新垣結衣の結婚で湧いて出た「星野結衣」 私たちは『逃げ恥』から何を学んだのか

初出:wezzy(株式会社サイゾー)2021.05.20 17:37

5月19日、新垣結衣と星野源が結婚を発表。2016年に放送された人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で、夫婦役を演じた二人の“逃げ恥婚”に、世間は祝福ムードで盛り上がった。

 一方、ネットユーザーたちの一部の言動が物議を醸している。

 まず、「星野源は新垣結衣を手に入れた」という趣旨の投稿だ。中には、新垣の地位や名誉と並列した書き込みも見られる。当然だが、妻は夫の“もの”ではない。妻を夫の所有物のように表現することには違和感がある。

 「星野源は新垣結衣のようなすごい女性を手に入れた」といった文脈で語られることは、パートナーの女性を男性のステータスを示すシンボルとして見る「トロフィーワイフ」の考え方と地続きだ。(ちなみに「新垣結衣は星野源を手に入れた」といった投稿も一部で見られたが、男女逆であっても人間はものではないので不適切だろう)

 次に二人の改姓についてだ。結婚発表があった後、一時Twitterでは「星野結衣」がトレンド入りした。これには「なぜ新垣結衣が改姓すると決めつけているのか」と疑問の声があがった。

 現状、結婚に際して夫か妻どちらかの姓に統一する必要があり、厚生労働省の調査によると、2015年の時点で96%が夫の姓を選んでいる。制度上は夫か妻の姓のどちらかを選べても、数字上でも、今回のネット上の反応を見ても「夫の姓に合わせるのが当然」という意識が多数派であり、妻の姓にすることへのハードルの高さがうかがえる。

 ちなみに、婚姻届については<今後、時期を見て>とコメントしている。どういう選択をするかは二人の自由であり、具体的には公表しないこともあり得るだろう。

 三つ目は「新垣は結婚後も芸能活動を続けていく」「妊娠していない」という報道だ。なぜ女性だけ「結婚したら仕事を続けるか」について言及されなくてはいけないのか。また、結婚報道とともに女性が妊娠していないことを記すのは、未だに「結婚前に妊娠することは良くない」という第三者からのジャッジの目線を感じる。

 一方で、マスコミもなぜ女性の仕事の継続や妊娠について書くかというと、読者が気にするポイントだからだろう。受け手の認識も変えていくことが必要だ。

「逃げ恥」が視聴者に与えてくれた“気付き”


 主婦の家事労働や年齢の呪い、パートナー間で丁寧に話し合いを行うことなど、『逃げ恥』は現実社会にある問題に対して、視聴者に問いかけがされているドラマだった。

 今年1月に放送された『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』(TBS系)では、新垣演じる森山みくりと星野演じる津崎平匡が、みくりの妊娠を機に婚姻届を提出。選択的夫婦別姓が話題に上がった後、結果的にみくりが平匡の苗字に変更するのだが、「女性が改姓するのが当たり前」という意識はなく、しっかりと2人で話し合いをして決めていた。

 パートナーを「手に入れる」と表現することも、妻が改姓して当たり前とすることも、結婚に際して妊娠の有無や女性だけ仕事の継続について言及されることも、『逃げ恥』からのメッセージを受け取っていれば、違和感を抱いたのではなかろうか。

 『逃げ恥』が視聴者に投げかけた問題の中には、解消されていないこともまだまだある。いまいちど同作から学び、現実の問題に向き合ってみてもいいかもしれない。