活動のゴールはどこか

先日、同期と配信でしゃべってるとき何気なく「いまの活動のゴールはどこか」とたずねた。芸人としての夢、終着点はなんだと。そいつは恥ずかしがりながらも「いつか、逃走中みたいな身体を使ったゲームを開発して、流行りのタレントを呼んで番組をつくりたいんだ」と打ち明けてくれた。いい夢だなと素直におもった。言い悩む様子もなかったからきっと元々たいせつに持っていた夢なのだろう。俺もその番組出れるようにがんばろ、と夢をかたり合う同期っぽいセリフをはいた。

言いながら自分の発言に引っかかる。俺の夢ってなんだ。とつぜん聞かれても悩まず喋れるほど常に頭のド真ん中にある譲れないもの、ってなんだ。すこし考えてそれっぽいことを思いついたが、真剣に打ち明けてくれた同期の前で言うのは失礼だなと思ってやめた。俺の夢。って、なんだ。


人生をさかのぼってみて、芸人になりたいという感情が芽生えたのはいつだったか。たぶん、中学2年生だ。サッカーとテレビが大好きだった。勉強の楽しさを知るのはもう少し後で、その頃は部活で汗かいて、家帰ってテレビ見て、好きな番組が無いときはYouTubeで違法にあげられてるレッドシアターとかをひたすら見ていた。ジャルジャルがおもしろかった。土手で文化祭で披露する予定の歌を聞くネタを強烈に覚えている。タンバリンキッスを教室で口ずさんで、聞いて来た友達に見るようによく教えてた。はんにゃとか、休み時間によくマネして遊んでいた。でも、その時はまだ芸人への憧れはなかった。

きっかけは、兄だった。YouTubeで見飽きるほど見たジャルジャルのコントをまたぼーっと眺めてるとき、兄がそっとパソコンを奪いバナナマンのPukeというコントを勧めてきた。22分ぐらいあるやつで、よく関連動画にのっていたが一回も見たことが無かった。当時のおれは拘束時間の長いネタを避けていて、22分見続けるのはめんどうだなと食わず嫌いしていたのだ。嫌そうな顔をするおれを見てか、兄は俺も見よーと言って横に居すわった。

兄の手前しかたなく見はじめたが、スグに夢中になった。衝撃の連続だった。画面上の日村さんにどっぷり感情移入し、こまかい一挙手一投足のせめぎ合いに腹をかかえて笑った。ワクワクして、ヒリヒリして、俺のもってる感情のぜんぶを無理矢理引っ張り出されて弄ばれてるような気分だった。ヤバい、笑いすぎておれどうにかなってしまうんじゃないか。『怖い。』コントを見ていてそんな気持ちになるのは初めてだったし、それが、とても気持ち良かったのをすごく憶えている。それからおれは、毎日バナナマンのネタをYouTubeで見るようになった。毎日検索して違法にアップされていたら消される前に見た。東京03にハマったのもその頃だ。俺は長尺コントが好きになった。

東京03さんのネタでは「お礼させて下さい」と、タイトルは忘れてしまったが居酒屋で飯塚さんと角田さんで飲んでるときに女上司の豊本さんが急に来ることになって、角田さんが〈オレが前豊本さんのケータイを壊したのバレたのか?〉とどぎまぎするネタ、そのときも面白すぎて怖くなる感覚におちいった。

『すごい。世の中には、あんなことが出来る人がいるんだ。』と、あの瞬間から俺はお笑い芸人に強烈な憧れを抱くようになった。あんな格好いい人に俺もなりたい。あの快感を今度は俺が誰かに、と。


いまの俺、そのときの想いがぜんぜん少なくなってるじゃん。と気づいた。養成所のときは、パっと答えれた。バナナマンさんみたいになりたいって。1年目のときは?どうだったっけ。ときどき熱くなって、でもゆっくり冷めていって。その連続で。いまは、冷めてる、と認識。うわ~、よくない。よくないな。芸人になろうって密かに決めたとき、もっと熱かったよな。たぎってたよな。あのときの俺、裏切りたくないな。

なんで、冷めてたんだろう。コロナで、ライブが減ってたから?2年目になっても、わかりやすい結果が出ないから?3分までと決められているエントリーライブや事務所ライブではやりたい長いコントが出来ないから?

ちがうよな。熱が無かったんだよな。どうしても、って。ココだけは、って。なるぐらいの譲れないもの。俺の夢は、観てくれた人の感情をグッと捉えて、見終わってから何日か経っても「あぁ面白かったなぁ」って引きずるぐらいの強烈な麻薬みたいなコントをすること。お客さんの心のなかにずっと居座り続けるような、そんなネタを作ること。

これが夢なら、ゴールとか、無いな。まじで一生だな。ずーっとコントのこと考えて、

いつか、かつて夢を語り合った同期にオレの番組出てよって言われたら今度はきちんと言おう。

「コント作りが忙しいからムリ」


相方が長いコントが出来るようにと、自主ライブを作ってくれている。【正攻法】という名前のコント好き3組のユニットライブ。初回は、たぶん大成功だった。反応みる限りは。2回目が、予定では4/25日にある。この日、前回より面白いネタして笑わせたい。俺が憧れたような客のこころを震わすコントをして楽しんでもらいたい。それが、今いちばん楽しみ。ワクワクしてきた。ちょっとずつ、たぎってきた。ここからだ。

「いまの活動のゴールはどこか」

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