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歴史・文化を活かした伊豆地域の魅力向上 NPO法人伊豆学研究会 理事長 橋本敬之/江川英龍公を広める会 会長 石渡浩二

 NPO法人伊豆学研究会は、伊豆地域の文化財の保護・利活用や自然環境の保全・利活用、まちづくり活動を行い、地域の活性化に資する活動を行っています。
 また、江川英龍公を広める会は、有志が中心となり、英龍公をたたえ広める活動を行っています。
 今回は、伊豆学研究会理事長の橋本さんと、NPO法人伊豆学研究会内の1つの会であり江川英龍公を広める会会長の石渡さんに、活動について伺いました。


取材の様子

―NPO法人伊豆学研究会について

 NPO法人伊豆学研究会では、伊豆地域の文化財や自然環境の保護・利活用やまちづくり活動を行い、地域の活性化を図っています。同会では、伊豆に残る文化や自然環境資源その他すべてを網羅した『伊豆大辞典』を刊行し、その普及を図ってきました。また、文化財を保護するため史料調査の実施・報告書の刊行も行っています。さらに、南伊豆町子浦地区の過疎問題への取組や、自然環境保全活動にも取り組み、実施した事業に加え、文化イベント等の情報についても会報やホームページにて広報を行っています。


江川邸外観

―江川英龍公を広める会について

 江川英龍は、幕末に、欧米諸国が迫る危機的な日本を守るため、韮山代官でありながら、世界遺産に登録された韮山反射炉の建設などを幕府に提案し、それを実現させた偉大な人物です。郷土伊豆の偉人であり、誇りである英龍公の業績を様々な面で知ってもらうために、「江川英龍公を広める会」を令和2年に立ち上げました。 同会では、SNSや動画配信を通じて英龍公の偉業を発信する広報活動に加え、当時の製法書を元に、「江川酒」や、「日本で初めて焼いたとされるパン」を再現するなど、英龍公の功績を多くの人に知ってもらう活動を行っています。

江川酒醸造に使う麦

―幻の名酒「江川酒」再現

 2020年に橋本さんが、江川文庫で江川酒の製法書を発見しました。江川酒は、江川家が醸造してた酒で織田信長、豊臣秀吉、徳川家康も飲んだとされる幻の名酒です。しかし、江戸中期に財政難の幕府が年貢米の徴収を強化したことで醸造用の米を蓄えられなくなり、製造が途絶えました。江川酒は、製法書を元に伊豆市の万大醸造が復元され、当時の味を再現した甘くて酸味が強いフルーティーな味わいとなっています。

江川酒

―「日本で初めて焼いたとされるパン」再現

 「パン祖」と呼ばれる英龍公は、江戸時代後期に日本初のパンを焼いたとされており、2022年に橋本さんが江川文庫で年代がわかる最古のレシピ発見し、江川英龍公を広める会の会長でもあるパン製造販売の石渡食品の社長である石渡さんに、パンの復元を依頼しました。「江戸時代には、兵糧用のパンとして硬いパンがつくられていたとされていましたが、このレシピには、兵糧用ではないレシピが記録され、それを再現したパンは柔らかく、現代のものに近い味わいでした。幕末の日本にはパンを膨らませるために必要な酵母(イースト菌)がなかったことから、再現したパンにも酒粕を使用しています。」(石渡さん)

パン祖のパン

―今後の江川英龍公を広める会の活動について

 歴史・文化を活かし、伊豆地域の魅力向上に貢献してきた伊豆学研究会の皆さま。橋本さんに今後の展望を伺いました。
 「現在地元はもとより全国に400人を超える会員がおります。さらにネットワークを広げ、江川英龍公の名前を全国区にしたいと思います。そのために、SNSやイベントだけでなく通販に力を入れ、関連グッズでの発信もしたいと考えております。この地域がパンの発祥の地であるということを全国に広め、伊豆をパン聖地として盛り上げたいと思っています。」

※掲載している情報は取材時のものです。
                          (担当:中野)