裁判地に関する米国最高裁決定(TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC(Supreme Court, May 22, 2017)について

1.2017年5月22日最高裁決定の位置付け
・ 米国国内法人について、特許訴訟での裁判地(venue)について判示したもの。

2.管轄権の決定の仕方

管轄権の有無は、以下の3段階で判定される。
① 事物管轄権: 連邦裁判所と州裁判所のいずれで裁かれるべき案件か?
② 対人管轄権: 提訴された被告に対して、当裁判所は審理/判決する権限を有するか?
③ 裁判地(venue)の選択: 対人管轄権を有する複数の裁判所の内、どの裁判所で審理するのが適切か?
            ↓
[特許訴訟の場合]
① 事物管轄は、連邦裁判所が有する。
② 対人管轄は、(i)各州の対人管轄権関連法令と(ii)合衆国憲法のデュー・プロセス条項によって決定される。特許訴訟の場合、多くの州は、その州で侵害行為が行われた場合には対人管轄を認めている。
③ 裁判地(venue)は、特許に関する裁判地法(patent venue statute)1400条(b)に基づいて決定される。2017年5月22日最高裁決定は、当該条項について、従来の解釈を否定し、新たな解釈を示したもの。

3.特許に関する裁判地法(patent venue statute)1400条(b)の定め

[1400条(b)]
特許侵害訴訟は、以下の何れかの裁判地に提起することができる。
(a) 被告が「居住(residence)」を有する地の裁判所
(b) 被告が侵害行為を行い、かつ、通常かつ確立された事業拠点(regular and established place of business)を有する地の裁判所

4.「居住(residence)」についての従来の解釈

・ 1400条(b)の「居住(residence)」の解釈は、裁判地に関する一般法(general venue statute)1391条(c)の「居住(residence)」の解釈に拠る。

・ 裁判地に関する一般法(general venue statute)1391条(c)は、法人被告は、提訴時に対人管轄を有する全管轄区に「居住(residence)」するとみなす、としている。

・ 多くの州は、その州で侵害行為が行われた場合には対人管轄を認めている。

・ 結果的に、特許訴訟の被告が提訴された裁判所が所在する州で侵害行為を行っていた場合、当該裁判所のvenueが認められていた。

5.2017年5月22日最高裁決定の要点

・ 1400条(b)の解釈につき、米国国内企業に関する限り、「居住(residence)」とは、被告が、その州の法律に基づいて設立され、登記法上の本店(本社)を有する場合だけをいう、とした。

6.留意事項

(1) 被告が米国国内法人であって、かつ、提訴された州で設立されていなくとも、被告が侵害行為を行い、かつ、通常かつ確立された事業拠点(regular and established place of business)をその州に有していれば、venueありとされる。

(2) 2017年5月22日最高裁決定は、外国法人には適用されず、外国法人に対しては、特許権者は自由に裁判所を選択して訴えることができる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?