赤単ミッドレンジの話:蒼紅杯~ジャパンオープン~今後
0. 前書き
こんにちは、ryuumeiです。
蒼紅杯とジャパンオープンが終わり、お盆休みで少し時間ができたので、赤単ミッドレンジについて自分の思考をまとめました。
スタンダードの大規模イベントはジャパンオープンで一段落ということで、デッキの詳細解説というよりは、大枠の思考についての話がメインになります。
赤単ミッドレンジが蒼紅杯で優勝できた理由(強み)、ジャパンオープンで勝てなかった要因(課題)、今後の立ち位置(改善策)の3本立てです。
1. 蒼紅杯時点での赤単ミッドレンジ
8/4に開催された蒼紅杯では優勝することができました。
優勝という結果は幸運の賜物でしたが、なぜ優勝できたのか、どのような部分にデッキの優位性があったかを考えていきます。
このデッキリストになった経緯については、蒼紅杯のインタビュー記事でも触れられています。
(蒼紅さんインタビューありがとうございます!)
インタビュー記事からの一部抜粋となりますが、「全てに勝つのは諦めて、とにかくトップメタと予想される黒系ミッドレンジに勝てるよう」なリストを目指しました。
端的に言うと上記の通りなのですが、この部分の思考をもう少し掘り下げてみます。
1-1. 全てに勝つのは諦める
まず、「全て」とは何を指していたかについて説明します。
蒼紅杯の時点では、環境のデッキは下記のように大別されていました。
・アグロ:グルールアグロ、ボロス(ジェスカイ)召集、赤黒トカゲ
・ミッドレンジ:ゴルガリミッドレンジ、オルゾフミッドレンジ
・コントロール:ドメインランプ、青白コントロール
赤単ミッドレンジに限った話ではありませんが、この中でどのデッキに対して有利に出れるか、不利なデッキにもサイド含め勝てるプランを作れるかが焦点になります。
また、数の多いデッキにメインボードを強くし、少数のデッキはサイド後対策できるようなバランスで構築を考えていくことが基本となります。
自分が予想したメタゲームは下記の通りでした。
・多い:ミッドレンジ(ゴルガリミッドレンジ、オルゾフミッドレンジ)
・普通:アグロ(グルールアグロ、召集、赤黒トカゲ)
・少ない:コントロール(ドメインランプ、青白コントロール)
そのため、下記の指針でデッキを構築することにしました。
①ミッドレンジにはメインから有利にする
②アグロにはメイン五分で、サイド後有利にする
③コントロールにはメイン不利でもサイド後で勝てるプランを作る
具体的なチューンの内容は下記の通りとなります。
①ミッドレンジにはメインから有利にする
ミッドレンジに対するチューンは比較的容易でした。
≪血に飢えた敵対者≫を失ったことは痛手でしたが、≪レジスタンスの火、コス≫で代替可能な範囲です。
特に、ゴルガリミッドレンジは前環境から存在するデッキなので、戦い方はよく理解していました。
前環境の知見では、火力除去約14枚+≪ウラブラスクの溶鉱炉≫+≪レジスタンスの火、コス≫で有利に立ち回れます。
②アグロにはメイン五分で、サイド後有利にする
アグロには、グルールアグロのような単体強化で攻めるデッキと、召集のような全体強化で攻めるデッキの2パターンがあり、それぞれ異なった対処法が求められます。
(赤黒トカゲは、ちょうど中間のイメージです。)
メインではグルールアグロに負けないよう、≪ショック≫や≪稲妻の一撃≫のような軽量除去を最大限採用することにしました。
召集との戦い方は前環境からの知見があったため、サイドに全体除去を3~4枚採用すれば少し有利になることがわかっていました。
(対召集は、≪内なる空の管理人≫と≪イーオスの遍歴の騎士≫だけ除去して、ダメージレースで勝つことが基本プランとなります。全体除去があれば盤石になります。)
赤黒トカゲも少数ながら存在するだろうと思い、全体除去の枠は≪地盤の危険≫や≪巨竜戦争≫ではなく、タフネス3まで対処できる≪兄弟仲の終焉≫に決めました。
③コントロールにはメイン不利でもサイド後で勝てるプランを作る
対青白コントロールは、≪冥途明かりの行進≫を失い≪ウラブラスクの溶鉱炉≫を対処されなくなったり、≪放浪皇≫もいなくなって、速攻クリーチャーやミシュラランドでライフを削りやすくなったり、サイド後除去を抜ききることができれば勝てそうなプランが用意できました。
問題となったのは、対ドメインランプです。
前環境から不利なマッチアップでしたが、≪熊野と渇苛斬の対峙≫を失って早期に殴りきることがほぼ不可能になりました。
ドメインランプがマナ加速→除去→天使とキレイに回ってきたら必敗のため、事故ってもらうことを祈るしかありません。
チューンの結果、
・ミッドレンジには勝てそう
・アグロにもそこそこ勝てそう
・ドメインランプは無理だけど、数が多くないなら許容できるかも?
