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再生可能エネルギーが山の再生を阻む!?

昨年7月、球磨川流域に発生した大水害にも山が深く関わっているのではないかと推察されています。「水害の原因は山にある」と熱く語る人に誘われて、八代市坂本町や球磨郡球磨村の山に入り、その真意を探しに行きました。

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遠くに望む山々とは大違いで、山中に入ると、ひとことで言えば『荒れ放題』。その原因はいくつかありますが、まずは人の手が入っていないこと。林業も極端な人手不足で、伐採後に苗木を植えてあっても、間伐や枝落としもされずに放置されていました。そんな木々は、真っすぐ伸びたとしてもえんぴつのように細く、根も張っていないことから、少しの雨でも表土が流され、多くの木々がドミノ倒しのように巻き込まれてしまうのです。

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もうひとつの原因は『皆伐』。山の木々は自然のままに残されるものがあれば、ある程度成長すれば伐採され、建築材やバイオマス燃料等として利用され、私たちの暮らしや経済活動を支えています。そのサイクルは50年、もっと長いものもあり、山の木々は世代を越えて引き継がれていくことになります。それが『間伐』ではなく『皆伐』として広範囲に伐り倒されると、山の循環は断ち切られるばかりか、山の役割で重要な保水機能を失うことになります。そして水害の誘因になるというわけです。

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それから鹿も要因のひとつに挙げられます。鹿たちは群れをなして行動し、集団であたり一面の草を食んで暮らしています。草が無くなれば別のエリアに移動し、草を食んでは土をむき出しにしてしまうのです。木々と下草は共存関係にあるのですが、その生態系に悪影響を与えるとともに、むき出しになった土そのものもまた、泥土となり谷を伝って流域を襲うのです。「山を守らなければ水害を防げない」現場を前にしての言葉は何より説得力がありました。

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箱根の山が崩れ尊い命が失われました。奥深い谷に許可以上のものが埋められていたとのこと。各地で山を切り拓いて作られる太陽光発電施設の設置のために数多くの木々が伐り倒されています。『再生可能エネルギー』が『山の再生を阻む要因』にもなっているのは、皮肉というには軽過ぎるほど重大な問題なのです。
私たちは山にもっと目を向ける必要があります。そしてその視線は、次世代を超えてもっと先の将来を見据えておかなければなりません。私たちは誰もが、山とともに生きているのです。

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