寝取られギター

人　物
佐々木浩二（４０）食品加工会社営業
櫻井洋二（４０）スタジオミュージシャン
佐々木佳子（３８）佐々木の妻
佐々木美奈子（１４）佐々木の娘

〇川崎給食センター・厨房

大きな寸胴などがおかれて白衣の調理人がせわしく動き回る厨房。佐々木浩二（４０）が全身白衣の男性に必死に頭を下げている。

佐々木「そこをなんとか」

センター長「気持ちはわかるけどね、うちも少子化でほら、あれが、それだから、ね」

 〇佐々木家外観（夜）

低い石塀のある一昔前の昭和デザイン家屋。雑種らしい白い犬が一匹繋がれていて一声吠える。その白い犬をしゃがみこんで撫でているスーツ姿の佐々木。

 ○同・居間（夜）

こたつの上に所狭しとミカンや飲みかけのペットボトル、ペン立て等が脈絡なく並んでいる。誰も見ていないＴＶがだらだらかかっている。部屋の床には雑誌やタオルケットが散らばっていて、その山の中から佐々木美奈子（1４）が現れる。

美奈子「やべぇよ～！もう～やべぇよぉ～！」

 〇同・台所

残り物がそのままになっている鍋とフライパン。サイドテーブルには調味料や袋の開いた小麦粉などが所せまし。その隙間の中で二人分の珈琲を淹れている佐々木佳子（３８）

佳子「えぇ？何がぁ～？」

 〇同・居間

美奈子、こたつの上に顎を乗せて突っ伏している。

美奈子「今回の期末試験最低だったし、るみちゃんはＬＩＮＥ既読スルーだし」

佳子、足で床のペットボトルをかき分けながら。

佳子「いつもの事じゃない～。ちょっとそこ開けて美奈子。珈琲置くから」

美奈子ざらざらとこたつのモノを床に避ける。

美奈子「問題はそこなのよ。いつもそういうじわぁ～っとした嫌な事が山積みなのよ。この、コタツの上のように」

佳子「まぁ～、確かにねぇ。あ、そうそう、母さんまたパート首になっちゃった」

美奈子「ふぇッ！！」

佳子「今月お小遣いちょっとカットかなぁ」

美奈子「え～」

佳子「あ、美奈子じゃなくお父さんのね」

佳子「そうだよね」

佐々木、スーツのネクタイを緩めながら居間に入ってくる。

佐々木「ただいまぁ。あ、いいなぁ珈琲？」

佳子無言で飲みかけの自分の珈琲を差し出す。佐々木それを飲みながらコタツにもぐる。

佐々木「あ、ありがと」

佳子「お父さん今月お小遣いカット」

佐々木「え！なんで？」

佳子首に手を当てて切る動作。

佐々木「あー」

佳子、佐々木から珈琲を奪って飲む。

佐々木「実は俺もさぁ、一つ契約切られちゃって。給料カット」

佳子・美奈子「えぇえつ！」

美奈子「呪われてる…この家呪われてるわよ」

全員うなだれる中テレビの音だけが聞こえてくる。

タレント（声）「そうなんです！開運のためにはまず捨てる事、物が多すぎると運気が下がります！断捨離！断捨離なのです！」

三人一斉に顔を上げる。

佳子「お父さん」

佐々木「うん」

美奈子「これは」

佐々木「いくぞ！」

三人一斉に立ち上がる。

 〇同・台所

佳子冷蔵庫の中をどんどん捨てていく。

 〇同・居間

美奈子こたつの上のモノをごみ袋になだれ込ませていく。

〇同・寝室

佐々木、布団の周りに散らばった雑誌やペットボトルや紙ごみをごみ袋に入れれて布団をめくる。布団の下で畳がかびてキノコが生えてる。

佐々木「うっつわ」

佐々木ティッシュでキノコをつまんで捨てる。

 〇同・台所

スッキリした台所、満足げな佳子。

 〇同・居間

スッキリした居間、満足げな美奈子。

 〇同・寝室

スッキリした寝室。押入れの前で固まって悩んでいる様子の佐々木。

 〇同・居間

佳子・美奈子顔を見合わせて

佳子・美奈子「よし！」

二人寝室へ向かう

 〇同・寝室

佐々木、部屋の真ん中で押入れを眺めている。佳子と美奈子が入ってくる。

佳子「お～！きれいになったねぇ！」

美奈子「やるじゃぁん」

佐々木、ビクっと二人を振り返り背中を押入れに向けてじりじりと後ずさる。

美奈子「…どうしたの」

佐々木「何にもないよ」

佳子「…何か隠してるの？」

じりじりとにじり寄る二人

佐々木「来ちゃダメだ！」

後ろの押入れでがたりと音がして隙間からギターケースがはみ出てくる。

佐々木「出てきちゃダメだよ！」

佳子、佐々木を押しのけギターケースを奪い取る。

美奈子「え？ギター？」

佐々木転んでよろけながら

佐々木「よせ！美奈子に触るな！」

佳子「はぁ？」

佐々木、佳子からギターを奪い取る。

佐々木「み！美奈子は捨てさせないぞ！」

美奈子「私…？えっ？」

佐々木「美奈子は俺の大切な…大切な！」

佳子「そんな話…聞いたことなかった」

佐々木、ギターケースを押入れに仕舞う。佳子、それを押しのけてギターケースを奪う。

佳子「捨てます」

佐々木奪い返し

佐々木「ダメだよ！」

佳子奪い返し

佳子「女の名前ななんかつけて！誰よ美奈子って！」

美奈子「私…？えっ？」

※シナリオスクールに通っていたときの練習作です。いつもの事ですが、書き終えたいですね。主人公のイメージは小日向さん。この後小日向さん（を、イメージした主人公）はギターと旅に出るのです。ロードムービー書いてみたいですよね。

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