Christian Liljegrenから営業メールが届いた件(後編)
https://note.com/s_satoh_metal/n/n12acd7f57525
クリスチャン・リレグレンとの交渉がまとまり、ようやくCDが到着した。
スウェーデンから発送され、はるばる極東まで渡ってきたCDたち。日本では手に入らない音源をメインに8枚。
金額にして295ユーロ、日本円にして40000円近くだ。正直言ってこんなにかかるとは思っていなかったが、音楽は一期一会なものだから、ある程度はしょうがない。
リストはこんなところ。何枚か紹介しよう。
Christian Liljegren - Kraft(2015)
フィジカル版はクリスチャン・リレグレン本人のFacebookでのみ販売されているようだ。当然日本版などない。英語が公用語のヘヴィメタル業界では珍しく、楽曲のほとんどは母国語のスウェーデン語で歌唱されている。
楽曲は彼の音楽遍歴をゆるやかになぞる。スウェーデン語がよくわからないけど、ほとんどはカバーだ。
原曲を調べてみると
ということで、彼のルーツになった音楽と、その表現を歌うアルバムなのだろう。シンガーとしてのクリスチャン・リレグレンの、虚飾なき歌声を堪能できる。純粋に彼は歌がうまい。ヘヴィメタルアルバムではほとんど聴けないであろう母国語での歌唱も貴重だ。温かみのあるエレピの伴奏とともに流れる楽曲は、なんというか、読書のBGMにぴったりだ。
Divinefire - Farewell (日本版・2008)
まず、そもそも、スウェーデンから日本語版を買ってしまったのである。
そんなこともあるんですね……。
Divinefireはクリスチャン・リレグレンの遍歴の中でもちょっと面白く、グロウルを取り入れたダークなつくり。シンフォニックブラックというにはメロディアスすぎるが、シンフォニックメタルにしては重すぎる……という絶妙なバランス。この「Farewell」がラストアルバムということになっているが、2011年に「Eye of the storm」で復活。絶対的ボーカルと思われていたクリスチャン・リレグレンに加えてGerman Pascual(Narnia「Course of a a generation」のボーカル)とのツインボーカル編成でアンコールをかなえてくれた。
この「Farewell」は、たまたまDivinefireの音源をフィジカルでコンプしていたから購入した。だが本作に収録されている「Unity」のクサメロぶりによって、あらためてクリスチャン・リレグレンという人の才能に惚れ直したのも確か。
Flagship - Maiden Voyage(日本版・2005)
また日本版だ……。
出だしから笑っちゃうくらいのKANSAS感。KANSASはボックスが大分前に出たときにまとめ買いして、今に至るまで大分聞き込んだアーティストなのでよくわかる。ほかの楽曲では見られない大作大収録で、クリスチャン・リレグレンという人の幅広さを物語るようなアルバム。リレグレン流のクサさがプログレに溶け込んで、予想外の味を出している。この続きをもっと聴きたくなるのだが、アルバム一枚を出して活動終了。
……キーボード担当のLinus Kåseは、プログレバンド「Änglagård」の新メンバーとして現在も活動中らしく、彼の音楽性がリレグレンを引き立てたのかなという感じがする。
最終曲「Ground Zero」は、KANSASのギタリスト・ケリー・リヴグレン(Kerry Livgren)のソロアルバム楽曲のカバー。ゲストギタリストとしてケリー本人を連れてきているのはお見事。
音源を手に入れるまでの苦闘
CDはいざ手に入れてしまえばなんということもない(もちろん、絶版ものが多いので貴重だが、その多くはサブスクで補完できてしまうので……)が、一番大変だったのが、手に入れるまでの過程だった。
商品を確定するまでがまず大変。
今思うとプライベートコレクターとやりとりしていたようなもので、「どんな音源がある?」からのスタート。こっちはサブスクのリストがあるので、サブスクで聴けない音源、どうしても本人のサインがほしい思い入れのある音源をセレクト。
確定した段階で値段を見せてもらうと、新品25ユーロ、レアもの60ユーロ、合計295ユーロ(送料込み)!
日本のCDはもともと高く、送料込みで考えると悪い額ではない。ただレア版とはいえ60ユーロ=8200円はちょっと痛かった。
さらにPayPalの支払いでもちょっとトラブルに。
PayPalには「Friends and Family」という送金オプションがあり、個人間送金として安く送金ができる。そのオプションを指定されていたのだが、制限が多く対応できなかった。
https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/support/send-money
私が持っている口座では対応できなかったのですよ……。クレジットカードで支払うこともできない。
そして、「手数料分を別途送金してくれ!」「それなら1枚減らすわ」「それならこのCDも買ってくれ……」というやりとりがしばらく続いてしまい、かなりげんなりした。
この辺はコミュニケーションの難しさを痛感するところ。売ります→買います→あとよろしく、では済まないのだ。
ともかく、そんな苦労をして届いた楽曲は、期待通りどれも素敵だ。クリスチャン・リレグレンという人間の音楽に、私は魅了されずにはいられない。ミュージシャン(兼・レコード会社社長)が倉庫代をさばくために営業する世知辛い時代を、どうにか生き抜いて、新しい音楽を作ってもらいたい。
Christian Liljegrenの在庫リスト(2022/04/04時点)
最後に、クリスチャン・リレグレンから紹介してもらった在庫リストを記載しておこう。私が購入したので、たぶん少し減っていると思うが、音楽マニアに届くといいな。
彼のことだ、ここにないレアな音源は交渉次第で出てくる気がするぞ。たとえば、トミー・ヨハンソンのReinxeedとか……?