といった感じで、想定通りのメタゲームならいけそうといった感触で本番に挑むことになりました。
1-2. 蒼紅杯本番での対戦結果と分析
実際の蒼紅杯で対戦した結果は下記の通りでした。
・予選スイスラウンド
ボロス召集 2-0
青白コントロール 2-1
オルゾフミッドレンジ 2-1
ゴルガリミッドレンジ 2-1
バントアーティファクト 2-1
ボロス召集 2-1
ドメインランプ 0-2
6-1で2位通過
・決勝シングルエリミ
ゴルガリミッドレンジ 2-0
ボロス召集 2-0
青白アーティファクト 2-0
3-0で優勝
9-1で優勝と文句なしの結果ですが、もう少し詳細に見ていきます。
戦績を対ミッドレンジ・アグロ・コントロールに分類して、ゲーム内容を振り返ってみます。
①対ミッドレンジ:6-2(3マッチのゲームカウント)
対ミッドレンジに有利になるようにメインから構築を寄せたにも関わらず、スイスラウンドで当たった2戦とも、3ゲーム目までもつれ込んだ激戦でした。
また、準々決勝は配信にも映っていましたが、メインは相手のトリプルマリガンによるイージーウィン、2戦目は≪亭主の才能≫がある盤面で≪裏切りの棘、ヴラスカ≫をトップされたら負けの盤面が数ターン続いた結果引かれずに勝ったという内容で、一方的に有利と言えるような展開ではありませんでした。
②対アグロ:6-1(3マッチのゲームカウント)
3マッチ全てボロス召集が相手で、プラン通りに勝つことができました。
前環境からの経験もあり、このマッチアップのプランは間違っていなさそうです。
ただ、スイスラウンド6回戦の3戦目は、相手のミスにより負け確から勝ちになったゲームで、ここで負けていたらTop8にも残れなかったかもしれません。
(この試合も配信に映っていたので、興味のある方はアーカイブをどうぞ)
③対コントロール:6-3(4マッチのゲームカウント)
もっとも課題となっていたマッチアップですが、想定通り厳しい戦いを強いられました。
決勝はアーティファクト軸の青白コントロールだったためサイドの≪兄弟仲の終焉≫で有利に進められましたが、スイスラウンドで当たった普通の青白コンとバントアーティファクトには3ゲーム目まで追い詰められました。
また、スイス最終戦で当たったドメインランプには想定通り0-2で敗北。
メタゲーム上2番目に多かったドメインランプに1回しか当たらなかったのは幸運でした。
総じて、2-1でギリギリ勝ったゲームが多かったり、4.5%しかいなかったボロス召集に3回当たれたり、8.9%もいたドメインランプに1回しか当たらなかったり、幸運に恵まれたトーナメントでした。
1-3. 蒼紅杯から得た知見
前項で分析した通り、赤単ミッドレンジは完璧なデッキではなく、幸運も手伝った結果の優勝でしたが、得られた知見もありました。
①ミッドレンジが多いだろうというメタ読みは当たっており、ミッドレンジに寄せた構築にした結果、僅差ながらも勝つことはできた。
(寄せた構築にしていなかったら、惨敗していた可能性が高い。)
②対ボロス召集にもプラン通り勝つことができ、コントロールにも不十分ながらもサイドボードに≪熾火心の挑戦者≫を用意していたことで何とか勝てた。
③ローテーションで≪熊野と渇苛斬の対峙≫や≪血に飢えた敵対者≫などを失った分、≪雇われ爪≫や≪陽背骨のオオヤマネコ≫、≪噴水港≫など、新戦力の強さを確かめることができた。
ローテーション・ブルームバロウの実装から数日しかない準備期間の中では、ベストでないながらもベターな構築はできた手ごたえはありました。
ただ、ミッドレンジもコントロールも想定より厳しいマッチアップで、特にMOでは全く流行っていなかった≪亭主の才能≫+≪裏切りの棘、ヴラスカ≫コンボが日本では大流行していたなど、課題も多く見つかった大会でした。
2. ジャパンオープン時点での赤単ミッドレンジ
ジャパンオープン時点での赤単ミッドレンジは、立ち位置のいいデッキではありませんでした。
なぜなら、前章で述べた通り、下記の問題を解決することができていなかったことに加え、メタゲーム上にコンボ搭載のゴルガリミッドレンジとドメインランプが多いことが予想されたためです。
①ミッドレンジには僅差で勝てるぐらいで、明確に有利ではない。
特に≪亭主の才能≫+≪裏切りの棘、ヴラスカ≫コンボに干渉できないため、対ゴルガリミッドレンジは除去しているだけでは勝てない。
②ドメインランプにサイド後もプランがない。
勝とうとするとメインから構築を軽く寄せる必要があるが、そうするとミッドレンジへのガードが下がる。
