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サクラギリューホ

3.11

俺はピッチに立てずに上で試合を見ていた。

負けたのもそうだけどやっぱり悔しかった。

もうここでこんなにも長くサッカーができないんだなと思うとほんとにほんとに悔しくて。

みんなの前で本当にサッカーができないんだと現実を突きつけられた。

ベンチ外の時の気持ちがまた込み上げてくる。

涙が出そうになる。

でも、みんながリューホTシャツを着てくれて、ユニフォームをベンチに入れてくれたり、サポーターの方達が横断幕を作ってくれたり、がんばれって声をかけてくれたり、本当に嬉しかった。

ありがとう。


3.4

vs ガンバ大阪。

前十字靭帯断裂と半月板をやった。

あの感覚は忘れられない。

グギッと膝が意味がわからないところにいった。

やった瞬間にもう無理だと思った。

なにかは分からないけどもう長いことサッカーはできないだろうなぁと感じた。

あの音。はきっとこの先ずっと忘れられないと思う。

家に帰ってきて、これが現実なのか夢なのか分からなかった。

本当に試合に出ていたのだろうか、4-0で勝ったのが現実にあったのか遠い昔にあったのか分からなかった。

あぁ、本当にバカだなぁって。

なんでなんで。思い返せば回避できたんじゃないかって。

後悔ばかりが過ぎってくる。

実感なんて湧いてはこないし、ロッカーに戻ったら、なんでとなんでと自分を責めて涙ばかりが溢れてくる。

でもなにより何も言わずに背中をさすって見守ってくれたトレーナーのみなさん、上からわざわざ降りて抱きしめてくれたセルジやトゥーレル、たかひろくんの優しい言葉があの時の自分には大きすぎて。

もちろん受け入れるのは辛かった。

だけど、そんなみんなの優しさにめちゃくちゃ救われたし、涙が止まらなかった。

ほんとありがたいなって。

家に帰って泣きまくったけどもう起こってしまったことはしょうがないから。

怪我をするのは自分のせいだから。

自分がまだまだって事だから。

暗い顔で過ごすより毎日明るい顔で誰よりも元気でいようって。

どんな事があっても8ヶ月間、弱音は吐かないし、ネガティブなことは口に出さないようにしようと。

神様は乗り越えれない壁は与えない。

今の自分にはこれが必要なんだって。

俺にもそんな大きいことを乗り越えさせようとしてくれるくらい人間的に成長したんだなって。

幸せだなぁと。ありがとうって。

不思議と思える自分がいた。


ガンバ戦の前の何週間か自分に自信が無くなっていた。

昔からあった根拠のない自信はどこかへいってしまっていた。

そんな自分を自信を持てるようにいろんなことをしたけど神様はきっと見抜いていたと思う。

だから、俺にはきっと今の自分が相応しい。

怪我をしてやっと本来の自分に戻れた気がしたんだ。

1月17日に内転筋を肉離れして6-8週。

復帰してスタメン復帰した時に8ヶ月。

きっとこの先、膝が思うように動かなくて身体が思うように動かなくて悲しい思いや悔しい思いをたくさんしていくと思う。

みんなが楽しくサッカーをしている中、ジョギングもできない自分は惨めに映るかもしれない。

この8ヶ月の代償は払わなければいけないのは理解している。

でもそれを含めての人生だから。

きっときっとサッカーを当たり前にできていた頃よりも大きなものが見つかると信じている。

毎日毎日、自分が思ったことをノートに書き写してる。

この8ヶ月でどんなことを感じて、成長していくのだろうか。

それが楽しみでしょうがなくて。

マイストーリーにこの経験は素晴らしい色彩を与えてくれた。

これを乗り越えて日本代表になるっていうシナリオは最高だなと。

ありがたいことにこの現実と向き合えて感謝できる自分を誇りに思える。

諦めなければ人生は必ず好転するし、この怪我があったからこそと言える未来にする自信があるから。

だからこそもう一度自分を見つめ直して、人としてサッカー選手として素晴らしい人間になれるように。

家族、周りの友人、地元のみんな、ファン、サポーターの方には長い間プレーを見せることができなくなるけど。

今までピッチに立って試合をするところを見せれたけど、チームにはピッチに立てずに毎日必死にもがいて努力している選手がたくさんいる。

試合に出て勝って喜んでる選手の裏でたくさんの悔しさを抱えてる選手がいることを忘れないでほしい。

競争がある世界だからそれは仕方のないことだけど、みんな闘ってる。

大切なものを守るために。

8ヶ月後には自分の居場所がないだろう。

みんなは今の自分より毎日サッカーをしてたくさんの事を得るだろうから。

それが当たり前の世界だから。

でもそれでいい。そうじゃないといけない。

それでこその菊池流帆のドン底から這い上がるストーリーをまた自分自身が1番見ていきたい。

俺にはそれが1番性に合ってる。

雑草だ。這い上がりだ。

なんて古いけどきっとそれが俺の人生なのだから。

俺らしい人生だな。ドン底バンザイだなと。

たくさんの人に支えられて助けられてサッカーができていたんだなって。

それに気付かせてくれてありがとうって。

たくさんの人のメッセージに頑張ろうと思えたし、サッカーしてて自分にこんなに思ってくれる人がいるんだと涙が出た。

この先のリハビリ期間もたくさんの人に助けられて迷惑をかけてしまうだろうけど。

当たり前などこの世に存在しない。

サッカーを毎日健康にできること。

サッカーに限らず何でもそうだけど自分が当たり前だと思ってることは当たり前なんかじゃない。

感謝の気持ちを忘れずに常に謙虚でいなければいけないなって。

それを毎日自分自身に刻み込まないといけない。

3月5日。空を見たら全てを見透かすように晴れていた。

そうかって。運命は決められているのかもしれない。

なら、その決められた運命をどう捉えてどう生きていくかの旅なんだなと。

どんな事にも感謝して笑って楽しむことが1番大事なんだ。

今は確かに長いように感じるかもしれないけどきっときっと今まで1番素晴らしい旅になる。

だって俺なんだから。

こんなとこで立ち止まれるわけがない。

8ヶ月間、どんな時も自分をずっと信じ続ける。

いや違う。この先、一生。

1番嫌いなのはこの怪我は絶対8ヶ月かかると言われる事。

知らねーよ。そんな世間一般の常識は俺には通用しない。

俺は釜石の男だからな。

俺は何度でも立ち上がって暴れて叫んでやる。

俺の今シーズンはまだ終わってなんかいない。

すぐ戻るから待ってろ。

                「天才ですから」

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