米国弁護士とのコミュニケーション

米国で特許紛争が発生した場合、米国弁護士に依頼することになります。米国弁護士と良いコミュニケーションをとりながら事件を上手く解決するには、以下のような点が大切のように思っています。

まず、何よりも達成目標を共有することが大切と思います。徹底抗戦するのか、あるいは、早期の和解決着を目指すのか、ということです。もちろん、紛争相手方との交渉が進むにつれて、当初は自社に圧倒的に有利とみられた状況が変わってきて、達成目標を変更せざるを得なくなることもあると思いますが、紛争発生の初期段階で可能な限り突っ込んだ分析をして、大まかでも達成目標を共有しておくことは重要と思います。その意味で、紛争案件の分析は、紛争相手方との交渉の進展に応じて徐々に行うのではなく、紛争発生の初期段階で(紛争相手方から提出されるであろう主張をなるべく広範囲に想定しながら)がっつりと行っておくことが重要と思います。実際に相手方が提出してくる主張よりも、こちらが想定しておいた紛争相手方の主張の方が広く深ければ、(そしてそのような想定主張に対する対抗の主張を十分に準備することができていれば)当然ながら紛争を有利にかつ早期に解決できる確率を高めることができると思います。

次に、紛争相手方に対して具体的にどのような主張をして行くか、いわば紛争(訴訟)戦術についても、依頼している弁護士にお任せではなく、こちらから様々な提案をし、なるべく対等なコミュニケーションになるように心がけることが大切と思います。この場合、当然ながら米国の法律や関係する判例の解釈については米国弁護士がスペシャリストなわけですから、このようなことについて議論を挑むような姿勢ではなく、その紛争案件に関係する事実関係の内、想定される法律条文や判例の適用をこちらに有利に導く可能性のある事実関係について弁護士に伝えることを中心にすると、弁護士との議論を深めることができると思います。ただ、米国弁護士の場合、日本の弁護士と比較して、こちらが検討を依頼していない論点について、米国弁護士の方から「こんな論点やリスクがあるよ」といったアドバイスは少ないように感じています。その意味で、可能な範囲で、こちらでも関係しそうな米国の法律や判例を調査し、必要に応じ、米国弁護士に質問を投げかけることも大切と思います。

最後に、米国弁護士は、日本の弁護士と比較して、報酬の時間単価が高いため、コスト管理も重要です。この点については、結局のところ、こまめに見積もりをもらいながら管理するしかないと思います。ただ、紛争(訴訟)は当初の予測の範囲内で進行することは稀ですから、見積もりの範囲で収まることの方が稀だと思います。なので、身も蓋もありませんが、弁護士とよくコミュニケーションをとりながら、お互いに納得できる費用に収めることを目指すということになると思います。ちなみに、弁護士報酬は、裁判所等に提出する正式な文書の作成の場合に多額に発生する印象で、これと比較して、例えば、普段の電子メールのやり取りで法的なコメントやアドバイスをもらうといった場面では、それ程多額には発生しない印象です。紛争解決コストには、弁護士費用だけでなく、仮に紛争相手方と金銭的な和解をする場合には、そのコスト(和解金)も含まれますから、弁護士費用にだけ目を奪われて、必要なアドバイスを求めることも控えるようなことになると、逆にトータルでのコスト高になってしまうリスクもあると思っています。

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