見出し画像

がん治療後の長期的な仕事の継続:システマティックレビューとメタアナリシス

Long-term work retention after treatment for cancer: a systematic review and meta-analysis
Journal of Cancer Survivorship  (2020) 14:135-150

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32162193/ 

https://doi.org/10.1007/s11764-020-00862-2

がんと診断される人の半数は現役世代です。がん罹患は失業のリスクが高いとされますが、長期的な就労継続については知られていません。そこで、2000年から2019年の査読された論文を検索し、解析しました。

この研究の目的は、診断後2年以上経過したがんサバイバーの長期的な仕事の継続性を系統的に評価することです。

検索した5,334件の論文をスクリーニングし、229件が残りました。これらの論文を評価し、最終的に21件の論文が適格性を満たしました。

研究は、アメリカ6件、オランダ3件、ブラジル・カナダ・フランス・ノルウェー2件、アイルランド・イスラエル・スウェーデン・イギリス各1件でした。前向き研究が5件で、横断研究+前向き研究が2件、外部と比較群を持つ研究が4件。

結果をかいつまんで。

比較群を含んだ研究から、がんサバイバーの長期的な仕事が比較対象者に比べて低いことが報告されていた。カナダではがん診断後24-47か月の時点でがんサバイバーの85%が就労していたことに対し、比較対象者(非がん者)では94%であったと報告しています。フランス、アメリカなどどの国でもがんサバイバーの長期就労率が低いことを報告していました。

がんサバイバーの就労継続に関する患者関連、臨床関連、仕事関連のリスク因子を多変量解析を行った7件の研究から、患者関連因子として高齢・診断時の低所得が関連し、臨床関連では化学療法・新たながんのイベント発生・予後不良・うつ病が関連。仕事関連では仕事の調整不足が報告されていた。

ディスカッション:診断時に就労していた長期生存がんサバイバーの73%が復職していたが、非がん者より就労している可能性が低いことを示している。

私見:がんサバイバーの就労復帰と継続性に関して、知見に乏しいことが明らかになりました。診断後2年を長期生存に含めるのは疑問でしたが、結果の母数の乏しさを加味すると仕方なかったかもしれません。また、アジア圏の研究結果がありませんでした。良質な研究とそこから支援構築が必要です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?