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留年短編vol.6 関係珈琲


点呼。

この時間はいつも君の目を見れるから幸せだ。

今日も制服がよく似合っている。

初めて入って来た日に恋をした。

この関係で恋をするなんて、
許されるはずもないのだけれど。

あれからもうすぐ3年。

まもなくここを出てしまう。


一日を終えて、

君を見送りながら

一緒に帰りたいな。なんて考える。


そんなことはできるはずもないのだけれど。


君は帰った後、誰とどこに行くんだろう。

おしゃれなカフェにでも行くのかな。

毎日楽しそうで羨ましい。


毎日モノトーンな服装で

こんな地味な生活を送るなんて
君は想像もできないだろう。


いや、

そもそも君とは
業務的な内容しか話さない。

君からしたらたくさんいるうちの一人なのだろう。


まもなくここを出てしまう。

ここを出たら二人は今の関係ではなくなる。 

君の制服姿を見ることもなくなってしまう。

また一から関係を築けるだろうか。

その時は一緒にコーヒーでも飲みたいな。

コーヒー。

もう3年飲んでないや。



最終日。


いつもと違う服に身を包む。

旅立ちの日だ。やはり緊張する。



出口には君が立っていた。

こちらを見て笑っている。

よかった。認知してくれていたんだ。


コーヒーの誘いとか色々言いたいことはあったけど、

もうよかった。

最後はシンプルに。

感謝だけを。


「今日までありがとう。」


すると

君はこう言った。


「出所おめでとう。」


関係珈琲

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