小説、あるいはポエムのようなもの

学校への道すがら
ちょっとした用事を思い出し、僕はかつて住んでいた家に寄った
出勤前の身支度をしていた父が、僕に気づいて出迎えてくれた

母が僕と弟を連れて家を出てから、どのくらいの月日が経っただろう
この家は、相変わらず水回りの不調が絶えないようだ
時の止まったこの家に、父以外の荷物はもうほとんどない
僕が用事を足しにこうやって顔を出すのもあと数回であると、父も気づいているはずだ

テーブルの上に、父が職場に持っていくお弁当が置いてある
彩りがよく、栄養バランスもよさそうだ
いつの間に、こんなものを作れるようになったんだろう
そしてその横には、書きかけの手紙
「あなたの子育てが素晴らしいものだったと、今になって実感する。あなたと○○(僕)と△△(弟)と、またご飯に行ける日を楽しみにしてる」

どうして人はいつも、失ってから大事なことに気づくのだろう
そんなことを考えながら、僕は家を後にした

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