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ブラスバンドの金管セクションの役割

 打楽器の役割やらなんやらは前回書いたので、今回は金管セクションの役割をパート別に書く。

 ブラスバンドの金管セクションはフロントローコルネット、バックローコルネット、ホーン、ユーフォバリ、トロンボーン、ベースに分かれる。そしてスタンダードな座席配置においては一番聴衆側にバンドサウンドへの影響力の強いソプラノ、プリンシパルコルネット、プリンシパルユーフォニアム、トロンボーンが配置される。プリンシパルコルネットはバンドの左側をリードし、左側の奏者たちはプリンシパルコルネットの演奏にアンテナを張り巡らせるべきだ。右側とプリンシパルユーフォについても同じことがいえるが、トロンボーンは特殊なセクションになるため、あまり影響されない。
 多くの場合、特にコルネットについては、全奏者がすべての音符を演奏する必要はない。全員が演奏できることより、作曲家が楽譜に書き残した理想の音楽を正しく聞こえるようにすることのほうが重要だからだ。pppが求められる部分で無理に全員で吹く必要はないのだ。そのpppの音楽が達成されないことのほうが問題である。
 そしてソロの伴奏においては全員が吹かないということは特に重要で、バンドに音量で勝ちやすいソプラノやトロンボーン以外のソロ伴奏では、伴奏の演奏人員数が減ることで、音量が減り、サウンドの質量も減るためにソロが聞こえやすくなる。記譜のダイナミクスより-1~-2して演奏されるべきだ。

 ここからはパート別の役割についてグラント・ジェームズ氏の「Brass Band 101」を引用しつつ紹介する。

 ソプラノコルネットはバンド内の最高音域を受け持ち、屈強な耐久力とレーザービームのような息圧と繊細な音楽的センス、頑強な精神力が必要とされる。音色についてはBbコルネットと調和できる温かみのあるサウンド、トロンボーンの対面でバンドサウンドにエッジを持たせられる明るくハリのあるサウンドが必要とされる。線の細いヒョロヒョロした音ではないのだ。無理に暖かい音色を目指すより、最初に太い音が出るように息を正しく扱うべきである。

 プリンシパルコルネットは「バンド左側のリーダー」であり、模倣されるべき奏者である。Soloと書かれたフレーズは原則演奏する。
 2ndソロコルネット(アシスタントプリ~とも呼ばれる)はプリンシパルがなんらかの事情(耐久力など?)により演奏できない場合にソロを代奏できなければならない。2本のdivでは上を、3本でも上、4本では2番目に高いラインを受け持つ。「1」も演奏する。
 3rd&4thソロコルネット(トゥッティソロコルとも呼ばれる)はソロコルネット列の中心となる。サポートがメインロールとなり、右隣へ強くアンテナを張る必要がある。上2人がバテたらそれはトゥッティのせいだと思ってもよい。耐久力がソロコルで最も必要なパートである。

 リピアノコルネットはバックローのリーダーである。これは全コルネット内で2番目に重要なパートである(プリンシパルの次点)。そしてゴルフクラブのユーティリティのように機能し、時にはほかのすべてのパートとアンサンブルし、必要なすべてのパートをサポートする。そして時には重いソロが待ち受け、ありとあらゆるアンサンブル能力、和音に対する理解力とバックローを率いるカリスマ性も必要とされるハードなポジションであり、上手くない奏者の居場所ではない。。
 2nd&3rdコルネットはコルネットセクションのコーラスとして作用する。吹奏楽のトランペットの役割を持つこともあり、コルネットサウンドに深みもエッジも持たせるサウンドの要である。またリズムに対しシビアにアンテナを張るべきで、バックローがフロントローに良い影響も悪い影響も与えやすいことを理解して演奏に励むべきであり、上手くない奏者の居場所ではない。

 フリューゲルホルンは強いて言えばソプラノユーフォニアムである。そのため、低音族と高音族を結びつけるポジションだ。また、テナーホーンセクションのトップを受け持ち、コルネットサウンドに補強を加え、バックローをサポートし、リピアノの音色にふくよかさを与えることも求められる。この多用途性により、フリューゲルはセクション楽器としてもソロ楽器としても重要視されるのだ。
 ソロホーンはフリューゲルをサポートし、テナーホーンセクションのリードを務めなければならない。どちらかといえばコルネットと調和できるほうがメリットが多い。ユーフォバリ側との調和はフリューゲルの役割のため。
 1stホーンはソロホーンのクッションである。
 2ndホーンはテナーとバリトンの橋渡し役であり、ホーンセクションの椅子である。2ndだけが求められる低音からテナー全員が求められるハイトーンまでまんべんなく吹ける必要があり、もっとも安定感と音域が必要なパートである。 上手くない奏者の居場所というわけではない。

 1stバリトンはリピアノと同じようにユーティリティである。ホーンセクションの低音を受け持ったり、ユーフォのサウンドに明るさを追加したり、トロンボーンの音色に深みを与えたり、単独で演奏することもある。
 2ndバリトンは1stバリトンに似ているものの、より強くエッジを与える役である。またテナーバリトンホーンのセクションにいえることが、バンドのサウンドの要であるということだ。そしてそれを響かせるには緻密な和音が必要となるため、和音に対する理解力とピッチを扱う能力が特に必要である。

 1st&2ndトロンボーンはオーケストラでのトロンボーンとおおよそ近い役割が求められる。バンドサウンドに明るくエッジを追加するというものだ。またパワーの支柱でもある。必ずしもバンドの表層に出るような音色ではなく、バリトンのような深みや、木管楽器のような質感も出せるべきで、色彩感に乏しいブラスバンドに色をもたらせられる。
 ベーストロンボーンはバンドのベースサウンドにエッジを与える役である。またトロンボーンコーラスの最低音を支え、Ebベースとの橋渡し役にもなる。バンドのバランスのためにもEbベースとマックスを合わせるべきである。

 プリンシパルユーフォニアムはバンド中低音のリーダーで、バンドサウンドに大きな影響力を持つ。
 2ndユーフォニアムはプリユーフォのサポートで、呼吸しやすいように気を配って演奏する必要がある。

 ベースはオケでのテューバとは大きくことなり、どちらかといえばコントラバスのサウンド的役割が大きい。またこのベースセクションの音量がバンドのフルサイズを決定づけるため、ここが弱いとバンドもダイナミクスを上げるわけにはいかない。テューバのようにフォーカスされた音色より、常に存在感を出せるサウンドが好ましい。

パーカッションは前回の記事参照。

 無論これがすべてではないし、楽曲によって役割は大きく異なるが、とりあえずこれさえ抑えておけばという内容であると思う。
 ぜひ役割を踏まえ、耳と頭とアンテナを酷使して素晴らしいブラスバンド音楽を奏でよう。





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