見出し画像

西九州新幹線開業を目前に

9月23日、西九州新幹線武雄温泉駅=長崎駅間の開業を迎えますます。
九州の新幹線は、2011年の九州新幹線博多駅=新八代駅間の開業から数えると11年ぶりであり、関係者や地元住民にとっては「待ちに待った新幹線開業!」と、お祝いムード一色かと思えば、そうとばかりもいかないようです。

西九州新幹線の整備計画は1973(昭和48)年、約半世紀前に決定されています。整備計画決定以降、ルートや整備方式、佐賀県の費用負担をめぐってさまざまな曲折があり、着工までには至っていませんでしたが、上下分離方式により並行在来線をJR九州から経営分離しない方針が示されたために、ようやく2008年、武雄温泉=諫早間が着工されることに。その後、新鳥栖=武雄温泉間は在来線を活用し、軌間の異なる在来線と新幹線を直通できるフリーゲージトレインを導入する方針が決定され、2012年には諫早=長崎間が着工されました。ところが、JR九州はそのフリーゲージトレインの開発を断念することを公表。新鳥栖=武雄温泉駅間のルートや整備方式、佐賀県の費用負担なども決まらないままに、明後日の部分開業を迎えることになります。

部分開業といえば、九州新幹線鹿児島ルートも同様で、2004(平成16)年の新八代駅=鹿児島中央駅間の先行開業から、2011年の全線開業までの間、新八代駅で特急と新幹線の対面乗り換えが続きました。武雄温泉駅でもしばらくはそんな状況が続くようです。ただ、鹿児島ルートとの明らかな違いは、その先が決まっていないこと。新鳥栖=武雄温泉駅間の整備方針が決まっていない状況では、喜びも半分といったところでしょうか。

確かに新幹線に対しては開業効果に期待する一方で、不安も募るものです。例えば熊本市にとっての九州新幹線は博多駅まで35分、新大阪駅まで約3時間と、移動時間の短縮効果に期待しました。一方では「福岡市の賑わいが増すだけでは?」「部分開業の恩恵もすでに受け、終着駅のダム効果も上乗せされる鹿児島市の勢いが増し、間に挟まれた熊本市は北から、南からストローで吸い上げられるのでは?」そんな危機感もかなり強かったのです。

結果的にはプラスもあればマイナスもある。全体的にはプラスに働いたのは間違いありませんでした。例えば「福岡=熊本間の高速バス利用者が激減する」との不安も、料金の違いなど差別化が図られ、相乗効果も働いて、利用者が増える状況が生まれもしました。もし西九州新幹線の開業に怯えている人がいるとすれば、そんなに心配はいらないのかもしれません。

ただ、大都市に挟まれた地域にとっては、事情が異なります。例えば、それまで在来線の特急が停まっていたのに、新幹線開業によって特急が無くなったり、減便されたりする駅も出てくるでしょう。博多駅に近い地域などは時間短縮効果もそれほど高くなく、中抜きになりかねないことから、素直に賛成できない気持ちもわかります。

期待と不安、不満も渦巻く中、西九州新幹線は沿線に、九州全体にどのような変化をもたらすのか、注目です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?