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食べることは、幸せの営み

「ご飯が美味しく食べられるって、なんて幸せなことなんだ」

大げさと思われるかもしれませんが、そうつくづく感じました。私は食べ物の好き嫌いは一切ありません。なんでも美味しくいただけるのは取り柄の一つだと思っています。そんな私が、先週末から突然の腹痛と下痢に襲われ、特に下痢はこれまで経験したことのないほど酷いものでした。

発熱もせず他の症状もないことから、「2~3日すれば治まるだろう」と高を括っていたら、3日経っても、4日経っても回復の兆しは見えず、結局クリニックのお世話になることに。コロナ第7波の最中だけに少し心配しましたが『感染性胃腸炎』との診断を受けました。処方された薬を飲み始め、3日目くらいから、しつこかった下痢もようやく治まりました。その間、口に入ったものといえば、経口補水液とお茶、お粥とうどんくらい。珍しく、他のものは身体が受け付けませんでした。好き嫌いなく、なんでも美味しく食べられる私にとっては、とても辛い期間でした。

ちょっとした快気祝いをと、古民家や納屋をリフォームして作られた自然食レストランで『だご汁御膳』を食べることに。『だご汁』は熊本の代表的な郷土料理で、子どもの頃は母や祖母がよく作ってくれていました。私の世代以上はほとんどの家庭がそうだったと思います。そんな『だご汁』も今では外で食べることがほとんど。昔懐かしい味を楽しみ、ときには県外からのお客さんを案内することもあります。
『だご汁』


旬の野菜がたっぷり入った白味噌仕立てのだご汁


私の母は認知症を患い、次第に固形物が喉を通らなくなりました。本人の意向を確認するすべもなく、家族で悩んだ末、『胃ろう』の手術を受けることに。管を通して直接胃に栄養分が補給される、亡くなるまでその状態が続きました。母だって食べることは好きでしたから、どんな気持ちでいたのでしょう。胃ろうをしないという選択肢もありましたが、父や私も含めた子どもたちと過ごす時間を与えてくれました。そんな父も1年半ほど前に母のもとに旅立ちましたが、入院する直前まで、好きなものを食べ続けました。最後の外食は大好きな鰻だったそう。入院後、約2カ月で他界しました。


「食べることは生きること」といわれますが、「食べることは幸せの営み」であることを実感しています。数え切れないほど食べ続けてきた『だご汁』を食べながら、今日はそんなことを考えてしまいました。

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