夜尿症(おねしょ)

夜尿症は「夜間、睡眠中に不随意に尿を漏らす」もの。

学術的に書くとこういう表現になるのですね。    
定義としては以下のような感じです。
①5歳以上の小児が寝ているときに漏らすこと。
②昼間の尿漏れや他の下部尿路症状の合併の有無は関係なし。
③1ヶ月に1回以上のおねしょが3ヶ月以上続くもの。
④1週間に4日以上のおねしょだと頻回、それ以下だと非頻回。

夜尿症(おねしょ)の頻度は小学校入学時に10%超と考えられています。
そして夜尿症の自然消失率は毎年15〜17%です。
生活指導をはじめとする治療をすることで、自然経過に比べ2〜3倍高めることができます。つまり消失率が30〜50%になります。治癒までの期間も短縮します。

夜尿症は①夜間多尿(膀胱の容量を上回る)、②排尿筋過活動(排尿に関わる筋肉が収縮する)、③覚醒閾値の上昇(睡眠が深い)、のうち1つあるいは複数の病因が関係していると考えられています。

夜尿症の患児が合併しやすい病気として便秘症や遺糞症、精神神経疾患があります。生活習慣の改善を行なった上でも夜尿が続く場合は病院受診し、隠れている病気がないかどうか調べてもらったほうがいいでしょう。

夜尿が気になる、本人が気にし始めたら、まずは生活習慣の確認をしてみましょう。その前に「患児自身と親や養育者に、夜尿は患児の過失ではないこと」を、そして「夜尿に対する罰を与える方法で治療をすべきではないこと」を認識しましょう。夜間にお漏らしした、と訴えてきた我が子にそんな仏のような対応ができるかどうか・・・。怒りたい、眠たい気持ちをグッと数秒こらえて「よく言えたね」と褒めてあげましょう。(褒めることができた時はご自身を褒めてあげてください!)

次に水分の摂り方です。水分、タンパク質は日中、できれば午前中に十分摂取しましょう。具体的には1日水分摂取量の40%を午前中に、さらに40%を午後5時までに摂り、17時以降は20%にとどめる。まあ、これは指導していても難しいと思うので要点は次です。
①夕食は就寝2時間前までに済ませる。
②夕食後は水分制限(コップ1杯程度までに制限する)
こうしたことの意識付けにご褒美をあげることが本人のモチベーションをあげてくれます。夜尿がなかったとすると難しいので、寝る前にトイレに行く、水分を我慢するなどができればあらかじめ決めておいたご褒美を与えてあげましょう。この場合もペナルティー方式は逆効果になりますので、注意してください。

それでも夜尿がおさまらない時は積極治療の適応になります。

積極療法にはアラーム療法と薬物療法があります。
アラーム療法はパンツにセンサーをセットし、尿を検知したらアラームが鳴るというものです。アラームが鳴ったら、患児もしくは親はアラームを止め、残った尿をトイレで排泄するというものです。これは本人、親のモチベーションが高い場合、週に3回以上の頻回夜尿症患児が対象になります。うちもチャレンジしましたが、残念ながらモチベーションが高くなく、現在はアラームは部屋の片隅に転がっています。あと、少量尿漏れは起こりますので、パンツやパジャマ、場合によってはシーツ、布団の洗濯の手間は変わりません。そのあたりの対応も出来る方限定でお勧めします。
薬物療法で用いられるのはデスモプレシンという薬です。これは腎臓で水の再吸収を促進させることで尿量を減らす効果があります。生活指導や行動療法で改善しない6歳以上の患児が対象となります。口腔内崩壊錠とスプレータイプがあります。
鼻炎や風邪の時には薬物の吸収が悪くなるので、スプレータイプの時は事前に鼻をかむ必要があります。この点からは内服の方が便利ですね。よくあるパターンですが、小学校の宿泊行事で使用したい!といった場合には容量調節と薬の有効性、安全性を確認するために行事の少なくとも6週間前からの使用が推奨されます。実際に使用される際には医師と相談して、注意点(内服前に水分を過剰摂取しない、内服前に必ずトイレに行って排尿を済ませておく)を十分確認してください。

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