結論から述べると、上記の問題を解決することができなかったにもかかわらず赤単ミッドレンジを持ち込んだ結果、1-3でドロップとなりました。
2-1. ジャパンオープン本番での対戦結果
ジャパンオープンの対戦結果は下記の通りです。
ドメインランプ 0-2
ゴルガリミッドレンジ 2-1
ゴルガリミッドレンジ 1-2
青白コントロール 1-2
相変わらずドメインランプには全然いいところなく0-2で敗北。
ゴルガリミッドレンジと青白コントロールの対戦も、どれも3戦目までもつれ込んだ末に1勝2敗で終了しました。
先週僅差で勝てたということは、今週僅差で負けてもおかしくなく、必然の敗北でした。
2-2.ジャパンオープンの反省点
完全に個人的な事情ですが、ブルームバロウ実装直後から蒼紅杯まで睡眠時間を削ってMTGアリーナで調整していた結果、体調を崩してしまい翌週は殆ど練習することができませんでした。
そのため、赤単ミッドレンジの問題を解決するためのアイデアを何も試すことができない状態で本番を迎えてしまいました。
ただ、練習時間を確保できなかったとしても、情報収集をして別のデッキに乗り換えることはできたはずです。
明らかな問題を抱えているデッキをそのまま持ち込むより、メタゲームの変化を見ながら、召集やグルールアグロなど、ある程度回したことのある他のアグロデッキを持ち込むほうが良かった可能性は高いです。
体調を崩したことで精神的にも弱気になり、勝つために今のデッキを捨てることができなかった点は、明確な反省点です。
3. 今後の赤単ミッドレンジ
自分ではジャパンオープンに持ち込めなかったものの、ジャパンオープンで入賞したリストは、赤単ミッドレンジが抱えている問題を見事に解決していて感動しました。
勝っているリストから学べることは無限にあります。
3-1. 速度を上げる(除去を減らして軽いクリーチャーを増やす)
kkさんが使用されてTop4に入賞された赤単果敢ミッドレンジ。
赤単ミッドレンジが絶望的だったドメインランプに対し、速度を上げることで相性が改善されています。
ゴルガリミッドレンジに対しては、除去を減らすことでガードが下がるかと思いきや、ゴルガリは≪亭主の才能≫+≪裏切りの棘、ヴラスカ≫のコンボを搭載するためにクリーチャーの枚数を減らしているリストが多く、除去の枚数を減らしても問題がありません。
自分がゴルガリに対して除去を減らしてもいいことに気づいたのは本番の試合中で、サイド後クリーチャー多めのプランをとることで対応していましたが、メインから除去を減らしたリストのほうが良かったことは言うまでもありません。
デッキの詳細はご本人がnoteを書かれていますので、是非こちらをお読みください。
3-2. 色を足して重くする(対処範囲を広げてアドバンテージ勝負をする)
見事ジャパンオープンで優勝されたUzuki Yushiさんのボロスミッドレンジ。
こちらは赤単ミッドレンジとは全く違うデッキなのですが、≪ウラブラスクの溶鉱炉≫を活用したミッドレンジとして感銘を受けました。
まず、ゴルガリミッドレンジのコンボに≪失せろ≫で介入できるため、どっしりアドバンテージゲームをするだけで有利に立ち回れます。
また、ドメインランプには速度勝負を挑むのではなく、真っ向からアドバンテージ勝負を挑むことで乗り越える構築になっています。
赤単ミッドレンジでは出されるだけで負けてしまう≪偉大なる統一者、アトラクサ≫や≪群れの渡り≫を対処できる除去が搭載されているため詰んでしまうことはありません。
それらドメインランプの脅威を対処したうえで、≪ウラブラスクの溶鉱炉≫や≪噴水港≫のトークンなどドメインランプが対処しにくい攻め手を≪世話人の才能≫で強化して殴りきることができます。
このデッキをジャパンオープン前に自分でたどり着くことは不可能だったと思いますが、今後は問題を解決するために色を足したり重くするアプローチも積極的に試していきたいと思いました。
4. 後書き
ここまで読んでいただきありがとうございました。
結論としては、蒼紅杯時点の赤単ミッドレンジをそのまま使用することはオススメしませんが、メタゲームに合わせてチューニングしていくことで今後も活躍するチャンスはあると思います。
現環境のスタンダードはまだ始まったばかりで、まだまだ試されていないカードや戦略があるはずです。
赤単ミッドレンジを使用される方は、色を足すアプローチも含め、様々なチューンを是非試してみてほしいです。
おわり
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