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2002年5月10日(金曜日)

入院から2週間。無駄な時間を過ごすのは実に簡単だ。今朝は雨が降っている。降っている気がする。外を確認したわけでも確認したいわけでもないけども、きっと雨が降っているんだろう。そういう匂いがする。今日から歩行距離と時間を伸ばす。他の誰でもない俺が勝手に決めたことだ。とはいえ、今の俺は3階廊下の歩行しか許可されていない。そんなところを行ったり来たりしても俺は簡単に飽きてしまう。そこで俺は考えた。3階にはトイレが2箇所ある。1箇所は部屋の目の前。もう1箇所は真反対の風呂の近く。トイレに行くたびに、この遠い方に行くことにした。これで自動的に歩行距離が伸びる。まさに世紀の大発明である。

今のうちに少しでも体力を戻しておかないと日常生活に戻されても上手く生きることができないだろう。そんなことになれば、今流行りのリストラにあってしまいかねない。24歳にしてリストラ。これはLiveのネタにもならない。入退院を繰り返している所為で1ヶ月くらい唄っていない。これだけでストレスというか、それに近い何かを感じている。我慢だ。ひたすらに我慢だ。今の俺にはそれしかない。今の俺には躰を元に戻すことに全力を注ぐ。それしかない。そういう風に思えるなんて、俺も大人になったものだ。

午前中に会社の人たちがやってきた。なんと社長まで居た。こんな遠いところまでご苦労なことである。俺は他の会社にエンジニアとして派遣のような形で働いている。今は俺の代わりに社長がその会社に行ってるらしい。大変ありがたいことだけども焦りのようなものを感じた。現実から切り離されたかのような感じがした。

昼過ぎに風呂に入った。今の俺には車椅子は不要なので歩いて風呂に向かった。気分良く風呂に入った後はトイレに寄る。窓が開いてる。そこは雨と風だ。何気に雨が好きなので、その光景をずっと見ていた。やっぱりだ。やっぱり今朝から雨なのだ。

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