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2022年個人的BL作品総括


今年もたくさんのBL作品に出会うことが出来ました。個人的な生活環境の変化もあって、例年ほどドラマもコミックも沢山見れてない気がします。が、むしろBL作品の数が一気に増えて、なかなか追いつかなくなってるのかもしれません。見た数は少ないけど、私個人が今年印象に残った作品などまとめます。(全然まとまってねえ)

タイBLドラマ編

2022年を象徴するタイBLドラマといえば、なんと言っても「KinnPorscheSeries」。ノワールな雰囲気満載の官能的な映像美、本格的なアクション、ボディガードとマフィアのボスという王道設定を描きつつ、2人を取り巻く“ファミリー”が織り成す複雑な感情を描くストーリー、これまでどちらかと言うと、学園物の目立っていたタイBLでしたが、その世界をまた1つ広げた作品でした。


そして「NOT ME」。実際の社会問題として存在する格差、権力、腐敗。それらと闘う若者たちの知性、正義、そしてLGBTQ+コミュニティの姿を、BLドラマという形で表現することの凄さ。出演している俳優さんの演技力、実際の活動家の方のキャスティング、何もかもが一段階成熟した表現だと感じました。正直なところ、映像作品としても頭ひとつ抜けていて私の拙い語彙でどーのこーの書ける気がまったくしないので様々な人に見てもらいたい作品です。


下半期私が最も胸を打たれたドラマが「WarofY」。Yシリーズ(BLドラマ)業界を描くドラマはこれまでも「LovelyWriter」がありました。WarofYはLovelyWriterが問題提起した「俳優という職に就く人たちの“仕事”の外での生身の人間としての存在」を主軸にはしているのですが、個人のラブロマンスにフォーカスするのではなく、どうしようも無い生々しい感情を交えながら、しかし、しっかりとBLとして成立させるという難しい構成になっています。普段からタイのYシリーズを見ている人なら誰でも思い当たる描写の連続は見ていて心臓が痛い。業界の光と影のなかでもがく、まだ若い彼らの人生をかけた破壊と再生を描く物語は、「あなたはどう思う?」という制作陣からの問いかけであり、視聴者を信頼していないと手渡せない、愛の物語でした。


このほかにも「CutiePie」「LoveinTheAir」「BigDragon」「The eclipse」などなど、2022年もタイBLには沢山お気に入り作品はあるのですが、個人的に思ったのは、多くの作品において、タイにおける「婚姻の平等」への言及がなされているということ。以前から、タイのYシリーズ俳優や制作陣たちは頻繁に婚姻の平等に対する連帯を示していましたが、それがメッセージとしてよりはっきり作品に描かれるようになっています。

それがどういうことなのか、WarofYを観るとまた違った印象を持ったりもするのですが、変化のひとつではあるのではないかなと思います。あと全体的に感じたのは映像の雰囲気の変化。私がタイBLを見始めた2020年頃は特にBL作品に関しては淡くて柔らかいカラーの映像作品か多かった気がします。WHYRU?のような映像のカラーに深みがある作品は珍しかったし、それは単に作品との相性なのか、予算の増加なのによるカメラの価格アップなのかは素人にはわかりませんが…。

今年もそうでしたが、来年予定されてるタイBLラインナップの傾向として、今年に増して社会人BL、オフィスを舞台にしたものが既に何作品も予定されてること、また「タイムスリップ」という設定を使った作品も複数あります。前者に関してはYシリーズが始まった当初ターゲットとされていた年齢層が歳を重ね共感を得る設定が変化している、というのを、有志の方が翻訳してくださった製作陣のインタビューでも読みましたが、そういった影響もありそう。後者に関しては、昨今タイが「ソフトパワー」として発信しているタイの歴史文化をクローズアップするのにも一役買いそうだな…とも思いました。(国をあげてYシリーズをソフトパワーとして観光の礎の一部にするのなら婚姻の平等を法律で成立させるべきでは…とはずっと思ってます。)


一方、2022年12月現在放送・配信中の「My School President」「Never Let Me Go」「I will Knock You」のように学生・学園を主体にしたジャンルも健在です。ただ普遍的なテーマであるが故にストーリーや映像や音楽にかなり力を入れないと衆目されるのが難しい印象。挙げた3作品はどれもかなりクオリティが高く、競争率の高さを感じています。実写BLにおいてますます勢いを増すタイBLドラマ。作品数が増えることで表現できる世界がもっと広がっていきそうです。


韓国BLドラマ編

タイと同じく以前にも増して作品数を伸ばしているのが韓国BL。2022年、エポックメイキングとなった作品は間違いなく「セマンティックエラー」だと思います。これまでも韓国BLは数多く作られていて、独特の設定やリズムのある展開で面白い作品はたくさんありましたが、低予算感が否めない作品も多くあり、もう一歩…という印象の作品もありました。

それを塗り替えたのが動画配信サービスWATCHAがオリジナル作品として手がけた、大ヒットBL小説の実写化「セマンティックエラー」。自分のルーティンを大切にして生きる真面目な学生サンウと才能豊かで人の輪の中心にいるが自己中な先輩ジェヨンが、お互いによって「エラー」を起こしながらも、惹かれあっていく物語。しっかりとしたストーリーと話のテンポ、それを支える音楽、そしてとにかく映像がおしゃれで美しい。こういう韓国BL見たかった!を叶えてくれる一作でした。


