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農園指定系限界紅茶オタクの前置き

紅茶について書くのはむずかしい。

おれは15年ほど紅茶を趣味にしている。とはいっても、多くある趣味のひとつで、そこまで詳しくはないがしかし、そうでない人よりは詳しく話せると思う。

だが紅茶について書くとき、肝腎の話題は多岐にわたりすぎている。
市販のティーバッグをうまく入れる方法からフレーバーの飲み比べ、遥か遠い国のアンティークカップを買いつけて見せびらかす趣味まで、知らない人に向けて話せることは多くある。

だから紅茶について書かれることはまちまちで、何がうまいか、何を買えばいいか、どんな菓子をつけたか、てんでばらばらになる。

紅茶というのはひとつのことをやる趣味ではなく、ひとつの農産物についての多彩なアプローチだ。

おれの専門分野は、スーパーやデパートがおすすめするブランドのいわゆる「ブレンド」を飛び出して、農園単位で選ぶという、紅茶好きのなかでも限界値のオタクである。

以下の説明はおれ、書いた人SABASTY個人の見解であることを先にことわっておく。

農園指定とはどういうことか

紅茶の原料となる植物、「チャノキ」は農産物である。
それを育て、収穫し、紅茶になるまで加工――すなわち製茶する、それらすべての出来ばえの如何によって紅茶の味わいは千差万別に変化するのだが、これを農園単位で違いを楽しむという趣味である。

どこそこ地方の何々茶園、その○○年春のできがよい、今年の秋の収穫分はまだ熟成が足りない、そんな単位の話をする。

したがって、フレーバーティーという、紅茶に果物やチョコレートの香りをつけた飲み物だが、これにはおれはほぼ興味がない。なぜなら茶という植物は、生育環境や製茶技術次第で、フレーバーティーよりも味が変化するからだ。(寒いときにスパイスティーをつくるくらいはする)

そしてここが大事なところだが、農園指定の紅茶に、「次の機会」はない。

今年うまかったものが来年もうまい保証はない。同様に、今年さほど賞をとらなかった茶園が翌年とんでもない化け物をつくりだすこともある。(実際はそこまで極端なばらつきはないけど、それでもありえる)

そのリアルタイム一期一会を追い求めるのが、農園指定紅茶オタクである。

ブランド系オタクとの違い

デパートや高級スーパーで買える紅茶、トワイニング、マリアージュフレール、フォションにハロッズ、カレルチャペック……みたいな紅茶と、何が違うか。

上記はメーカーの名前である。それぞれの商品にはたとえばイングリッシュブレックファスト、ダージリンブレンドなどと名前がついている。その意味するところは、「各産地の茶葉をメーカーが買いつけ、いつも安定した味になるようブレンドしたもの」である。

同じ紅茶なのだから出自はもちろん農園だし、最近は農園名を売りにした商品もある、が、やっぱりこれらは世界的に大規模な売り方をするので、年度や収穫時期により味が「変わらない」よう努力がされている。

こっちもすごい技術力であり、その味は名うてのバイヤー、手練れのブレンダーたちによって保証されている、いわゆるハズレがないのが特徴だ。
(紅茶の初心者はどちらかというとこうした主要ブランドの飲み比べから初めるのがいいと思う。だいぶちがうので)

ブランド系の趣味を持つ人は「おいしいとわかっている」ものを各ブランドの味の傾向の好みで選ぶが、農園指定系オタクは「おいしいかどうかわからない」ものにもチャレンジする、そうした違いである。

ブランドの紅茶には、農園指定オタクが追い求めるような「2019年5月の収穫分だけめっちゃ大当たり」というものはない。
一方で、農園指定系オタクは「ハズレ」も引きやすく、おれなんかは通年で必ず安定しているブランド紅茶たちを尊敬している。

おれ個人の対応だけれど、ときどき飲んで基礎を思い出すため、大手ブランドのお茶を常備してある。具体的にはウェッジウッドのイングリッシュブレックファストが好きです。

ここまでが前置き

こういう限界オタクが紅茶の紹介記事を書こうとして前置きが長くなったので、前置きだけを分割しました。

本編はいくつかに分けて今後、書いてゆこうと思うんだけど、そのたびにこれを説明するのが面倒なのでしたためた次第であります。