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ダークサイド桃太郎

むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました

おばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました

おばあさんは大きな桃を拾い上げて、家に持ち帰りました

桃を切ってみると、なんと中からどす黒い塊が現れました
よく見るとその塊がモゾモゾと動いている、、、

人だ、、、
捨て子を桃に入れて川に流すなんてひどい事を、、、

おじいさんとおばあさんは捨てた親への憎しみをあえて忘れず生き抜く強さを持つようにと「桃太郎」と名付けました

おじいさんとおばあさんの願い通り桃太郎は誰にも負けないほど強く逞しく育ち、桃太郎は捨てた親への復讐を誓いました

復讐のために眷族として戦うに値する強い獣たちも育てました

犬、猿、雉

それぞれが桃太郎に忠実に従う軍用獣として完成していました

そんなある日

おじいさんとおばあさんの調査から桃が流れてきたのが川上の先にある「鬼が島」という所だと情報が入ります

しかもその鬼ヶ島は桃太郎たちが住むこの里を乗っ取ろうとたくらんでいるというのです

「俺、鬼ヶ島に行って全てのカタをつけてくる」

いよいよこの時が来たとおじいさんもおばあさんも勇気づけて送り出してくれました

ところが、いざ鬼ヶ島についてみると人っ子一人いない

、、、これはどうした事だ
島を間違ったか、いや、雉が空から探したんだ間違いない

「しまった!!!ものどもとって返せ!」

急いで戻ったものの時すでに遅し
里は業火に包まれ、おばあさんはむごたらしい姿に、、、

おじいさん!おじいさんはどこだ!

その時桃太郎の後ろから低く地を揺らすような声がします

「おぉ、お前が聞こえも高い桃太郎か、このジジイも運の悪い奴だなぁ、お前のような忌み子をかくまったばっかりにこんな目に合って」

おじいさんは体長2メートルもあろうかという大男の腕の先にまるで朽ちる寸前の果物のようにぶら下がっておりました

「も、、、桃太郎、、、こいつがお前の、、、」

ザク!!ズズ、、、、ズズズ、、、、ズズズズ

全てを言いきらぬうちに男の刀がおじいさんの喉元をかっきりました

おじいさんの首を大男の手元に残し、身体だけがドサリと地面に放たれた

桃太郎はフッと一瞬視界が白くかすむのを感じた
と、同時に全ての周囲の音が掻き消えていた

目の前の大男をまるで紙切れを切るようにひらりと二つしたのを皮切りにその後桃太郎はバッタバッタと鬼ヶ島の手の物を切って切って切りまくりました

もちろん犬猿雉も共に戦います

返り血の赤、里が燃え上がる炎の赤
返り血の熱さ、燃え上がり続ける炎の熱さ
そして焦げ付くような生臭い香り

全てが混然一体となって桃太郎をどこかへ誘っていくようでした

切っているのは果たして鬼ヶ島の手の物だけであったろうか、、、

今視界の端に切り取られた白い尾が見えたように思う
自分の歯が噛み千切ったのは鳥の羽ではなかったか
自分が握りしめているこの毛が生えた小さな手は誰のものだ

既におじいさんもおばあさんもこの世にはなく自分は誰の為に戦っているのだろうか

そうして里には誰も、いや、何もなくなった

そこにはもう誰も必要としないほどに強くなった桃太郎
そして同時に誰にも必要とされなくなった桃太郎が

ひとり焼け野原に立ち尽くしていたのでありました

◆桃太郎闇落ちエンド

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