姉の嫁入り

父ダニエルを失った悲しみを抱えながら生きた206年。新しい年が明け、とうとう長女エルレディの結婚式の日を迎えます。

トーナメントにおいて、初代レディオーレは初戦敗退し、近衛騎士団長の任を解かれたため、207年からは住まいを移しました。この住まいでは、初めて子どもを送り出すことになります。

そして、長女からはもう、両親二人が参列する式はありません。

二代目リンヌエルの引継に巻き込まれ、10歳になるまで結婚できなかった長女。一歳ショックと言い、王族計画と言い、兄姉の中で一番色々なことを背負わされ、振り回された子だったかもしれません。母として考えた時の反省は数えきれず……

続く次女、三男、三女の子育てに余裕ができたのは間違いなく長女のおかげでした。初代を真に母にしてくれたのは、エルレディです。

深海を思わせる婚礼衣装は、気高く思慮に長けた長女によく似合います。

長女は、自分の運命に静かに抗いながら、自分が欲しいものをしっかりとその手に掴んできた女性です。お相手のワイアットさんは農場管理官で、金銭的にもなんら問題はなく、しかも真面目で長女にゾッコン。結婚相手として、これほど素晴らしい人もいないでしょう。

こんな風にはしゃぐ長女を見ることができたのは、家族ではなくワイアットさんのおかげ。そのことに一抹の寂しさを覚えつつ、姉の幸せを願うリンヌエルでした。