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『ハウステンボス』売却へ

長崎県佐世保市にある日本最大のテーマパーク「『ハウステンボス』売却」のニュースを知り、時代の流れを感じざるを得ませんでした。1992年にオープンしたハウステンボスは近くのオランダ村との相乗効果もあり、1996年度には380万人の入場者数を記録するなど、多くの観光客を引きつけました。私も何度か家族で出かけ、少し贅沢をして園内のホテルに宿泊したこともあり、異国情緒漂う空間で夜のイベントを楽しみました。

経営的には順風満帆とはいかずに、2003年には会社更生法の適用を受けました。後継企業群による更生計画案もリーマンショックの影響もあり順調には進まず、2010年からは新たにHISが主体となった経営再建策が講じられることに。その立役者となったのがカリスマ経営者と呼ばれたHISの澤田秀雄氏でした。当初は地元に馴染みが薄く、なかなか受け入れてもらえずに苦労されている様子も伺えたものの、強力なリーダーシップで地元経済界や自治体の支援を取り付けて、『お荷物』になりかけていた大型テーマパークを見事なまでにV字回復を成し遂げられました。とにかく『世界一』、無理なら『アジア一』、それも無理なら『日本一』と、『オンリーワン』で話題になるような事業や企画を次々に打ち出される様子を常に注目してきました。

ハウステンボスの支援に乗り出す前の2006年、HISは地元熊本の九州産交グループの経営支援に名乗りを挙げました。同グループは、観光やホテル、バス交通、その他の関連事業を幅広く手かげる地元主要企業の一つなだけに、その企業が経営不振に陥り、産業再生機構の1号案件となった時には地元経済に激震が起きました。経営は継続されるのか、どこが継承するのか、かなり動揺が走り、HISに決まった後も、佐世保市と同様に地元に馴染みが薄いことから、警戒する声すら聞こえていたものです。

あれから16年が経過して、バス事業の経営環境の厳しさは変わらないものの、安定経営を取り戻し、バスターミナルや商業施設、シティホテル、多目的ホールなどを兼ね備えた複合施設も完成の運びとなりました。長崎や熊本、九州に多大な影響を与えてきたHISも、さすがに長引くコロナ禍の影響を跳ね除けることは難しく、今回の売却の決断に至ったようです。一つの時代が終わりを告げたような少し寂しい感覚で「ハウステンボス売却」の報道に接しました。

とはいえ、終わりは始まりの起点でもあります。一つのテーマパークや企業だけを捉えても、この20~30年ほどでさまざまな変化があり、その背景には世界や日本の景気循環がありました。また一つの節目を迎え、変化するチャンスを得たのだと前向きにとらえることにしましょうか。

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