シリーズ「この演出がイイ!」〜iPad ProのCM編〜(打土井大)

こんばんは、打土井です。

今週iPad ProのCMが物議を醸しました。「Crush!」とポップに題されたそのCMの内容は、カメラやテレビなどの大量の道具が巨大なプレス機に押し潰され、1枚のiPadになるというものです。この道具を押し潰す演出が破壊的で不快であるということで批判が殺到し、Appleは「この動画は的外れだった」として謝罪を行うこととなりました。

実際の動画を僕も見てみると、明るい曲調の音楽の中でたくさんの道具たちが、時に悲鳴のような破壊音を立てて押し潰されていく演出に、たしかに残酷さを感じました。もちろん見ていて良い気分になるとはいえず、商品の販売を促進するためのコマーシャルとしてはあまり適切とは思えませんでした。

でもひとつだけ疑問に思うことがあるんです。これって別に「的外れ」ではなくないですか?実際安いカメラを買うくらいだったらiPhoneの方が性能が高いし、特別な理由がなければもう誰もCDを買いません。Appleが多くの道具を破壊しながら躍進してきたことは事実だと思うんです。それもユーザーたちの明るい声援を受けながら。

上記のようなAppleのグロテスクさを的確に表現したこの映像は、自社CMとしては最悪の出来といえる一方で、映像作品としては及第点かと思います。いや、もはや自身の暴力性を自覚し、それでもなお歩みを止めることはできないのだという覚悟と苦しみに、Appleへの好感を抱いたといっても過言ではなく、となればCMとしても成功といえるのではないか?という疑念が僕の頭に浮かんで……でもダメですよね、物を壊すのはね!

というわけでシリーズ「この演出がイイ!」では、僕がイイと思った演出を紹介していこうと思っていますが、次回があるという保証はできません。また、「演劇について書くというsqu@reのnoteの縛りはどうしたのか」とお怒りの方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、こういう演劇とは関係なさそうな演出がね!演劇の演出に活きてきたりするんですよ!さよなら!

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