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「人の目を気にしない」を初めて選んだ日


出張帰りの駅前広場

新作ビールの試飲会をやっていた

いつもは素通りするのに

なんだか心惹かれて

けれど「一人だから」

「だけど入ってみたい」

頭と心が葛藤して

二十分程ロータリーを彷徨いた

一人カラオケも一人ご飯も平気なのに

一人ビールが怖かった

「一人で飲んでるなんて寂しいやつだと

思われたらどうしよう」

連絡をした友人は

「後日なら行ける」と言った

なんだか機会を逃してしまう気がして

気がついたら列に並んでいた

注文する時も緊張して

席に座ることも憚られて

スタンドテーブルを選んだ

初めて飲んだ黒ビールは

ビックリするほど飲みやすかった

周りを見渡すと

みんな楽しそうで

誰も私が一人なことなんて

気にしてなかった

茶色がかった泡がやけに美味しくて

なんだか泣きたくなった

それから私は

黒ビールの虜になった

黒ビールだけでなく

色々なビールを

試してみた

スーパーでもコンビニでも

「頑張ったご褒美」に託けて

新作を手に取った

海外の市場、空港

ビールスタンドにも行った

どれも素晴らしく

泡も色も匂いも異なる世界を知った

あの日を超える感動には

まだ出会えていない

「初めて飛び込んだ世界」だったからか

「夏の始まりの時期」だったから

わからないけれど

きっとこれからも

最高の瞬間を求めて

私はビールに恋をする




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