ブラスバンドのビブラート

 タイトルにある通り、ブラスバンド(ここでは英国式)のビブラートについて少し考えてみようと書きつける。
 よくブラスバンドの紹介で書かれる「ほかの編成に比べてビブラートを多用する」という文章が見られる。まあ確かにビブラートはよく使う。
 しかし、なぜビブラートを多用するのか(そもそもなぜ掛けるのか)考えるべきだと思う。
 ではビブラートの効果とはなにか。調べれば音響学の論文がでてきて非常に面白いが、難解すぎるのでざっくりと。
1.音量が大きく聞こえる 2.音色が柔らかめに聞こえる 3.音の変化がスムーズに聞こえる 4.単音に情報を詰め込める 5.重ねたときの音量効果
上記ざっくりすぎて不確かかもしれない。すみません。

 ブラスバンドのビブラートについてより掘り下げる。

 ブラスバンドの歴史を考えると、19世紀に労働者階級のレクリエーションとして発展し、当時のレパートリーはオーケストラやオペラの編曲がほとんどだった。(マーチなどでブラスバンドオリジナルも演奏されていた。)
つまり、当時のオーケストラやオペラでビブラートが多用されていたのかが知りたい。19世紀の資料が乏しいので調べるのも困難ではあるが、20世紀初頭にはオーケストラもオペラも録音などがそこそこ残っており、弦楽器や歌手がビブラートを多用しているのがわかる。ブラスバンドが原曲の再現性を高めるために遅くとも20世紀入ったころにはビブラートを取り入れていてもおかしくはない。ましてや、G.HolstのMoorside組曲の2楽章のコルネットソロにsenza vibrato(ビブラートなしで)という指示があることからも、いかにビブラートが常用されていたのか推測できる。1930年に撮影されたブラスバンドの録画でもビブラートが掛かりまくっていることが飛び出ているソプラノ?の音色から聞き取れると思う。https://www.youtube.com/watch?v=-Fn7EkrKwQY
 
 そんなブラスバンドビブラートだが、1980年代初頭の録画や録音を聴くとかなり弱いことがわかる。なんか最近のバンドのようなあっさりさがある。その後またビブラートマシマシの時代がすぐに戻ってくるが。
 ブラスバンドのビブラートにもいろいろな変遷がありそうだ。全部調べるのはてそか。

 海外の掲示板でもブラスバンドのビブラート常用多用はよく議論の的になっている。賛成派は「ブラスバンドの歴史と伝統」「特徴的な音色を創っている」など。反対派は「すべての音にかけるのは非音楽的」「揺れているだけに聞こえて気持ち悪い」など様々だ。
 他にも面白い意見もあり「最近のイギリスでもノンビブラートが主流で、かけ時を見定めている」というものは多く見かける。いや、多用してると思いますが?
 少なくとも本国イギリスでもすべての音にかけるのではなく、音楽的にかけどころを考えてビブしましょうという方向性のようだ。

 では日本は?
 少なくとも全部にかけてるとただ音が揺れているだけに聞こえるし、そもそもビブラートのかけ方が本場と違うように聞こえる。芯のないただ幅だけすごい揺れのような。もちろんかなり上手い人も多い。
 何も考えず全部の音にビブラートをかけるような猿真似はやめて、音楽の表現としてのビブラート、音色への装飾、という考えがもっと広まると音楽的になるように思う。
 
私はビブラートめちゃくちゃかけるの好きだけど
 

「B&Hソヴェリンにはビブラート発生器が標準装備されている」
「一日中フィッシュアンドチップスしか食べなければ、安定したピッチも保つことはできない」

     ーイギリスのジョーク(掲示板より)ー


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