuberとは、言葉を選ばずに言うと、時限爆弾のようなものだと思う。
生まれた瞬間からカウントダウンが始まっていて、その時が来れば跡形もなくなる。
もしくは、終末時計。
どのきっかけで針が進むかはわからないけれど、確実に、いつかその動きを止めるもの。
まるで心臓の音のように。
ひとたび止まればその人の名前を呼ぶことができなくなるのだ。
名取さなにおいて、名取■奈の物語が、終末時計の針だと思っていた。
長針と短針。名取さなと名取■奈がぴったり重なるときは、すべてが終わるときだと思っていた。
何故なら、私たちから見ることのできる名取さなにとって、常に名取■奈はアンタッチャブルな存在で、「どちらの存在が本当なのか」わからなかったから。
けど違った。
名取さなは、名取■奈だった。
名取■奈は、名取さなだった。
昨年、こんな記事を書いた。
気持ちのままに書き殴ったタイトルが強すぎたからか、多くの人に読んでいただいたように思う。
この記事には書かなかったけれど、銀河鉄道の夜に関して、一つの逸話がある。
銀河鉄道の夜の主人公、ジョバンニ。
その親友、カムパネルラ。
この二人の名は、「同一人物から」取られている。
というものだ。
ジョバン・ドメーニコ・カンパネッラ。
ジョバンニは、もう一人の自分であるカムパネルラと、旅をしていたのだ。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう」
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」
銀河鉄道の夜にて、二人の最後の会話だ。
答えてくれる人は、誰もいない。
目が覚めると、ジョバンニはカムパネルラを失っていたのだから。
けれど。
身を引き裂かれるような思いをしたジョバンニの未来を。
一体、誰が不幸になるのだと決めつけられるのでしょう。
運命だって変えられると歌った。
可能性が本当になると歌った。
わたしが、無限大になると歌った。
#名取爆誕 !
— 名取さな🍆3/7お誕生日イベント🍰 (@sana_natori) March 6, 2023
誕生日を迎え、なんと17歳から17歳へ
𝑯𝒚𝒑𝒆𝒓 𝑼𝒍𝒕𝒓𝒂 𝑩𝑰𝑮 𝑲𝒂𝒏𝒔𝒉𝒂 𝑨𝒓𝒊𝒈𝒂𝒕𝒐...
今日のイベントも…見てね!https://t.co/Tb84WdlkI9 pic.twitter.com/84ymUGpIoZ
現地ハイパー快晴!? #名取爆誕
— 名取さな🍆3/7お誕生日イベント🍰 (@sana_natori) March 7, 2023
意識をされたのかはわからないけど、このときの名取の発言の流れが、まるで、あの時できなかった日の再誕のようで。
たとえ全てがウソでも、名取■奈は名取さなを本当にしてここまで来たんだ。
『人に迷惑をかけないように生きていきたいです』
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逃げたいときも、立ち止まる日もきっとある。
だとしても、名取が探し続けたほんとうのさいわいは、きっとそこに――
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ゆびきりをつたえて。
制作をされたbermei.inazawaさんのスタジオ名は「campanella」。
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終末時計などではなかった。
物語が進んでも、未来を開いていくと歌ってくれた。
カムパネルラは、生き続けるのだ。
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名取さなと、名取■奈に心からの敬意と親愛を。
お誕生日、おめでとう。