【十二国記 感想】⑩ 短編「幽冥の岸」を読んで
李斎の心象風景は、いつも戴の厳冬の風景だ。
人々の暮らしを閉ざす白い吹雪。
荒れ果てた茶色の土地。
焼かれた家々や枯れた里木の黒。
その李斎が王と麒麟を国に取り戻し、泰麒を蓬山に託し、帰路の途中に報告に寄った慶で陽子主従に温かく迎えられ、そして桂桂に飛燕を亡くしたことを労わられ、彼女は初めて、意図せず、自分に悲しむことを許した。
初めて見も知らぬ景王を訪ねたときに李斎が目にした色、また今回の再訪で再び目に入ってきた慶国の国土の色・・・雲海を透かして見える翡翠のような翠、