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生(き)の芸術~『アール・ブリュット』

『アール・ブリュット』をご存知ですか?
art=芸術
brut=ワインが生のままであること
『生の芸術』という意味のフランス語で、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが提唱した概念であり、正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した、既存の芸術に影響を受けていない絵画や造形のことを言います。

私は根っからの体育会系で芸術的センスは皆無と自認していますが、そんな私も時には美術館に足を運ぶことがあります。展示されている作品の前でしばらく凝視していると、普段はあまり使わないような感性が刺激を受けて、心が揺さぶられるように感じます。アートの持つ不思議な力に浸るのは至福の時間でもあります。

そんな感覚を2013年に熊本市現代美術館で開催された『アール・ブリュット ジャポネ展』で強く感じることになりました。2010年に、パリ市立アル・サン・ピエール美術館で開催された展覧会のいわば『里帰り展』で、個性的な色使いや形状、自由な発想がストレートに注ぎ込まれた、日本国内の障がいのある芸術家たちの優れた作品の数々に、ただ魅了されてしまいました。その展覧会をきっかけに、熊本では『アール・ブリュットパートナーズ熊本』という団体が設立され、県内の障がいのある人たちの芸術活動を応援し続けておられます。現在では100名近い人たちが登録されているとのこと。
http://www.aileans.com/art/

また熊本には『UMU(う〜む)』という手作り作品のセレクトショップがあります。『う〜む』には色んな意味が込められていて、障がいの『有無』に関係なく、いいものを生み出す。そしていいものを生み出すための力添えをする。作家と一緒に悩んで『う〜む』と考える。お客様が作品を手にとり『うむ』と納得して購入する。それらが『UMU』という空間です。ここにも何度か立ち寄ったことがありますが、いつも私も納得していくつかの作品を購入して帰ります。
http://umu2014.com/

身体や精神、知的、発達など、さまざまな障がいがありますが、その境ははっきりと線引されるものではなく、健常者と言われる人たちともつながっているものだと思っています。障がいがあることで、何かができなかったり、不得意であったりする場合もありますが、逆に何かに秀でている場合だってあります。障がいがあることで、その感性が研ぎ澄まされ、見事な芸術作品を生み出す―その手助けをするのが『アール・ブリュット』であり『UMU』です。

スポーツの世界では、パラリンピックやスペシャルオリンピックスなど、障がい者が日頃の練習の成果を発揮する場がありますが、芸術の世界はまだ少ないように感じます。障がいの有無に関わらず、芸術活動に没頭することができ、芸術家としての埋もれた才能やアート作品を見出す、見事な作品を評価する場がある、そして多くの人がそれらに触れることができる。当たり前のこととして、もっと広めていければと思います。

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