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あたるとしのぶ、しのぶが好きという話

元主役カップル


うる星やつらの主役カップルといえば諸星あたるとラムである。
しかし当初あたるの彼女はラムではなく三宅しのぶだった。
本来はあたるとしのぶ←ラムの構造になる予定だったと聞いたことがある。
しかしラムの人気が高まったことによりしのぶの座はラムがおさまることになったらしい。

実際、原作の序盤を読んでいるとあたるとしのぶのカップルで物語が進行していくしラムが出てきたあとも結局はしのぶと結ばれると示唆されている話もある。
ただ段々とそういった部分はなくなりしのぶからラムへとヒロインの座はシフトしていってしまう。
こう書くとラムはなかなかに悪女であたるはしのぶから乗り換えた薄情者、しのぶがかわいそうなイメージだが不思議とそんなネガティブな風にならないのはキャラクターたちの性格によるものが大きいと思う。

三宅しのぶという女


彼氏もヒロインの座も奪われたしのぶだがあんまりかわいそうな印象がない。
というのもわりと切り替えが早く現実的な性格をしているからである。
当初こそあたるをラムと奪い合っていたが早々に愛想をつかし面堂終太郎に近づき始める。
それでいて元彼であるあたるともまんざらではないと思っているように見える。
そうやって一瞬ときめきながらすぐに現実にかえるのが毎度のパターンである。


面堂終太郎は顔が良く金持ちで優しく好きになる要素は多いが家柄の格差が大きく、またこれらを抜かせばほぼあたると同等に女好きである。
諸星あたるは浮気性でやたら妙な事態に巻き込まれる奇特な星のもとに生まれついた男だが同じ庶民で幼馴染でもあり一緒にいて気楽である。だがどうしようもないレベルで女好きである。
冷静に考えると「無い」。

こういう現実的な考え方ができるのでかわいそうとはあまり思えない。
腕っぷしとともに性格もタフな女性である。

というかしのぶにとって気になる存在というのは一般的な好きという意味とは少し違うように思える。
彼女の気になる存在というのは自分におもしろい世界を見せてくれる存在である。
これは物語終盤において彼女の理想とする未来が披露されたことでわかる。
今と変わらぬドタバタした日常がそこにはあった。

そんな彼女だが作者の高橋留美子氏としては彼女の存在と行く末を気にかけていたらしく物語の終盤においてちゃんとしのぶの物語をかき上げている。
そこでようやく彼女は本当に愛する相手を見つけられたのではないだろうか。

諸星あたるという男


彼はしのぶと違いずっと主役であった。
当初はうっとおしがっていたラムに本気になりながらも登場する数多の女性たちへのアプローチを欠かすことはない。
ヒドい男だがそこまで不快感を感じさせない不思議な魅力の持ち主である。

あたるはそもそもしのぶと付き合っていて、ラムが現れたあともしのぶを第一に考えていたし彼女に愛想を尽かされたあともまだ彼女をしばらくは諦めていなかった。
けれど物語が進むにつれてしのぶにもその他の女性と同じアプローチをするようになっていく。
こうなるとしのぶもあたるにとってその他大勢のカテゴリーに入ってしまったかと少し寂しくなるが完全にそういうわけではないあたりに救いを感じる。

あたるにとってしのぶは大切な幼馴染である。
それだけはラムがヒロインになろうが変わらないことである。
しのぶにとってもそうだ。
恋人関係ではないにしろ嫌いになったわけではない。
あたるはしのぶに危害の及ぶ可能性のあるものを近寄らせないようにしているし、しのぶはあたるに忠告をすることがある。
変わらない関係性に読者は安心させられているのではないだろうか。


しのぶさん好きだあああ


くちびる番長ではないが私はしのぶが好きである。
うる星やつらにおいて最も幸せを願いその結末が気になったキャラクターである。
もはやうる星やつらはあたるとラムが主役の物語であるが、しのぶが最後までヒロインだった世界のうる星やつらを見てみたいなと思うことがある。
(とはいえラムもちゃんと好きである)
もしこの記事を読んでからうる星やつらを読むことがあれば、あたるとしのぶ、特にしのぶに注目しながら読んでみてほしい。