個人的にすごく好きなのは「初恋だけ3度目」。前世の記憶を持ったまま3度生まれ変わり、最初の人生の頃に助けた妖怪の手を借りながら前世の初恋相手であるハヨンと再会し、幸せになるために奔走するヨンソク。ファンタジー溢れる設定ながら、コミカルさとロマンティックを織り交ぜたストーリーがすごく可愛かったです。
ヨンソク役・主演のジン・ガンさんは31歳。大人の雰囲気漂う風貌が小説家として成功しているヨンソクにぴったりなのですが、その彼が泣いたり落ち込んだり時にはコミカルに焦ったりする姿は、やはりこれまで青春ものが多かった印象の韓国BLでは珍しいなと思ったのでした。


年末になってU-NEXTで見放題になったのをきっかけにようやく観た「Blueming 君に染まる」も素晴らしかったです。「君の視線の止まる先に」「ToMyStar」など、心の機微を描くのが本当に上手いファン・ダスル監督の作品。「ルッキズムはなくなるべきだが人類が消滅しない限り存在し続けるだろう」という、コンプレックスを抱えながら成長した主人公シウォンのモノローグから始まる本作。そんなシウォンを静かに想いながらも未熟な優しさを持ってしまうダウン、映画制作をテーマにした、どうしようもない青春と彼らの恋の行く末に心打たれます。


韓国BLは続々と新作が制作されていますが、目立つのはウェブトゥーンからの実写化。日本のいわゆる原作コミックありきの実写化とは違い、ウェブトゥーンはそもそもがドラマ化、IP化を見越して構成されるものも多いらしく、今後も多くの作品が生まれそう。


日本のBLドラマ編


今年の1作といえばやはり「オールドファッションカップケーキ」。原作が好きだったので実写化どうなるんだろうな…と思っていたんですが、想像以上に繊細な作品に仕上がっていました。充実はしているものの年齢を重ねるごとに新しいことへの挑戦ができなくなっていく野末、密かに彼を想う部下の外川は「アンチエイジング」と称してスイーツを食べ歩いたりと野末の生活を変えていく…。上司と部下という関係の中でゆっくり積み重なる駆け引き、最後までドキドキしながら楽しみました。


またBLドラマレーベル「トゥンク」より「永遠の昨日」も良かった。目の前で死んだはずの彼が「死んでいるのに生きている」という、ファンタジーな設定ながら、話数が積み重なるほど切なくて…。大切な人を喪うことの苦しさ、その想いとどう生きていくか。ラブコメが多い日本の民放BLドラマにおいて、稀有な一作でした。


今年の日本のBLドラマといえば、BLドラマレーベル「トゥンク」による、連続した枠でのBLドラマの制作・放送が話題になりました。チェリまほ、美しい彼など、日本だけでなく世界でヒットするBL作品をきっかけに、BLドラマ制作が増加しているのはタイや韓国と同じだと思います。ただ、どうしても…言葉と文化がわかりすぎるほどわかる自国作品ゆえに、民放の場合の低予算感が…より気になってしまう…。特に「トゥンク」に関してはラブコメ作品での演出などがチープに感じることも。

2023年は、「美しい彼」の映画公開、丸木戸マキ原作「僕らのミクロな終末」のドラマ化、三田織原作「僕らの食卓」のドラマ化なども控えています。ラブコメが多い日本の実写BLドラマに変化と刺激を期待しています。


台湾BLドラマ編

今年も台湾BLは引き続き安定した豊作といったイメージ。個人的には「台湾BLはいつ見てもどの作品も安定してる」という理由で、逆に「どこかでレンタル出てから…ポイント溜まってから…」と後回しにしてしまう感じになってしまいました。新作は主に楽天TVで配信されていますが、価格がお高め…。ならばVPNと海外配信サービスを組み合わせる…としても今の生活リズムで英語字幕を読み解く時間を保ちつつ視聴するハードルは高く…。「AboutYouth」「My Tooth Your Love 」も見逃してます。

しかし評判がよくて一気に購入してみた「正負之間~Plus & Minus 」はとってもよかった。幼馴染であり親友のゾーショウに片思いをするリーゴン。社会人になり弁護士の同僚としても付き合い続け、親からは見合いを薦められるも乗り気にならない二人の関係が、酔ったキスで変わっていく。ゾーショウとリーゴンの元依頼人でクリーニング屋店主のイエゾーとクリーニング屋の地下に店を構えるバーの美貌のバーテンダー加藤勇気との恋模様も良かった。主人公二人が離婚弁護士ということで、依頼に来る夫婦、あるいは夫夫の関係。アジア唯一の同性婚が可能な台湾だから描ける、結婚をテーマにした作品でした。いろんな作品の出演者がカメオ出演しているのも個人的に嬉しかったです。

台湾BLドラマはつい先日「HIStory5 未来のきみと出逢って~Love in the Future」(邦題長すぎん?)が配信開始になったばかり。

台湾発のドラBLドラマ全体の展開も注目です。

まとめ

2022年12月31日に記事まとめるという我ながらギリギリやん…という振り返りでしたが、ここ2年ほど実写BLを見てきた中で、どの国も作品数がものすごく増えていること、その中で競争が激しくなっていることを感じました。数が増える、というのは、生き残りをかけてそれだけ秀逸な作品が生まれやすくなるということもありそう。

また実写化作品の原作となるのが、既存の小説、ウェブトゥーン、漫画、だったのが「シナリオ募集作品」だったり、俳優のイメージで当て書きしたものだったり、やはり数が増えたことにより変化しているように感じます。

依然コロナ禍ではあるとはいえ、イベントが行えるようになってきたこともあって、ファンミーティングやグッズなどIP展開もどんどん激しくなりそう。

BL作品を取り巻く変化を眺めつつ、2023年も素敵なBL作品に出会えるといいなと思います。


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