Xが「おすすめ」する小劇場界隈(打土井大)

「フォロー中」のタイムラインがその名の通りフォロイー(フォロー中の人)のポストを表示するものであるならば、「おすすめ」のタイムラインはフォロイーのフォロイー、つまり知り合いの知り合いにあたる人のポストを頼んでもいないのにわざわざ教えてくれるもの、という印象をみなさんと同様に僕も抱いています。

演劇の創作に携わったことのあるフォロイーが多い僕の「おすすめ」には、必然的に「演劇界」が立ち現れてきます。演劇についての体系的な知識を得るには大学の講義や書籍が有効な手段ですが、逆に「演劇界」についての断片的な情報を知るにはSNSが最適な手段だといえます。

その断片的な情報には、上演中の公演に対する評価や、演劇関係者の炎上の詳細などがありますが、その中でも僕は「小劇場界隈で流行している思想」にどうしても目が惹かれてしまうのです。具体的には、「小劇場は内輪だから外の観客を取り込まなければならない」「新作上演が当たり前だが各団体もっとレパートリーを増やしてもよい」といったものが挙げられます。いずれも一理ある内容で、理想の「演劇界」を考える上では重要な考えだと思います。

中でも最近僕が気になっているトピックが「演出家は演技指導をするべきではない」です。要は演出家はあくまで全体的な演出プランに専念し、俳優の演技を指導するべきではない、というものです。その理由としては「創作者としての俳優の意思を尊重するため」「また、それによって表現の多様性を生むため」「ハラスメントまがいの演技指導を避けるため」などが考えられます。そして僕は、一理あるな、とやはり思うのでした。

しかし実際のところ、演技指導をしたくなくても演技指導をしなければならない場面があることも事実だと思うのです……。アマチュア劇団がほとんどの小劇場では特に、普段演劇をしていない人や、モチベーションがさほど高くなく台本をあまり読み込んでいない人が俳優を担うことも珍しくありません。もちろんそうした俳優の存在を否定したいわけではなく、むしろ肯定するために演技指導は必要なのではないかと思います。

また、上記に該当しない表現力とバイタリティーを兼ね備えた俳優であっても、自分の演技をひとりきりで担うことが苦しい瞬間もあるだろうし、リアルタイムで自身の演技を確認する手段がないことを考慮すると、演出家の「口出し」はやはり必要な気がします。もちろん演出家が俳優の全てを統制しようとするのはNGですが……。

一方で、演技指導ばかりに気を配っていて、全体的な演出プランがおざなりになっている作品も少なくないということを、勇気と自戒を込めてここに公言します。不景気に生きる日本人はどうしても気が小さくなってしまうのでしょうか……。もし次回公演があるとすれば、不安に負けないダイナミックさを持った演出を実現しようと目論んでいます。

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