知りたくない自分のこと
ダニエルは元々タナー家の人。ダニエルが家を出てから産まれた第三子のアシュリーくんを加えて、五人家族の長男坊でした。
最初は義両親と仲良くしようと、レディオーレも頑張りましたが、お姑さんはとにかく気難しい人。のんびり屋の旦那の母とは思えないほどキビキビとした淑女です。
どんなに話しかけてもなしの礫で、早々にお姑さんとの関係構築を諦めたレディオーレは、義実家の中でも自分との関係構築に前向きだったオルネラちゃんやアシュリーくんとだけ親交を深めてきました。
そんなお姑さんに見た目そっくりな第三子。加えてエルレディの性格は合理主義で、なしの礫なところもそっくり。
思ってしまいました。「可愛いと思えない」
まさかこんな感情が自分の中にあるなんて!
長男と次男が同じ系統の顔立ちだったことも、その感情に拍車をかけていました。
長男はかわいらしい顔で、ダニエルとレディオーレの見た目がうまく融合していました。次男も髪型や目の形といった細かな点は違えど、基本的な様相はかなり一致していたため、私は長女も同じ様相をしているものと思い込んでいたのです。
待望の女の子でしたし、妊娠までが相当大変でしたから思い入れもあり、エルレディに引き継ぎしようかしらなんて、そんなことも考えていたくらい、私の中で長女に対する期待が膨らみに膨らんでいたのです。
それが。
どうしよう、可愛いと思えない。
こう思ったことにショックを受けました。私はどんな見た目でも、どんな個性でも愛せる人間じゃなかったと気付いたからです。
エルネア王国はゲームです。ですから、遺伝子レベルで様相を変える最強整形アイテムも存在します。
衝動的にアイテムを使って長女を自分好みの顔立ちにするも……当然ながらそれはもう、長女ではありませんでした。
色々な考えで頭がいっぱいになり、とてつもない罪悪感に襲われました。その日はセーブすることなく、Switchの電源を切ったことを覚えています。
一晩立って決めたのは、そのままの長女エルレディと過ごす、ということ。
アイテムを封印し、エルレディとお出かけをしたり、会話をしたりして過ごしました。
顔立ちや言葉遣いは、すぐに気にならなくなりました。ぶっきらぼうな物言いながらも、優しい子だと実感したからでしょう。
もう〜可愛いなぁ……
そうです、数日共に過ごすうちに、エルレディを可愛いとしか思えなくなりました。我ながら現金です。
長女の誕生は、私にとって非常にショッキングな出来事となりました。
親がこう感じたなんて、エルレディもショックでしょう。考えるとつらいです。ゲームだろうと申し訳ない気持ち……
あなたが素敵な大人になるまで。大人になった後だって、見守らせてくださいね。
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