私は自分から棺桶に入りたい。誰かに寝かされるのはかっこよくない。


あなたに向けて手紙を書きたかった。
でも、誰かに向けた言葉はいつだって薄っぺらくて、違和感があった。
だから、私はここでひとりごと。
忘れないでいて欲しいのは、ここでの君やあなたへの言葉は紛れもなく、あなたに向けられていて、僕や私は、私だということ。
例外はない。約束しよう。


あなたが優しい夢の中にいること、豊かに感情を動かしていること、

ずっと願っている。
何者にもなににも邪魔されぬこと、いのちを削られることなど、微塵もありませんように。たとえ転んでしまっても傷口がずっと痛んでも、傷も含めて愛していられますように。
心が動く景色がものが人が、一つでも多くあなたの眼に映りますように。
母のようなぬくもりに包まれ、数多の星が流れる中、よく眠れますように。
幸せでありますように


抱きしめられたぬくもりが痛く沁みた。傷をつくった時のお風呂みたい。僕はなぜか赤ちゃんのように泣きじゃくりたくなった。

君と僕、
今抱えている全部ぜんぶ無くなってしまえ。
性別も、皮膚と皮膚との隔たりも、核膜でさえも無くなってしまえ。
それでも君のことはきっとわからない。
君は賢くて優しくて強くて、弱いから。
僕のことは全部わかっているのでしょう?
ずるいなあ。

涙を呑む。
甘くてしょっぱくてにがい。透明が僕にもあってよかった。それだけが救いに思えた。


不意に気付く、死の匂い
いつだって死は近くにあって、生は等しくも順番でもなく当たり前のものでもない。そのことを私たちは、私が知っている誰かが教えてくれるまで忘れている。それも仕方ないかな。死はずっとずっと悲しく辛くできることなら少なくあることを願う。
空気と喪の色が混じった言葉。
それだけで部屋が冷たく静かだった。そのことが少し恐ろしかった。

私は自分から棺桶に入りたい。
誰かに寝かされるのはかっこよくない。


(2020.10.30 11.1 11.4)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?